表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 小沢孝二
第1部 死と生
3/5

第3章 師と弟子



 翌朝。


 「……ふぁぁぁぁ」

 双雷はソファに突っ伏したまま、大きな欠伸をした。

 昨夜は限界まで緊張していたせいで、意識が切れた瞬間に眠り込んでいた。


 顔を洗いに水場へ行くと、山から引かれた冷たい水が手に落ちてくる。

 真夏のはずなのに、骨の芯まで冷える感覚に思わず声を漏らした。


「ぷはぁっ! 冷てぇ! けど気持ちいいな!」


「お、起きたか」

 背後から聞こえたのは雷兆の声だった。

 彼も隣に並び、豪快に顔を洗う。


「よし。今日からお前にはみっちり修行をしてもらう」

「……え、修行? いきなり?」

「当たり前だろ。昨日の様子を見たら分かるだろうが、生身のお前じゃ夜は一歩も出歩けない」

「……それは、まぁ」


 二人はタオルで顔を拭きながら、神社裏にある道場へと向かった。

 すべてヒノキ造りの道場は木の香りが漂い、どこか神聖な雰囲気すらあった。


「へぇ、立派な道場じゃん」

「俺の師匠――初代宮司が建てたものだ。武闘家でもあったからな」


 中央に座らされ、双雷は思わず顔をしかめた。


「ちなみに双雷」

「ん?」

「これから俺のことは“師匠”と呼べ」

「はあっ⁉ なんでだよ!」

「お前に生き抜く術を教えるんだから当然だろう」

「いや、なんか嫌なんだけど……」

「なら“先生”でもいいぞ?」

「どっちもダサい!」


 子どものような言い合いに、どちらが年長なのか分からない。

 結局、双雷が根負けした。


「……分かったよ。師匠、な」

「うむ、それでいい」


 雷兆は満足げに頷き、真顔に戻った。


「さて。まずは基本だ。――雷神の力を纏え」

「は? そんな簡単に言うなよ」

「見せてやる」


 雷兆の全身を黄色い稲妻が駆け巡り、まるで鎧のように身体を覆った。


「これが《電磁バリア》。夜の瘴気を弾く力だ」

「名前……ダサッ」

「おい! どこがだ!」

「戦隊モノかよ。もっとカッコいいのにしろよ」

「バカ者! 俺オリジナルだ!」


 鼻を膨らませる雷兆に、双雷は思いっきり引いていた。


「……はぁ。まぁいいよ。で、これを習得すれば夜でも外に出られるってわけか」

「その通り。異形者と戦う前に、まずは自分を守れなければ話にならん」


 ――修行開始。


 汗だくになりながら、双雷は何度も力を練り上げようと試みる。

 失敗すればバチンと感電。

 道場の床には黒い焦げ跡が増えていった。


「ぐぅっ……! くそ、もうちょいで……!」

「集中しろ! 神力を自分の中に巡らせるんだ!」

「言うのは簡単だろ師匠!」


 そうして一週間。


「よっしゃぁ! できた‼」

 双雷の体を雷光が包み込む。

 その光はやがて静かに収束し、彼の体に吸い込まれていった。


 雷兆は目を見開く。

「……見事だ。一週間で会得するとは」

「ははっ、どうだ師匠! 俺って天才だろ!」

「調子に乗るな。これを四六時中維持できなきゃ意味がない」

「え、四六時中……!? 三時間が限界なんだけど!?」

「なら次の課題は決まりだな」

「うわー、絶対そう言うと思った……!」


 こうして少年は雷神の力を手にし、少しずつこの世界に馴染んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