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音夏学園へようこそ

作者:

あまり深く考えずに軽い気持ちで読んでください。

深く考えたらだめです(笑)

ようこそ、音夏学園へ


先日お渡しした書類は…


ああ、ありがとう。


うん、ちゃんとすべて記入されているわね


あら?


ああ、ごめんなさい。なんでもないわ


では、改めて


音夏学園への入学おめでとうございます


この学園でのルールはただ一つ


自分の役割をしっかり果たし、他の人に迷惑をかけない事


以上よ


楽しい学園生活を送ってね





******





私、小田マリが転入したのはちょっと変わった学園だった。


普通の地味子である私には眩しすぎます。


前を向いても美形


後ろを向いても美形


右を向いても美形


左を向いても美形


生徒や教師の9割が美形なんです!

ついでに出入りしている業者の方も美形ばかりです。

さらに、何をやらせても完璧(パーフェクト)の方が大勢いらっしゃるのです。

容姿よし!勉強よし!運動よし!人付き合いもよし!(親の)財力もよし!


うん、なんでこんな完璧(パーフェクト)人間が多いんだ…この学校


まるでゲームや漫画の世界じゃないか…


そして、学園の所彼処でハーレム・逆ハーレムを見かけます。

うん、ハーレムや逆ハーレムです。

大事なことなのでもう一度言います。

ハーレムや逆ハーレムが存在しています。

学校内に……

1人の男性が複数の女性を侍らせていたり、

1人の女性に複数の男性が愛を言葉を紡いでいたり、

二次元で見るのは楽しいのですが…

三次元(げんじつ)ではあまり見たくない光景ですね。

ただの節操n……ゲホン、ゴホン…


実は父と母がこの学園の卒業生で、小さい頃から素晴らしい学園だと聞いてはいました。

幼い頃は憧れていましたよ。

いつかは通ってみたいって…

でも、成長するにつれて自分なりに自分の背丈にあった理想の学校というモノができるわけですよ。

高校受験の時に『音夏学園』へ入学させたいという親の反対を押し切ってごく普通の公立校に通っていたのですが、父の海外転勤をきっかけに娘の私にも素晴らしい青春を送ってほしいと勝手に『音夏学園』への転入手続きしちゃったんですよ、うちの両親は!

娘の意見一切聞かないって……


転入の件をきっかけに私は現在両親とは一切連絡を取っていません。

祖父母や伯父叔母たちとは電話で話したり、メールのやり取りはしていますけどね(にっこり)

