小物の分岐点
思いつきです。
オレの名前はコウ・モノビーだ。
名前がコウで出身の村がモノビー村。
34歳のCランクの冒険者でなかなか稼いでいるつもりだ。
冒険者は死の危険があり、でリターンが少ない職種だ。
オレが冒険者になったのは、19と少しの頃。
今じゃこの仕事を始めて15年だがCランク止まり。
稼いでいるとはいえ月に一度女を抱けるかそこらの稼ぎだ。
虚しいモンだよな。
Cランク冒険者の朝は早い。
日が昇る頃にはギルドに行き依頼を獲得しなくてはならないからだ。
取れたら依頼をこなす。
ものにもよるが大抵日が暮れるまでだ。
そんで飯を食う。
食ったら寝る。
灯なんて勿体ねぇしこの頃にはつける体力もない。
そんでまた新しい朝が来る。
身なりを整える暇なんかありゃしない。
友人達はオレの顔を金を求める亡者と称する。
心外だ実家には仕送りもしている。
この輸送料もバカにできないんだぞ。
オレの人生はなんの為にあるのか…
たまに自己嫌悪に陥るぜ。
ガキがギルドの登録をしに来た。
まだ成人したての15そこらの青年だ。
さっきも言ったがこの仕事は危険だ。
ちょっと警告してやらなくては…
「おいガキ」
「此処はテメェみたいなガキが来る所じゃァねぇ」
「ガキはママの萎びたおっぱいでも吸ってな」
どうだ、この本人を貶しつつ誰もが好きな自分の母さんを貶すという心が痛いコンボだ。
ホント心が痛いがそいつの命が救えるのなら安い傷だ。
「…」
青年は無視を決め込む。
クソ!ホントにロクな仕事じゃァ無いんだ。
「この前来たお前見たいなやつの成れの果てだ」
昨日狩ったボブゴブリンの指を投げつける。
ぱっと見青年くらいの人間の指だ。
「…」
青年はオレを睨みつける。
「成る程ボブゴブリンの指を使って脅していたのか」
見破りやがった。
汗が背中を伝う。
「あんたさぁ街の若い奴らが冒険者に成るのを抑えつけてたんだって?」
「皆んな恨んでたぜ?」
知っている。
街の連中がオレの時だけ値上げしてボッている事も、家にゴミを投げ込んでいることも、
自己犠牲的な正義が周りにとって迷惑なことも気付いていた。
それでも、街の若い奴らがむざむざ死んで行くのを見てられなかった。
恨まれる事なのに続けていたのはソレが約束だったというのもある。
近所の母親達にCランクになった時に、
「うちの子が冒険者になろうとしたら止めてくれ」
と頼まれたのだ。
オレも若い奴が死んで行くのを見てられなかったので依頼ではなく約束として受けた。
もっとも彼女らは忘れてて庇ってくれないのだが恩返しや見返りを求めていた訳ではないから別に良い。
当然圧をかけて登録を辞めさせる行為は違反だ。
最悪の場合というか絶対ギルドを除名だ。
「ねぇあんた俺と決闘しろよ」
考えている間に登録を済ませていたらしい青年が話しかけてきた。
「俺が勝ったらあんたを通報する」
「あんたが勝ったら俺は証明証を返却する」
「おまえが勝った場合のおまえの利益は?」
普通に通報した方が手間もなく博打もない。
「ギルドの高ランクに飛び級だ」
どうやらただの馬鹿ではないらしい。
「良いぜ」
決闘開始だ。
結果はオレの負け。
オレはギルドを除名された。
そして最期はスラム街で人生を閉じた。
感想と評価お願いします。