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幸福な蟻地獄  作者: みつまめ つぼみ
第2章:幸福な蟻地獄

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27.異能検査(1)

 家に帰った俺たちは、毎週恒例の映画上映会をしていた。


 B級アクション映画をみんなで固まって眺めながら、俺はさっきの会話を思い出していた。


 横目で見るティアは、無邪気にアクション映画に夢中になっている。


 ……ティアが、人間じゃない?


 デュカリオンは肯定も否定もしなかった。


 あいつの言っていた意味は、俺にはさっぱりわからなかったし。


 俺の事も少し言ってたな。なんとかシードの適性が高いとか。


 どういう意味なんだろうなぁ。


 考え込んでいると、ティアの携帯端末デバイスに着信があった。


 ティアは携帯端末デバイスを手に取ってメッセージを読んでから、俺に告げる。


「ねぇ悠人ゆうと、デュカリオンが直接話をしたいんだって」


「俺に? なんで俺なんだよ」


「知らなーい。今そっちに通話するって」


 直後、俺の携帯端末デバイスが音声着信音を鳴り響かせた。


 発信者は……しらない番号だ。


 俺は眉をひそめながら、画面をタップして通話を開始する。


「……何の用だよ」


『やあ! メッセージでも良かったんだけど、口頭の方が早いと思ってね!』


 明るい奴だな、本当に。


「用件は?」


『君を見て興味が湧いてね。

 どうだろう、今月後半から、二週間の異能検査に参加してもらえないかな。

 君と、ガラティアを含む君の周囲に居た女子を含めてね』


「ティアや女子たちも? なんでだよ?」


『一緒に居たのは海燕うみつばめの花鳥風月だろう?

 ガラティアを含め、全員がユニークな異能保持者だ。

 君たちの現在の異能の状態を知っておきたいんだよ』


「……何のために」


『ただの研究開発って奴だよ。言っただろう? 異能については、分からないことの方が多いんだ。

 ついでに君の体質を調べて、新薬の治験も引き受けてくれるとありがたい。

 その時に血液検査もできればと思ってさ』


「それ、俺に何のメリットがあるんだよ」


『ハハハ! 君のメリットはちょっとしたお小遣いが入るくらいだろうね。

 でも彼女たちは学校から解放されて、君といられる時間が増える。これは喜ぶんじゃないか?』


 こいつ、どこまで俺たちのことを知ってるんだ?