まあ、この学園は全寮制なので問題はないですよね。



さて、私はこの学園で『地味組』と言われる1-Aに在籍しています。

各学年にひとクラスはある普通の子のクラスです。

容姿平凡、勉強平均、運動平均、(親の)財力平均的な極々普通な子のクラスです。


「マリちゃん、最近どう?」

「んー、藤野先輩の逆ハーレム君達と視線が合う回数が多いかな?さーちゃんは?」

「わたしはなぜか、鈴成さんの逆ハーレム君達と視線が合うというかSOS発信を感じる…」

「なんだろうね…」

「うん、なんでだろうね」

彼女は佐山幸代。

彼女も両親に特に母親に強制的にこの学園に入れられた子だ。

彼女自身はふわふわの栗毛色の髪、愛らしいつぶらな瞳、プルンとした唇など総合的にかわいいのだがいかんせん、この学園は美形が多いので地味に見えてしまう。

多分、他の学校に通っていたらモテまくっていただろう。

「ねえ、今日帰りにパフェ食べにいかない?」

声を掛けてきたのはクラスメートの東山ルカ。

背が平均女子よりも高く、スポーツが得意な金髪少女だ。

男装させたら某歌劇団の男役並にカッコイイと思うのだが、やはり彼女も地味組に分類されている。

「学園内のカフェの?」

「あんな煌びやかな所じゃ落ち着かないから、学園の寮の近くにある…」

「喫茶ナイト?」

「ピンポーン!実は昨日ね、帰りにマスターから新作の試食をして欲しいって頼まれたんだ」

「いいね!って、試食を頼まれのルーちゃんだけじゃないの?」

「ううん、マリとさちも一緒に連れておいでって」

「どうする?さーちゃん」

「もちろん、行くわよ!マスターの試作品なら食べたい!マスターが作るスウィーツは絶品だもの」

ということで私とさーちゃんとルーちゃん(あ、私はルカの事をルーちゃんって呼んでるの)は寮の近くにある喫茶店にワイワイ騒ぎながら向かった。



~喫茶ナイト~

「こんn………」


パタン


開けた扉を直ぐに閉めてしまった。


「マリ、どうした?」

中に入らず、扉を閉めた私の顔を心配そうに覗き込むさーちゃんとルーちゃん。

「マリちゃん?」

「ごめん、やっぱりかえ……」

扉から一歩離れようとしたら、扉が開き右腕を捕まれた。


「うぎゃあああああああああ」


逃げたい

ニゲタイ

ゼンリョクデニゲタイ


しかし、私の右腕を掴んでいる奴がそれを許してくれない。



******


「あら、赤、金それに黒がいるじゃない」

ルーちゃんの声に、三人のイケメンが苦笑する。

「よう!」

「やあ」

「…………」

三者三様のあいさつをする赤嶺隆、金城夕、黒河融。

彼らは藤野真理恵の逆ハーレム要員……取り巻き()だ。


赤嶺(あかみね)(たかし)

高校3年

風紀委員長

サッカー部所属


金城(かねしろ)(ゆう)

高校3年

バスケ部所属


黒河(くろかわ)(とおる)

高校3年

生徒会書記

弓道部所属


「なんか疲れてない?」

彼らと同じテーブルの席にちゃっかりと座るルーちゃん。

さーちゃんも同じく。

立っているのは私だけだったので、仕方なく空いている席に座った。

ルーちゃんが声を掛けると三人は盛大なため息をついた。

「最近、藤野のヤツ、調子に乗り過ぎなんだよ」

「何から何まで干渉してくるからこうやって逃げているの」

「おかげで、部活にも満足に出られん」

三人の愚痴に私、さーちゃん、ルーちゃんは顔を見合わせる。

「でもさ、それがあんたたちの役割でしょ?」

「うん、入学した時のアンケートを元に役割振られているんだから」

「文句言うなら入学時の自分たちに言うんだね」

私たちの言葉に三人はがっくしと肩を落とした。

「あー!音夏学園がこんなシステムだと知っていたら入学しなかったのに!!!」

「同じく」

「(小さく頷く)」

ガシガシと頭を掻く赤嶺先輩。

哀愁漂わせる金城先輩。

遠くを見つめて現実逃避をしている黒河先輩。


彼らの言葉を聞いてお気づきになりました?

『音夏学園』は入学時にアンケートを書きます。

そのアンケートをもとに『役割』を与えられます。

『役割』は半年から1年で更新されます。

その『役割』とは大まかに分けて4つ。

1つ目は『主人公』

2つ目は『攻略キャラ』

3つ目は『ライバルキャラ』

4つ目は『その他(モブ)

もうお分かりですね。

この学園は恋愛シュミレーション学園なんです。

元々は上級階級の人たちのお遊び半分のお見合いの場だったんですよ。

3年間学園生活を共に過ごして理想の異性を見つけて恋愛結婚することが目的だったとか…

上級階級の人たちは生まれながらに許嫁が決まっていたり、会社の利益のための政略結婚が当たり前でしたからね。

同格の家柄から選ぶならという条件で始まったみたいですが、まあ親の思い通りにならないのが恋愛ってものですけどね。


創立当時はそんな思いから建てられた学園ですが、時代と共に変わってしまった。

いつの頃からか『乙女ゲームのような学生生活を送りたい』とか『大勢の異性に崇められない』などと言い出す生徒が出てきたのです。

学園側はそんな生徒の対応に困惑していたのですが、理事長が

「では、生徒達に入学時にアンケートを書いてもらい、そのアンケートをもとに『役割』を決めて学園生活を送ってもらってはどうでしょう。半年から1年で『役割』を更新させれば……恋愛シュミレーション学園にしちゃいましょう♪」

