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異世界恋愛系 作品いろいろ

今になって気づいたわ。あれはあなたの優しさだったのね。

作者: 四季
掲載日:2026/10/31

 関係の終わり。

 婚約破棄。

 冷ややかな目をして告げられたあの時のこと、忘れられないわ。


 どうしてそんなことを言うの?

 なぜ心なく切り捨てるの?


 そんなことばかり考えていたあの頃は、何が起きているのか本質的な部分を見ることができていなかったから、本当の意味に気づけていなかった……。


 でも、今になって気がついた。


 あなたがわたしを切り捨てたのは、わたしを護るためだったのね。


 今さら気づいてももう遅いかもしれない。心の内であなたを責めてきたのだし。今になってすべてを理解しても手遅れ。だって、わたしは既に、心の中でだけとはいえ随分あなたを責めた後だから。

 あなたの本当の思いにかなり遅れて気づいてから、どんなに綺麗な言葉を並べても、清らかなふりをしてみても、何の意味もないでしょう。

 婚約者だったあなたのこと、本当なら、誰よりも信じているべきだったのに。一方的に婚約破棄を告げてきた悪人みたいに思い込んで、心を遠ざけて、酷い人だと胸の内で何度も繰り返して……。


 何を言っても手遅れだと分かっているわ。

 今さらごめんなさいなんて言えるわけもない。


 でも、だからこそ、これから先、心の中では他の何よりも強く言い続けていたいの――ありがとう、って。


 あなたがわたしを切り落としてくれたから今わたしはこうして変わりなく暮らせているのね。


 あれはあなたの優しさだった。

 そしてあの時あなたにできた唯一の防御だった。


 今は本当に感謝しているわ。

 わたしのために汚れてくれたこと。わたしから嫌われる、そういう道を辿ると知りながらも、わたしを護るためにその選択肢を選んでくれたこと。

 どれだけ感謝してもし足りない。

 けれど、むしろ、だからこそ、ありがとうと繰り返していたい。

 たとえあなたには届かないとしても、それでも、本当はもっと早く気づくべきだったあなたの優しさを見て見ぬふりしたままで生きていきたくはないから。


 わたしたち、もう、隣り合って笑うことはできないけれど。


 でもきっと繋がっているわ。


 生きているうちか。既に生を終えた後か。それすら分からないけれど、いつの日かまたどこかで巡り会えたなら。


 その時は――ありがとう、と、言わせてね。



◆終わり◆

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