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オカエリナサイ(5)

毎週水曜日午前0時(火曜深夜24時)に次話更新します。

                        5

 

 

「あなたは、ほんっとうに救いようのない馬鹿よ!」

 黒塚家当主の謁見の間を辞してから、僕と愛子さんは堰を切ったように、言い合いを始めた。

「なんで、あそこで頭を上げてしまうのよ!おかげであの男にあなた、覚えられてしまったわよ!どうするのよっ!」

 薄暗い廊下を、肩でつむじ風ぐらいは起こせそうなほどの勢いでズンズン突き進みながら、愛子さんはいかにも機嫌悪そうに僕にそう言う。

「いままでもあなたは何かと、色々なものに顔を突っ込んでは、自覚的にも無自覚的にも巻き込まれてきたけれど、それは言わばギリギリの線だったのよ。何とかまだ、ただの日常に戻れるところだったわけ。でも、今度は違うわ。あの男に覚えられるという事は、それは日常との隔絶を意味するの。あの男にはそれだけ強い力があるのよ」

「何ですか、それ?ていうか、あんな事を言われて、あのまま引き下がってなんていられる訳ないじゃないですか!」

 愛子さんの肩から吹き荒れるつむじ風のようなその激しい口調に負けじと、僕もせめて扇風機の強ぐらいの勢いで言い返す。

「本当は掴みかかって、殴ってやりたかったぐらいですよ。あそこで留まった僕を、僕は褒めてやりたい」

 マラソンの金メダリストが言ったような台詞に続けて、

「そんなに言うなら、僕なんてつれてこなければ良かったじゃないですかっ!大体、勝手に連れて来てそんな事言われても、知らないですよ」

 と、僕が半分拗ねたように抗議すると、愛子さんは実に都合が悪そうに、

「だって…それは……」

 なんて、はぐらかそうとしている。

 数秒の沈黙。

 その沈黙を破ったのは――

「愛子様は怖かったのでございますよ、太郎さん」

 僕たちの後、いや、正確には愛子さんの後をついてくる流鏑馬さんだった。

「うるさいわよっ!流鏑馬っ!」

「失礼いたしました、愛子様。しかし、お言葉ですが、私は愛子様ご自身では理由をお答えできかねるのでは無いかと、代わってお答えさしていただいたのです。いけませんでしたか?」

 相変わらず慇懃な笑顔を貼り付けて、そう言った流鏑馬さんは「ぐぬぅ~」と黙り込んで唇を突き出した愛子さんを見て、ますます目を細めた。

 何だか、流鏑馬さんがかっこいいぞ。

 いつもと違って(失礼ながら)かっこいい流鏑馬さんは、愛子さんの沈黙をいい事にさらに話を続ける。

「愛子様にとって、いや、このわたくしにとっても幾歳様、現当主様はそれはそれは恐ろしい人なのでございますよ。一対一ではとてもではありませんが、お会いしたくはありませんものなのです」

 いつにもまして饒舌な流鏑馬さんは、表情を変えずに話し続ける。

「そうなんですか…?」

「そうなのですよ。ね?愛子様?」

「流鏑馬、いい加減にしなさい。あなた、覚えておきなさいよ……」

 静かに怒る愛子さんのほうが、僕にはよっぽど恐ろしい。

 しかし僕とは違い、流鏑馬さんは

「お~こわ

 なんてふざけている。

「怖くてたまらなかった愛子様は、誰かに傍に、いえ、そうではありませんね、太郎さん、あなたに傍にいて欲しかったんですよ。愛子様はあなたを巻き込みたくないという思いと、あなたに一緒に居て欲しいという相反する思いに挟まれて、その折衷案として、今回のような行動に出たのですよ」

