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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 小沢孝二
第1部 死と生
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第2章 禁域の外



 夜の神社。

 社務所を出ると、外はすでに黒幕を下ろしたような闇に包まれていた。


「ちょうどいい。幕間が出るころだ」

 雷兆は薄笑いを浮かべながら言った。


「幕間? ……何の話だよ」

 双雷は眉をひそめながら長い石段を下りる。


 やがて大鳥居が姿を現した。

 その手前で雷兆は立ち止まり、真剣な声色になる。


「ここから先は結界の外だ。俺から離れるな」

「……離れるもなにも、あんた説明全然してねぇだろ」

「フッ、それは何よりだ」


 不穏な笑みを残して、雷兆は鳥居をくぐる。

 仕方なく双雷も後に続いた――その瞬間。


 空気が一変した。

 肌に無数の針を刺されたような悪寒。胸を締め付ける圧迫感。

 心臓は勝手に早鐘を打ち、血液が全身を駆け巡る。


「な……んだ、この空気……!」


 呼吸すら重い。

 だが雷兆だけは平然と歩みを進めていた。


「俺は言葉で説明するのが苦手でね。だから体感してもらうしかない」

「体感ってレベルじゃねぇだろ、これ……!」


 田んぼの広がる夜道。

 そこに――異様なシルエットが立っていた。


 街灯に照らされ、闇の中で白く浮かび上がる人型。

 異様に身をくねらせ、こちらへゆっくりと歩み寄ってくる。


「待て、双雷! 近づくな! 直視もするな!」

 雷兆の声が鋭く飛ぶ。


「は? なんでだよ」

「奴は人のようで人ではない。この世界では――都市伝説が現実なんだ」


「都市伝説……? あれが……」

 双雷は息を呑む。


 クネクネは距離を詰めてくる。

 肌は真っ白に抜け落ちたようで、血走った赤い目だけが異様に浮かぶ。

 口はカタカタと震え、歯が打ち鳴らす音が夜風に混じった。


「か、怪物……」

「そうだ。奴は怪物だ。普通の武器は通じん」


 雷兆はゆっくりと左手を上げた。

 その指の間に、鈍く光る一本の釘が挟まれている。


「純銀製の三寸釘……そこに神力を込める」


 次の瞬間、釘は稲妻を纏った。

 バチバチと弾ける閃光が闇を裂く。


「――【飛雷針ひらいしん】‼」


 デコピンの要領で弾かれた釘は、雷そのものとなってクネクネの頭部を貫いた。


 一瞬。

 クネクネの首から上が掻き消え、残った身体は黒い炭となって風に散る。


 地面には焦げ跡。田んぼの水は干上がり、ただの黒土と化していた。


「な、なんだ今の……!」

 双雷は言葉を失う。


 雷兆は当然のように答えた。

「これが雷神の力――雷技だ」


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