という妙案(?)を出して、あっさりと理事会に通ってしまったんですよね。

表向きは普通のセレブ学校で世間様には名は通っています。

卒業生も声を大にしてこんなシステムがあることをしゃべりませんので世間様にはあまり知られていません。

入学して初めて知る事実ってやつですね。


ちなみに『役割』は休み時間・昼休みのみです。

朝と授業中と放課後は『役割』から解放されます。

あと、学園の外も無効です。

一応学生ですので、勉学を疎かにしてはなりません。

部活動もしかり。

規定の時間以外で『役割』を演じる場合はペナルティが課せられます。

ペナルティは理事長自ら行うのでどんなことかは、与えられた人にしかわかりません。



私は知っていましたよ、このシステム。

だって両親共に『音夏学園』の卒業生ですから。

だから、必死に抵抗したんです。


「マリ!お前知っていたんだろ!?」

あら、赤嶺先輩たちが私を睨んでいる。

「知っていたから受験の時に忠告したじゃない。音夏学園だけはやめておけって」

マスターの試作品のパフェを食べながら答えると彼らは声を詰まらせた。

あ、言い忘れてましたが、彼ら3人は私の幼馴染です。

親達が大学時代の親友だとかで家族ぐるみで仲がいいです。

私一人だけ学年と性別が違うんですけどね。

昔は妹のようにかわいがってくれていたので懐いていました。

まあ、容姿端麗、文武両道の彼らのファンから小学校時代から幾度となくお呼び出しをいただいたのも今ではいい思い出ですね~

思い出したくもないし、現在進行形ですから!!!

『役割』があったとしても放課後に呼び出しがあるんですよ!