 愛子さんは「ああああああああああ」と言いながら耳を塞いで、聞こえないふり。

 流鏑馬さんは眩しそうに目を細めてそれを見つめ、僕に視線を移す。

「だから、どうか責めないでいてあげてください。お願いいたします」

 深々と頭を下げて、流鏑馬さんはそう言った。

「いや…僕は別に責めているわけじゃ……」

 僕は、何となくドギマギしてしまう。

 いや、責めてましたよ。確かに責めてました。

 でも、そんな風に言われるなんて思わなかったんだよ。

 そんな僕の心を知ってか知らずか、流鏑馬さんは心なし居住まいを正して、僕の目をしっかりと見て、言い聞かすようにこう言った。

「そして、愛子様と可能な限り共に居てさし上げてください」

 顔つきはいつも通りの笑顔だったけれど、瞳の奥に何か別のものが光った気がした。

「あなたに初めてお会いした時に感じたわたくしの直感は、間違いではなかったのだと思います。いえ、そう思わせてくださいませんか?」

 そういえば、

 始めて会ったあの事件の時に、流鏑馬さんに「末永く仲良くしてください」なんて言われていたっけ。

 すっかり忘れていた。

 でも、

 そんな事、改めて言われるまでもない。

「当たり前じゃないですか、流鏑馬さん。僕は――」

 そこで、言葉に詰まった。

 僕は、どうしたいんだろう?

 軽々しく、それに応えてしまって果たしていいのだろうか?

 流鏑馬さんに改まってそんなことを言われてしまうと、意識してしまって、おいそれとは答えることが出来ない。応えることが出来ない。

 故事にある歩き方を訊かれたムカデが歩き方が分からなくなってしまうというのは、こういった状態を言うのだろうか?

 歩くように、呼吸をするように、そんな風に自然に一緒に居る人こそ、大切にしようとすればするほど、傷つけてしまうのだろうか?

 流鏑馬さんが変なことを訊くから、僕は僕のことが分からなくなってしまいそうだった。

 変に意識してしまったものだから、愛子さんの顔がまともに見れない。

 そんな愛子さんもわざとらしく、我関せず見たいな表情を作ってはいるけれど、僕にはその両耳が、今はもうあまり見かけないパラボラアンテナのように大きくなっているのが見える。

「僕は……」

 僕が言いよどんだその時、何か小さな生物と思われるものが、愛子さんの膝頭にアメフトのラインバッカーのようなタックルを仕掛けてきた。

「えっ?何?」

 愛子さんも以外だったようで、驚きながらもその小動物を見る。いや、よく見ると小動物じゃなくて、クラシックなドレスを着た――

「おかえりなさいませ!姫ねえさま!」

 頭にリボンをつけた幼女だった。

 にしても、姫ねえさまって事は……。

「もう、驚いたじゃない!めると!」

 そう言うと愛子さんは柔らかい手つきでその子の頭を撫でる。

「ちょっちょっちょっ、何ですか?この子は?」

 まあ、何となく予想は出来るけれど。

「ああ、この子はあたしの一番下の妹、黒塚めるとよ」

 フワフワした髪の毛を弾ませて、めるとちゃんは子犬みたいに愛子さんの膝に絡みついている。その様子から、よっぽど愛子さんが好きな事が伺える。その表情もまるで春先に見かけるかわいげなタンポポのようで、それに誘われたミツバチの羽音のような軽やかな笑い声をあげている。

