転生したっぽい
あれ?
何だよ此処は?
寒くて汚い路地裏じゃない。
「ふむ、お前か」
誰だ?
靄がかかっているみたいで考えられない。
なんか禍々しいヤツ。
でも何処かで見た様な?
「お前は中々正しい行いをして生きて来たんじゃぁないか」
「それに私を信仰していた」
「なら、十分だ」
はぁ。
「女神アリシアの名の下に転生を許す」
何を言ってるんだ?
段々女神の姿がボロボロになり散っていく。
「私…の、仇を…とっ…て…」
視界が歪む。
何が起きたんだ?
アリシア様?
どういう事なんだ?
「産まれたわ」
「サリアよく頑張ったな」
「サリア…すごい」
「エリザに産婆が務まるなんて意外ですわ」
「赤…ちゃんは?」
「声、はぁ、聞こえないわ」
「「「「!!!」」」」
「エリザ…息してるの?」
「あぁ間違いなくしているぜ」
「泣かないなんて不思議な子ですわ」
何が起きてる?
この状況は?
視界が霞んでいて何も見えない。
音も所々しか聞き取れない。
何だこれ?
「レンジ…大丈夫だって」
「こんなに元気なんだから」
「サリア…ありがとう」
「今日だけでしてよ」
「今日は…休戦」
「わーってるよ」
「ぶぶ(ステータス)」
サクト
スキル [共通言語][前世の記憶][鑑定]
[召喚][異界収納]
称号 [転生者][女神アリシアの愛子]
[復讐の炎蛇]
状況把握。
いやぁ信じらんね。
どうやらオレは転生したらしい。
目は良く見えねぇし、耳はそんな聞こえないが、あの女神が言ってた事が本当ならオレは転生したのだ。
何かこう刻み付けられてるって言うの?
ステータスってやっぱ便利。
朝起きたら見えるし聞こえる様になった。
オレのいた世界のだ。
もう一度やり直せる。
それにしても誰もオレの所に来ていない。
今世のオレの親がどんな人か楽しみだ。
「おはようサクト」
早速来てくれた様だ。
ステータスにも書いてあったな。
サクトはオレの名前だろうか?
どれ。
「!」
魔族だ。
それもかなり高ランクの。
捻れたどデカイ角に目は紅い血の色だ。
整った顔だが、魔族は人間の敵である。
「さあご飯ですよ」
彼女が胸を露出する。
なんと言うか。
……屈辱。
「まだ小さいのに眉間にしわ寄せないの」
「やっぱりあの人に似てるわ」
あの人とはオレの父親のことだろうか?
楽しみではあるが不安だ。
「おはよう…」
来たよ。
男の声だよ。
兄弟じゃなかったら多分父親。
頼む。
人間であってくれ。
「おぉ、ちゃんと人の形をしている」
尻尾なし。
鱗なし。
羽なさそう。
多分父親は人間だ。
という事はオレはハーフかな?
「!!」
嫌悪感。
圧倒的に相容れないと感じた。
なんだ?
恐る恐る父親の顔をみる。
怒りが湧く。
どうしようもない殺意。
こいつの所為で、という思い。
スラム街で人生を閉じるまで毎晩夢に出てきた顔。
その顔はオレをギルド除名に追い込んだ青年の顔だった。
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