私の役割が『その他』だかららしいのですが……

って、私のせいじゃないのになんで毎回呼び出されなきゃいけないのよ。

今度から無視しようかしら……

だから、私は彼らに会いたくないのです。

学園の中でも外でも逃げ回っているのに、今日は不覚にも捕まってしまったのです。



「そういえば、東山兄妹は兄は『攻略キャラ』一択だったのに、妹のお前は『その他』一択だったって噂になっているぞ」

「当たり前です」

黒河先輩の言葉をバッサリと切るルーちゃん。

ルーちゃんの双子の兄・東山ルイは鈴成小夜のハーレム要員だ。

最近、ルイからの愚痴が多いって愚痴ってたな~そういえば。

「何が悲しくて疑似恋愛しなきゃいけないのよ。恋愛するなら本物に限るでしょ!青春を無駄にしてなるものか!!!」

ルーちゃんの雄叫びに私とさーちゃんも頷く。

さーちゃんも母親がこの学園の卒業生だからシステムを知っていたので最初から『その他』一択。

もちろん、私も『その他』一択です。

理事長から『ライバルキャラ』やらない?って言われた時は面白そうだと思ったけど、イメージが固定されるの嫌だから断った。

一度『ライバルキャラ』になると役チェンジしても前のイメージが先入観としてあるのでなかなか難しいらしい。

中には卒業まで『ライバルキャラ』一択の人もいたらしいけど…


『その他』の役割の人は割と自由なんだよね。

『その他』同士なら(本当の)恋愛も自由ですし、『主人公』や『攻略キャラ』に片思いもできます。

更新時に申請(こくはく)して恋愛成就すれば『主人公』『攻略キャラ』は自動的に『その他』になります。

実質はお互いの『攻略キャラ』扱いになるのだけど複雑で分かりづらくなるということで『その他』括りです。


ちなみに『役割』は制服のリボンやタイでわかります。

『主人公』は臙脂

『攻略キャラ』は紺

『ライバルキャラ』は緑

『その他』は黒

学年はリボンやタイに何本の白線が入っているかで見分けられます。

1年なら1本

2年なら2本

3年なら3本

あ、教師にも色に関しては適用されていますが、私は今まで黒以外見たことありません。



「金城先輩たちは藤野先輩のハーレムから抜け出したいのですか?」

黙々とパフェを食べていたさーちゃんが問いかけると3人は思いっきり縦に首を振った。

「ルールは学園内だけだって言っているのに休日の外出先まで押しかけてくるから正直鬱陶しい」

へー、藤野先輩そんなことしているんだ。

ペナルティ知らないのかな?

赤嶺先輩(たかちゃん)達は知らないの?」

私の問いに三人は首を傾げた。

「それを盾にすればいいだけじゃん」

「「「え?」」」

「理事長に訴えればいいじゃん。学園の外でも付きまとわれて迷惑しているって。理事長が事実確認して事実だったら『主人公』を『その他』にすぐにでも変更できるじゃん。知らなかったの?」

私の言葉に3人は驚いた表情を浮かべている。

学園規則にも書いてあることなんだけどな~

意外と知られていないみたいだけど…

その他にもいろいろと抜け道(・・・)があるけど…まあ、今は言う必要ないか。


その後の3人の行動は早かった。

証拠を集めて、理事長の許可を貰って彼らが『その他』になった。

藤野先輩はそのまま『主人公』続投で、新たに『攻略キャラ』を追加するらしい。




「マリ!一緒に帰ろうぜ」

放課後、教室までくる赤嶺先輩(たかちゃん)

「マリ、ゲーセン寄ってこうぜ」

昇降口で待ち伏せしている金城先輩(ゆうくん)

「マリ、ナイトにケーキを食べに行かないか?」

寮の前で待っていた黒河先輩(とーるくん)



あれ?

なんかおかしなことになっているきがする……



******


『攻略キャラ』から『その他』になった赤嶺、金城、黒河とマリのやり取りを毎日特等席で見ている幸代とルカ。

彼女たちは赤嶺達のマリへの思いに気付いているが、あえて知らないふりをしている。

今日も繰り広げられている攻防戦を楽しく観戦しているのだった。

幸代「マリちゃん、本当に気づいてないんだね」

ルカ「さち、それはあんたもだよ」

幸代「え?」

ルカ「(ルイたちにも教えたほうがいいのかしら…)」



******



あらあら


やっぱり彼女たちは本来は『主人公』だったのね


アンケートで『その他』の結果が出たからおかしいと思ったけど


ワザとだったみたいね


ふふ、これから面白いことが起こりそうね


彼女たちが卒業するまであと2年くらいかしら…


どんな物語が繰り広げられるのかしらね


楽しみだわ


あ、そうそう


生徒達に書いてもらっているアンケートはただのアンケートじゃないわよ


心理学者の友人に頼んで作ってもらった『願望シート』よ


生徒達の恋愛に関する願望をそれとなく叶えてあげているだけ


どう?


あなたも体験してみる?


もし、興味があったら見学にいらっしゃい


『音夏学園』へ





お読みいただきありがとうございます。

ふと思いついた話を勢いだけで書いてしまいました。


文中の『地味組』とは自らモブを意図的に選んだ子達の集まりのクラスです。

本来は『主人公』クラスよりも上の人(容姿・学力・運動・財力等)もいますが、地味男・地味子に変身して生活しています(笑)


【蛇足】

赤・金・黒の3人は1~2年時は面白そうだと遊び感覚で『役割』をやっていたのですが、3年になって幼馴染のマリが転入(5月末頃)してきたことでマリに誤解されることが嫌だと感じ始めた(マリの事が好きだと自覚した)為、『役割』から逃れたがっていた。

マリから聞いた方法で『役割』を無事に『その他』に変えて、マリにアタックを開始。

理事長からは「頑張りなさいね」とエールを貰っていたりする。


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