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東方運命録  作者: 甘味処アリス
プロローグ
4/8

第3話『紅霧の異変ー2』

「いった……くない」


 ああ、またか。つまりこれは、俺の運命では紅魔館の奴らには負けないということなのだろう。勝つかどうかは俺の意地次第ってことか。……どうせなら、もうちょいまともな能力がよかったなぁ。


 霊斗の『自分を改造する程度の能力』なんかはカッコいいしな。自分の体を武器に変化させたり、身体能力を上げたり。どうせならそういうのが良かった。


 まあ、能力に文句を言っても仕方ないか。

 俺はため息をつきながら立ち上がる。さて……フランと咲夜、それにパチュリーとその使い魔にやられた分はしっかりやり返さなきゃな。


 俺は霊斗に習ったお陰で、格闘技や弾幕戦はそこそこならできる。とは言っても、精々チルノに勝てる程度だが。美鈴だってさっきは勝ったが、次やったら勝てるか怪しいし。


 まあ、勝てないものはしょうがない。パチュリーと咲夜は完全に不利だから後回しにして、まずはフランに仕返しだ。


 俺はどうやら、地下室から地面を突き破って外に出てきたらしい。ということは、当然だがその穴をまた潜っていけばフランの所に行けるだろう。そうとなれば、話は早い。


 俺は意を決して、再びフランの目の前に飛び込んだ。


「あれ? お兄ちゃん、生きてたの? 頑丈なんだね! なら、これを使っても大丈夫かなぁ!」


 フランはそう言うと、スペルカードをどこからか取り出して掲げ、宣言した。


「獄炎『北欧終焉の巨人王(スルト)』」


 言い終わると同時に、フランの身には燃えるような鎧と赤黒い大剣が装備された。明らかに俺1人を相手取るにはオーバーキルな装備だろう。だが……!


 俺は縮地を使ってフランの目の前に現れ、顎を蹴り上げる。

 フランはそれを背後に仰け反って避けると、炎の大剣を振り回した。

 それに当たった俺は簡単に吹っ飛ばされるが、今度は壁には当たらず地面にブレーキをかけた。


「へぇ……。お兄ちゃん、凄い!」

「だろ? もっと褒めてくれてもいいぜ」


 俺はフランの純粋な賞賛に対して返しながら、牽制射撃をしつつ再びフランに突撃する。フランが射撃から大剣で身を守ると同時に、俺はスペルを宣言する。


「霊符『夢想霊砲』」


 俺は大剣に触れながら、掌から極太ビームを発射する。ビームは大剣を貫通し、防御を打ち破ってフランを倒した。


「うわっ! 凄い、お兄ちゃん! これあげる」

「これ?」


 フランはそう言うと、さっきのスペルカードを俺に渡した。


「スペルカード……俺はこれ、使えるのか?」

「お兄ちゃん、しらないの? さっきのは霊衣って言って、私以外でも私のが使えるんだよ!」

「へー。なるほどなぁ」


 霊衣か。これなら……!


「フラン、ありがとう! 大切に使うよ」

「うん! 私もお兄ちゃんと遊べて楽しかったよ!」


 俺はそう言って俺に感謝を伝えるフランの頭を撫でてやり、フランの元を後にした。次の標的は距離も近いしパチュリーにしよう。


◇◆◇◆◇


「あら、また来たのね」

「おう。俺は力をつけなきゃならない。こんなところでじっとしてる場合じゃねぇんだ」

「そう……むきゅっ。なら、しょうがないわね。私が相手してあげる」


 パチュリーはそう言うと立ち上がり、片手に魔導書を出現させる。


「見せてあげる、魔法使いの力」


 そう言ったパチュリーは鎖を大地から呼び出し、それを俺に向かわせる。

 俺は霊衣を纏いながらその間をかいくぐり、大剣を振りかぶる。


「なっ! それは……!」


 パチュリーは驚きながらも、右の掌を俺に向ける。その次の瞬間、ぶあつい大地が俺とパチュリーの間にせり上がってくる。

 それは壁となって俺を阻むが、俺は大剣で壁を切り拓いてパチュリーに頭突きをした。


「キュウッ……」


 ゴチンという音とともに、パチュリーは脳震盪でその場に倒れる。ちょっとやりすぎたか……?

 俺が心配していると、どこからか現れた赤髪の美少女がパチュリーを抱き抱えて図書室の大きな扉から出て行った。


「……よし。次は咲夜だな」


 俺はそう宣言して、パチュリーの後を追うように図書館をあとにした。


◇◆◇◆◇


「あら? お早いおかえりね、お客様」

「ええ、まあ、使用人の態度がイケ好かなかったもので」

「それはそれは、とんだご無礼を」


 俺と咲夜は言葉を交わしながら、互いにその歩を進める。

 投げつけられたナイフを燃える大剣で防ぎ、唐突に出現する煙幕を振り払う。


 攻撃が効かないなら効かないなりに、戦い方がある……ということだろうか。

 咲夜の戦闘は無駄がなく、いい勉強になる。是非とも参考にしたいところだ。


「うーん……私からは一手足りないわね。有効打がないわ」

「そりゃこっちも同じだ。お前が速すぎて攻撃は当たりゃしねぇ」

「ということは」

「我慢比べといこうじゃないか」


 俺と咲夜はそう言葉を交わし、2人でいがみ合うような体制になる。


「──ハッ!」

「ふぅん……全方位攻撃。攻撃が当たらないなんて、嘘もいいところね」


 俺の放った弾幕に被弾しながら、咲夜は見事なナイフ捌きで被弾数を最小限に抑え、俺に攻撃を仕掛けて来た。今度はナイフで直接攻撃する気だろうか。

 残念ながら、そこにはもう罠が張り巡らされている。


 咲夜はやがて、糸にからめとれて自由に動けなくなった。


「なっ……!? これは?」

「俺の持つ、霊術術式──といっても、持ち運びできる魔法陣(スクロール)だが」


 俺はそう言って咲夜の前に立つ。


「くっ……ほどきなさい!」

「レミリアの居場所を吐け」

「……はぁ。玉座の前よ」

「そうか」


 俺はそう言って、咲夜に掌底を打ち込んで気絶させると、咲夜を搦めとる糸を解いた。


◇◆◇◆◇


 玉座の間に入る。ほかの部屋と同じように、机や赤い壁が特徴的だ。ほかの部屋よりも広いこの場所は、その分壁画などの調度品も多くある。

 その奥の方では、確かな威圧感を放つ少女──レミリア・スカーレットが玉座に座っていた。


「よくここまで来たわね」

「ああ。お前の部下らしき奴らは全員倒した。これでいいか?」

「ええ。お見事、と言っておくわ」


 レミリアはそういうと、ぱちぱちぱちと拍手をする。


「それで、私と()る? 私に勝てたなら、私の霊衣をあげるわ。その名もオーディン」

「……頼む」


 俺はそう言って、レミリアと俺はお互いに向かい合いながら距離をとった。

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