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靄
少し前の夏 あの子は逝きました
私は泣きました あの子の舟に滴る水音は、あの子を水底へと叩きつけるようでした
残暑厳しいアスファルトに残っているのは 未だに錆びついた楔です
毒々しい色をした 蠧毒でした
土笛の音色のような断末魔 落陽に混じる光景は
まだそこに実在ような気味の悪さと慟哭と
境界線の交叉しない悲劇だったのでしょうか
そんなことは既に 無意味でしょう
黒い視界はドス黒いモヤで埋め尽くされ その狭間狭間からうつろな眼球が常に外側を向いています
蜃気楼のような明日が何時迄も空をめぐり、地球と一緒に暮らしています
脈絡がありませんか? そうですか
では、私はこれで、
次に会う時は きっと私は檻の中でしょう。




