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働かない勇者様の日常   作者: @you
~本編~
4/7

第四幕 勇者様は馬鹿魔力



「勇者様―――!! お早うございま、すっ」


ドッゴォォォン!!


「ちっ、厄介なカーテンですね。聖剣の一振りでも傷一つつかないとは。これでは勇者様が朝の陽射しを浴びられないではありませんかっ」

「いや、もうツッコミどころが多すぎて僕どうしようか?」

「勇者様は魔王を討伐してくださればいいのではありませんか?」

「ヤダよ。流れで僕をだませると思わないことだねぇ」


邪魔なカーテンを排除するべく、宝庫から持ち出してきた聖剣「エルドゥマリス」をザクッ、と床に刺して、わたしは勇者様に詰めよります。


「お願いしますよぉ……わたしと一緒に魔王討伐を為してくださいよぉ……」

「涙目で懇願されても嫌なものは嫌だよ? 後、最近王女様遠慮が無くなりすぎでしょ。僕が魔法でなんでも直せると知ったとたんに直接手段にでるなし」

「幾らでも直せる部屋より、勇者様を連れ出す方が優先度が高いのですよ」

「直すの主に僕なんだけど……〝直れ〟」


勇者様が一言呟くだけで、荒れ果てた部屋は元の部屋にスルスルと逆戻りしていきます。


いつ見ても勇者様の魔法は凄いですね。


勇者様は膨大な魔力に任せ、口に出して命じたことを現実のものとする、という超魔法を操ります。


これは勇者様が新たに生み出した魔法のようで、勇者様は〝言霊〟と仰っていましたか。


正直、今までのわたし達の魔法の常識からするとあり得ないことですが、それを可能にしてしまうのが勇者様の勇者様たる所以なのでしょう。


「その聖剣ちょっとどかして。その床の傷も直しちゃうから……早くどかさないと、聖剣消して傷直すよ?」

「それは御勘弁くださいなっ」


慌てて床に突き刺した聖剣を抜き、テーブルの上に置きます。


聖剣。


初代勇者様の持ち物で、その強大な力によって初代勇者様と共に魔王を眠りにつかせた・・・・・・・という、抜き身の剣。


それをあっさり消すなどとは……本当に、勇者様は実力のみなら魔王でさえ手も足もでないようなレベルなのでしょう。


……実力のみなら。


「失礼なこと考えてるねぇ」

「否定したいのであれば、まずベッドから降りる事から始めましょうか?」

「んー、だるい。第一さぁ、〝言霊〟一回使うだけでも、王女様三人分ぐらいの魔力使うんだけど。そんなホイホイ使わせないでよー」

「そ……そうだったのですか……?」

「うん。まぁ、僕の元々の魔力量だと、素で8000回くらい使えるけどねぇ」

「はっせん……心配したわたしが馬鹿馬鹿しくなりますね」

「うん。王女様は馬鹿だよね」

「それは思っていても口にはださないものです……」


確かにわたしは力しか能のない王女ですけども……


そしてそのわたしの24000倍の魔力を持つ勇者様は一体……考えてみると、24000ってもう訳わかんないですよね……


わたしは一人で王属魔道士1000人分の魔力量と言われたものですが……


更にその王属魔道士は一般の魔道士100人分程の魔力量を持ったエリート。


更に更にその一般の魔道士さえ、平均して常人50人分程の魔力を持っているハズですから……


勇者様の魔力量は常人の……


…………あー。


………………何倍になるんでしょうねぇ?



###



「ふぅ、今日も中々に充実した一日だったねぇ」


ガチャ


「……失礼する」

「あれ? 書庫の番人じゃん。どったの?」


「ちなみに書庫の番人は、僕が召喚されてから魔法を教わった大魔道士様でねぇ」

「見た目はただの銀髪幼女だけど、例にもれず数百歳だぜ」


「……王女に、言った?」

「んーん。言ったら王女様部屋に遊びに来てくれなくなっちゃうじゃない?」

「……嘘。本当は王女を納得させるのが面倒なだけ」

「いや、それも多分にあるんだけどなぁ。僕の行動原理はもはや、王女様を中心に回っている……っていうのは言い過ぎかな」

「……大丈夫。心配しないでも、王女は理解する」

「そう? ならいいんだけどさ」

「……王が味方なら、万全」

「確かに、そうだったねぇ。わかったよ、じゃあ明日にでも話してみようかね」

「……それがいい」

「ありがとね、番人」

「……名前で呼んで。クルーエ」

「あっはは。ごめんねー、強い人の名前って言うのは、それだけでも力を持ってるんだよ。〝言霊〟使いとしては、あまり口に出したくないかなぁ」

「……傷つく」

「いや、ホントごめんね~」

「……貴方なら、どうとでもできそうだけど」

「僕ほどの魔力になると、確かに何が起きても対処できるけど……それは逆に何かが起きてからでは手遅れになるかも知れない、ってこともあるんだよ。それに僕でも死者蘇生なんかはできないから」

「……そう。なら、諦める」

「要件はもうない?」

「……無いこともない。一緒に、寝よ?」

「残念だけど、僕は愛した人としか枕を共にしないって決めてるんだ~」

「……英雄、色を好むと言う」

「あっは。僕は、英雄でもなんでもないよ。じゃ、〝帰れ〟」

「……扱いが酷い……さよな」

「ら~」

「ふぅ。あーあ、明日か。憂鬱だな~」


「ねぇ、魔王?」




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