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白い世  作者: 古井雅
8/80

ケーキ

テスト勉強をしようとして英語の教科書を開きました。するととある例文に腹筋を壊されました。

「あれは椅子ですか? いいえトムです」


温いストーブに手を当てて 収まりきらない躰を添えてみる

少し焦げた臭いに混じる 甘いケーキの匂い

音のようにも感じられるいい匂い 衣類に付着した微香

決して美味しくはない匂いだけど 大切にしている匂い

人の存在意義を主張するようにも思える 他者の香り


使い捨てのフォークにこびり付いた ケーキの破片

去年の誕生日ケーキは棄てて 今年の甘美な味を楽しみましょう

少し苦い紅茶の香りに混じった 甘い蜜のようなもの

いつか笑って 「美味しいね」と言えるでしょうか

思い巡らせても 出てくるのは甘い香り


時間を置くと腐っていく それが実像(たべもの)

その時は甘美な蜜でさえ 時間とともに腐り欠けていく

人が生きていくためには どうしても食べきゃいけない

でも食べるという行為は 正しいものでしょうか


思い描いていた他者のユメさえ 甘美な香り

不意になめた肉片すらも 止めどなく流れる水滴さえも

いつも味覚は訴え続けている 「ごめんね」と必死に訴えている

もう忘れちゃった実像は たしかにそこにあったタベモノ


いつの日か それをショウカするようなことは訪れるでしょう


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