 なんと可愛らしい。

『可愛らしい』の純粋培養だ。

「やあ。僕の名前は田中太郎というんだ。君のお姉さんのお友達だよ。よろしくね、めるとちゃん」

「馴れ馴れしく話しかけないで下さる?」

 年上らしく、膝を折って優しい好青年を装って話しかけた僕に、まるで西太后かマリー・アントワネットのごとき傲岸不遜さで冷たく言い放つめるとちゃん。

「……えっ?」

 呆気にとられる僕に向かって、明らかな敵意を含んだ視線を地上デジタル放送ぐらいはっきりと送って、めるとちゃんは

「あなたは一体なんですの?お姉さまの奴隷のくせに、立場をわきまえなさいよ」

 年相応の舌っ足らずな口調で、そんなことを言うので僕は可笑しくて笑ってしまう。

「何が可笑しいんですの!?馬鹿にするんじゃ無くってよ!」

 顔を真っ赤にして、めるとちゃんは体全体で抗議行動を起こす。まあ、その抗議行動というのもかわいいもので、

「この、この、この、この」

 何て言いながら、両手を振り回して僕に向かってくるだけというものだった。

 ぽかぽかぽか。

「あはは、痛い痛い」

 ぽかぽかぽか。

「痛い痛いって」

 ぽかぽかぽか。

「いや、だから痛いって」

 ぽかぽかぽか。

「だから、痛いって!」

 ぽかぽかぽか。

「いい加減に――」

 僕はめるとちゃんの頭をはたく。

「しろっ!」

 前につんのめるようによろけためるとちゃんだったのだが、顔を上げたときには目に涙を浮かべ、

「あーっ!この男がわたしを叩いたーっ!姫ねえさま!この男、わたしを叩きましてよ!ねえ!姫ねえさま!酷くありませんこと!?このわたしを叩くだなんて、万死に値しますわよ!ええーい、どうしてくれましょう!」

 このガキ、チクリやがった。

 にしても、なんだよ、その喋り方。

 どこの貴族様だよ。

 しかし、そんな僕の口には出さない本心を、ミジンコほども気にする素振りもなく、

「そうですわね。めるとに手をあげるだなんて、思い上がりもはなはだしい。即刻、市中引き廻しの上、打ち首獄門ね」

 愛子さんは何故か嬉しそうにそう言う。

 大岡裁きも真っ青な、非常に横暴満点なお沙汰が下りたところで、僕はふと気がついた。

 この家に来てからというもの、どこか張り詰めていた愛子さんの表情が、めるとちゃんと話している時には和らいでいる事に。

「なにニヤニヤしているのよ。その顔、あなたが思っているよりもずっと気持ち悪いわよ」

 と、愛子さん。

「ですわよ!」

 と、めるとちゃん。

 はいはい……。もうその台詞も定型句ですよね……。

「奴隷の事は置いといて、姫ねえさま?」

 幼い口調で、奴隷って聞くと複雑だな……。

「姫ねえさまは、もうどこにも行かないですわよね?帰ってきてくださったのですわよね?ね?姫ねえさま?」

 聞き分けの悪い子供がせっつく様に、めるとちゃんは愛子さんの膝にしがみつきながら、そう問い詰める。

 そのめるとちゃんの頭をまた優しく撫でて、その手つき同様、いやそれ以上に慈愛に満ちた表情で愛子さんは言った。

「めると……。あたしはもう戻ってこれないのよ。もうここにはいれないの」

「なんで?なんでですの?ねえさま!」

「あたしはもう黒塚の名を捨てたのよ。もう、ここにあたしの居る場所は無いし、あたしにここに居る資格はないわ。めるとは賢いからわかるわよね?」

 見たことも聞いたこともないぐらいに優しげな愛子さんの表情と言葉に、いやいやと首を振って

「わからない!わからないですわ!めるとは姫ねえさまと一緒にいたいんですの!」

 めるとちゃんは年相応に駄々をこねる。

「わたしだけじゃない。幾歳にいさまだってきっとそうですし、もしかしたら百夜にいさまだって姫ねえさまに帰ってきて欲しいはずですわよ。きっとそうですわ!」

「めると……」

 愛子さんは困ったような、すこし恥ずかしがっているような複雑な表情を浮かべる。

「ごめんね……」

 愛子さんは一言だけそう言うと、めるとちゃんの髪をなだめる様に優しく撫でた。

 

