10
ザイルの病院に戻ると待合所でトーリが座っていた。
「トーリ、ただいま」
「おかえり、セキ」
「クロエは?」
「クロエも一日安静だって」
「そう」
「無事終了?」
セキはトーリの隣に座った。
「そうね。仕事自体は、ね。後は自分たちで解決してくれるといいんだけど」
「で、結局さ、騙されていたのは正解?」
「でしょうね。今のところ、依頼側としては利用しようとして、足元すくわれた状態よね。向こうは」
「ふーん」
「まあ、私の想像で話すけど」
「どうぞ」
「きっかけはセシルよね。一族から追放された理由は教えてくれなかったから分からないけど。それから、村に降りて、ラオを利用した。当主が床に伏せったのもセシルでしょう。竜が村の近くを飛んだ。だから、山に討伐隊を出しましょうって。その事で一族たちが下山して村人を襲う。被害が出た。竜が毎年通ると嘘の情報を流し、被害を竜のせいにして一族が下山して被害が出てる事実を隠した。観光客を村に呼び、一時期観光客を入らないようにすることで本当に竜が来て被害が出てる演出した。というのがラオに対する説明でしょう。本心は討伐隊が出る事でセシルの一族も討伐隊を襲いに来る。だから、より強い者を派遣して自分の一族を殺して欲しかった。竜退治という名目で。という推測」
「誰かが誰かを利用して作られてたって事?」
「簡単に言えば、そうね」
「そうそう、知ってる?意外とセキって、面倒なの嫌いなくせに、結局手助けしちゃうよね。ラオって人とかクロエとか」
「……知ーらない。さあ、帰るよ」
結局、事件の真相は闇の中。
ま、興味ないけどね。
明日から、また日常が始まる、かもしれない。