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理解できない

作者: 出島優

私の芸術は他人には理解されない。

なんでなんだろう。なんで誰もわかってくれない?なんで私を孤独にする?


私と同じように芽のでない作家、というかアーティスト全般だろう、彼らは常にこんなことを考える。自分は悪くないはずだ、悪いのはこの世界なんだと、自分のちっぽけなプライドを守るために。

だから彼らは見下される。なにもしていない大衆すら、彼らを「バカ」として扱う。それは納得がいかないようにも思うが、仕方ないだろう。事実ずっと周りのせいにして前進しないものは「バカ」以外の何者でもないからだ。


では、本気で考えてやろうではないか。誰にでも伝えられる、理解される芸術とやらを。

まずは芸術というと絵画や音楽、文学など様々な種類があるが、このすべてに共通するものとはなんだろう。まぁ概ねの場合これらすべては人生を彩るためのものであり、生きていくためにはそこまで必要ではないものである。しかしこれらがなければ人生というにはあまりに長く、険しいものになってしまう。そういう意味では不必要ではあるが不可欠ではあるのだろうか。こういった側面を持つものに食事がある。そうだ、今日の夜ご飯はなにを食べようか。パッタイとかどうだろう。ただ知ってる店がなぁ…




『どうしようもないこと考えてるねぇ』

どうしようもないこと?

『君は、君の作ったものが本当にみんなから理解されるようになると思うかい?』

もちろん。それが私の仕事だもの。

『僕はないと思うなぁ。だって君は自分自身のことさえろくに理解できていないというのに。』

自分のことくらいわかっているよ。なんなら自己紹介してあげようか?

『本当にそうかな。じゃあ聞くけど、なんでパッタイを食べようと思った?部屋の隅の萎んだ風船はどこで買った?君の緑の瞳はどちらの親より?どうして彼氏の顔に落書きをした。』

おお?え、えっと…

『君は自分自身についての質問すら、明瞭な回答をすることはできない。だって普段から自分の一挙一動に理由を持ってる人なんかいないからね。つまり君はそれだけ自分を、自分の行動を理解できていない。まして、他人のそれならいわんやおやさ。』

『他人からみて他人の君も同じ。他人は君の行動を理解なんてできないんだ。君の行動から生まれた作品だってそうだ。作るという行動の理解が出来ないやつが、その結果を理解できると思うかい?』

じゃあ、料理とかはどうなの。フランス料理とかの手順は私は知らないけど、出てきたものを食べて美味しいっていうのはわかるよ。

『確かにそうだけど、君が求めているのはそこじゃないだろう?例えば君の作品を見てただ「キレイー」とかいうやつを君は真の理解者なんて思わないはずだ。思うくらいの楽天家なら、こんなこと考えていないはずだしね。君が求めているのは料理で言えば「美味しい」って言葉よりも深いところ、その皿を作る時のシェフの想いまで汲み取れ、みたいなことだ。』

『つまり君が伝わらないと嘆いているのは、どうやって伝えようかと考えるのは、まるで的外れってことさ。だって元々自分ですらはっきり言えないところを他人に理解させようとしているんだもの。』


『そろそろ時間だな。さて、どうだろう。君の中で答えは出たかな?作品を作るのをもうやめてしまうか、それとも………』





はっ

考えてたら寝ちゃってたみたいだ。

でもなんか、はっきりと夢の内容を覚えている。なんでだろう。

そうだ、はっきり答えを言っておかないといけない気がする。何かに対してのけじめとして。

私は、私はこれからも作品を作るよ。私の思いなんて伝わらないだろうけど、じゃあ、見た人が好きに感動できる作品を作ろう。大人でも子供でも、見たら時間を考えないで見とれてしまうような。そして、見た人たちからその作品の感想を聞こう。そこからまた新しい輝きが、想いが、作品が生まれるはずだ。

よし、そうと決まれば、まずはパッタイで腹ごしらえして取り掛かろう!













***『………ねぇ。』

出島優「どうしたの?」

***『結局僕はなんだったんだい?夢オチで片付けられちゃったけど。』

出島優「えー、私に聞かれてもなぁ。」

***『なんでだよ。作者でしょ?』

出島優「んーとね、君という存在は、世界中のあらゆる人が創造して、それぞれのニュアンスや言語で呼んでるの。だから私が勝手にこうとかは言えないんだ。」

***『世界中に僕がいるの?』

出島優「そりゃそうだよ。あなたが自分で言ってたじゃない。他人は自分を理解なんてできないって。つまりあなたはその他人の数だけいるってこと。」

***『そうかー、じゃああんたはなんて呼んでるの?』

出島優「私?多分参考にはならないよ。」

***『それでいいから!とにかく名前がないのが嫌なんだ。』

出島優「そう。そーか…私はねぇ、あなたのことは







って呼んでるかな。」

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