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プロローグ 『いつかの夢』
この世には”正夢”というものがあります。多くの方が知っているかと思いますが、夢の中で起きた出来事が現実でも起きる、という現象です。
さて、彼の夢は”正夢”か、それとも”ただの夢”なのでしょうか。
――――――――夢を見た。
辺りは粉塵が舞う荒廃した地
聞こえるのは頭が痛くなるような悲鳴と裂けるような銃声音
飛び交うのは罵声か、銃弾か、それとも血か
――――――――酷い夢を見た。
浮かび上がるのはどこか見知った顔の面影を感じる血だらけの人々
可憐で、切なくて、尊い、美麗な女性の微笑み
たった一人、途方もない絶望に倒れゆく自分
目を覚ました時、彼の頬を伝ったのは、冷たい涙
自らの涙を拭い、虚無感にかられる
―――――――――哀しい夢を見た。