 何だか、いまだにいまいち信じられない。

 愛子さんに本当の家族、兄弟がいるということが。

 確かに我々人類は、自然発生できるわけではないので、遺伝学上の両親がいるはずだし、その両親から他の子供が産まれていたとしても、なんら不思議な事はない。

 しかしながら、愛子さんにはどこかそういった雰囲気を感じなかったから、勝手に無いものと思っていた。

 そんな訳無いのに。

 わかっていた筈なのに。

 でも、何なのだろう。

 何故か気持ちがざわつく。

 僕の知らない愛子さんがいることが、どこと無くショックなのかもしれない。

 だから、

 愛子さんが、めるとちゃんに帰れないと言った時。

 僕は良かったと思ったんだ。

 自分でも戸惑ってしまったけれど、

 確かに僕は良かったと思ってしまったんだ。

 

 それはそうと、

 愛子さんの家族の事やら何やらでうやむやになってしまったけれど、結局、何もわかっていない。

 何がって?

 それは、連れて行かれた木星の居場所だ。

 僕たちは全く手がかりも無いまま、数日を過ごしていた。

 気持ちは焦るのだけれど、どうすることも出来ず、それがさらに焦りに拍車をかけるそんな毎日を繰り返し、すでに今年も残るところ、三日となったのだった。

 愛子さんの考えでは、黒塚家に行けば何か手がかりが得られると思っていたみたいだけれど、その考えは蜂蜜のシロップ付け和三盆を添えて、よりも甘かったようだ。

 それでも愛子さんだって何もしていないわけではない。

 こうしている今だって、愛子さんの命を受けた流鏑馬さんは方々を言葉通りの意味で飛び回って、木星を探していることだろう。

 って、あれ?

 愛子さん何もやってないんじゃない?

 まあ、かく言う僕も全くの手詰まり。何もやる事ができないので、愛子さんを責めるわけにもいかず、ただただ、南と一緒にヤキモキするだけだった。

 そうやってドクロ事務所に何だかんだ言っても、みんな毎日集まってはため息を、つきあっていた時だった。

「ああーーーーーっ!」

 南が突然声をあげた。

「な、何だよ!?宿題でもやってなかったのかよ?」

「何言ってるの、太郎くん。宿題なんてとっくに終わっているに決まってるじゃない」

 決まってなんかいないぞ、南。その証拠に僕はまだ一文字、いや一画さえ書いていない。

「ダメじゃない、もう。って、いやいや、そうじゃなくて、私、思いついたっていうか、見落としていたというか……」

「何だよ?もったいつけてないで教えろよ」

 僕はたいした気も無く南に尋ねた。

「うん。木星ちゃんの手がかりなんだけど、もしかしたらそこの機械に何かあるんじゃないかと思って。だって、そのジュピターシステムって木星ちゃんの分身みたいなものなんだよね?だったら、やっぱり何か――」

 南の言葉を最後まで聞くほど、僕も愛子さんも耄碌もうろくしてはいなかった。

 僕と愛子さんは縮地を使ったのかと思うほどのスピードで、ジュピターシステムに駆け寄る。

 そのディスプレイモニターには――

「…って、なんじゃこりゃ?」

 モニターには僕たちが期待したような、木星からのSOSも、犯人の脅迫も、居場所のヒントも何も無かった。そこにはただ、ただ、膨大な量の0と1が敷き詰められていた。

「これじゃ、何も分かんないですね」

「そうね…木星の事だから、何か残しているんじゃないかと期待したんだけどね……。あ~あ、どこいっちゃんだったんだろう、木…せ…い……?」

「ん?どうしたんですか?」

「えっ?いや、ここのとこなんだけど……」

 愛子さんが指差す先に、0でも1でもないものが表示されていた。

 イオと書かれたモニターの画面左端に41と表示されていて、他の0やら1やらは常に変動するのにその数字だけはずっと変わらなかった。

「四十一……ですか……。何の意味だろう……」

 年齢?もっと直接的に番地?

 そうやって僕たちが頭を悩ましていると、

「あっ!こっちにもある!」

 と南が声を挙げた。

 一番端のカリストに表示されていたのは、

「…四十三ですか……」

 ますます分からない。

 よくよく見ると、他のモニターにも表示があった。

「それじゃ、まとめるとイオに四十一、エウロパに三十三、ガニメデに二十四、カリストに四十三……か。これって何かの暗号ですよね……?」

「う~ん。何というか暗号というよりもジュピターシステムのバグとしてみたほうが正しい気もするけれど……」

 愛子さんは思案顔だった。

「でも、ジュピターシステムってそんなバグが起こる様なものじゃないんでしょ?それじゃ……」

 天下御免の最強スーパーコンピューターシステム。それがジュピターシステムというもののはずだ。こんなバグなんて出さないだろう。それとも木星がさらわれた事が何か影響を与えているのだろうか?意味を持たせようとするならどうとでもなりそうではあるが、それだけに安易に決め付けるのはいけない。

 なんて、僕が心にひそかに決めていたとき。

「ああーーーーーーっ!」

 と南が叫んだ。

「ったく何だってんだよ?」

「太郎くん。私、分かっちゃったかも……」

「何がだよ?」

 分からないという事が分かったとかそんなつまらないことを言うなら、僕はその口をこの唇で塞いで……っと、やらないよ!

 僕の脳内で、とてもここでは書けないような破廉恥な想像をされていることなんて露知らず、南は無邪気さ百二十パーセントで、子供みたいに得意げに教えてくれた。

「えっとね~、これ四十一じゃなくて四と一なんじゃないかな?で、四が縦で一が横と考えます。どう?分かってきた?」

 えー…南さん。非常に申し訳ないのですがこのヌートリアよりも劣る脳みその持ち主である僕にも分かるように説明していただけませんか?

「もう!何でわかんないの!」

 分かる人はみんなそう言います。

「だから、平仮名なんだって。そうすると四と一だと『た』になるんだよ」

「おおっ!そうか!」

 なるほど。

「ということは、エウロパは三と三だから『す』になるのか。へえ~」

 妙に感心してしまった僕に対して、

「そんなことも分からないから、あなたはいつまでも太郎のままなのよ」

 鼻で笑って、愛子さんは尊大な態度をとる。

「暗号って程でもないわ。これは本当にただのバグなのかもしれない。ただ、それに法則性とその法則に基づく意味をこっちで附帯させただけともとれる」

「でも、今はこれしか手がかりが無いんですから。えーっと、つぎはニと四だから…『け』か」

「ええ、そうよ。それは声なきもの達からの必死の訴えだった。これでも精一杯分かりやすくしたつもりなのよ、この子たちは……」

 そう言うと愛子さんはめるとちゃんにしたように、優しくモニターを撫で、

「ちなみに最後は『て』よ」

 と考えている僕に答えを教えてくれる。

 ということは、

「『た』『す』『け』『て』って、『助けて』になる!」

 それがこのジュピターシステムの声だっていうのか……。

 主を失って、でも動けない自分達にはどうすることも出来ずに、プログラム以上のことは出来ないから、メッセージをバグとして発生させる。

 僕は物言わぬ機械たちの、非常に人間じみた行動に胸を打たれた。

「イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト…お前達の大事なご主人様は僕が絶対に連れ戻してやる。任せとけ!」

 僕は人にそうするように、親指を立てて見せた。

 すると、僕の言葉に安心したのか、四台全てのモニターが消えた。全くのブラックアウトだ。それが僕には機械たちが「任せた」と言っているように思えた。

 

 僕が自分の双肩にかかった責任をしみじみと噛みしめていると、消えたはずのモニターが再度点灯し、そこにはなんと地図がかなり詳しく映し出された。

 四台共に同じように表示された地図に一箇所、星マークが入っている。

「これって……」

「おそらく、木星の居場所でしょうね……」

 僕と同じようにモニターを覗き込んでいた愛子さんは静かに呟いた。

「これは、意外なところだったわ……」

「意外というか……」

 意外というには僕はその場所をよく知りすぎていた。

 その場所とは――


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