「その検査って、具体的に何をするんだよ」


『日程の頭で血液を採取した後、毎日午前中に一時間ほど、君たちの異能を測定する。

 それが終わったらフリータイムで構わないよ。

 それを二週間繰り返して、最終日にもう一度血液を採取する。

 こちらの研究施設に一人ずつ個室を割り当てるから、そこで自由に過ごして構わない。

 施設の外には出られないけど、中をぶらつくのは自由だ』


「……女子には体調が悪い日だってあるだろう。そこはどうするんだよ」


『異能検査は負担がかかるものじゃないし、体調で結果がばらつくのは織り込み済みだよ。

 月経と血液採取は重ならないように日付をずらすだけでいいんじゃないか?』


「お前、ストレートに言い過ぎだろう……もう少しオブラートに包めよ」


『ハハハ! 必要を感じなかったものでね! 君と僕の会話なんだし構わないだろう?』


 そりゃそうかもしれねーけどさー。


「まぁわかった。いつからなんだ? その検査って奴は」


『五月の第三週の頭から来てもらえないかな。

 第四週の後、全員の血液採取が終わったら解放するよ』


 俺はカレンダーを見た――六月の頭に食い込むな。


「学校はどうするんだよ」


『こちらから手配しておくから、心配はしなくていいよ。

 勉強の遅れは、君たちで頑張ってくれ。

 フリータイムの間に自習をすれば困らないだろう?』


「いまいちメリットを感じねーなぁ。なんか他にメリットはないのか?」


『んー、そうだね。じゃあこういうのはどうだろう。

 検査が終わる頃には海開きの時期と重なる。

 うちの保養所を貸し切りで一週間、君たちに開放しよう。

 海辺で一週間の息抜きをするといい。

 ちょっと早い夏休みの先取り、なんてご褒美はどうだい?』


 なるほど、それは女子たちが喜ぶかもしれないな。


 他の女子はわからないけど、普段は金曜日担当で割を食ってるティアを遊ばせてやれそうだ。


「女子と相談してみる。それで返答するので構わないか」


『ああ、それでいいよ。良い返事を待ってる』



 俺は女子たちに、デュカリオンが提案した異能検査の話を伝えた。



「俺は悪くない話だと思う。みんなと一緒に居られる時間が増えるしな。

 みんなはどう思うんだ?」


 ティアは無邪気に告げる。


「デュカリオンが言うことだから、私は参加するよ?」


「そうか、ティアが行くつもりなら、俺も行く」


 美雪みゆきが不安そうに俺に告げる。


「曜日担当はどうするんですか?」


「個室を割り当ててくれるって言うし、午前中の一時間以外はフリータイムだし、いつもより長く居られるんじゃないか?

 俺と二人きりになりたいって話なら、俺の部屋か女子の部屋に行けばいいだろうし」


 優衣ゆいが困惑した顔で告げる。


「着替えとかはどうなるのかしら。洗濯機とかあるの?」


 ティアが元気に告げる。


「デュカリオンが全部用意してくれるよ!

 毎日新品の服を着ることになるよ!」


 確かに『着替えを用意しろ』とは言われてないな。


 由香里ゆかりが眉をひそめて告げる。


「保養所の海で楽しめって、水着はどうするんですか」


「それは明日にでも用意すればいいんじゃないか?

 もしかしたら用意してくれるかもしれないけど、水着くらい自分で選びたいだろ?」


 瑠那るなが俺に告げる。


悠人ゆうとは行くつもりなのね?」


「ティアが行くなら、俺は行くよ。

 こいつにだって、自分の時間があっていいはずだし」


 瑠那るながふぅ、とため息をついた。


「そういうことなら、私も参加するわ」


 優衣ゆい美雪みゆき由香里ゆかりも参加を表明してきた。


「よし、じゃあ決まりだな。全員で異能検査に参加して、保養所で遊んでこよう!」


 全員が合意したところで、俺は意向をデュカリオンに伝えた。





****


 翌日、日曜日の間に俺たちは水着を見て回った。


 少し照れ臭かったけど、俺は女子の水着売り場に連れて行かれ、みんなが俺に意見を聞いてくる。


由香里ゆかり、お前ずいぶんと大人っぽい水着を選んだな」


「いけませんか? 子供っぽい水着なんて、面白みがないですし」


「いけなくはないけどな。ちゃんと似合ってるし」


 由香里ゆかりは嬉しそうに頬を染めて、その水着をレジに持っていた。


 優衣ゆい美雪みゆきも、妙に色っぽい水着をチョイスしていた。


 優衣ゆいはもともと大人っぽいから違和感がないけど、美雪みゆきも同じような水着を選ぶとは思わなかった。


 瑠那るなも彼女たちを意識したのか、恥ずかしそうに俺に大人っぽい水着を試着して見せてきた。


「ど、どうかな。ちょっと冒険しすぎかなぁ?」


「いや、ちゃんと似合ってるぞ。お前は体型がきれいなんだから、恥ずかしがることはないだろ」


 とはいえ、中学生が着る水着としてはかなりの冒険だ。


 保養所を貸し切って俺たちしか居ないってことだから、みんな安心してるんだろうけど。


 俺も自分の水着を適当に選んで購入し、その日は女子たちを女子寮に送り届けて解散した。





****


 五月の三週目、月曜日の朝に、俺の家の前にマイクロバスが止まっていた。


 私服で集合していた俺たちは、ちょっとした手荷物を持ってバスに乗りこんでいった。


 みんなでカードゲームなどをしながら時間を潰していると、一時間ちょっとでバスは大きな施設の中に入っていく。


 バスが止まり、俺たちはバスから降りて行く――デュカリオンが出迎えか。


「やあ! よく来てくれたね!」


 人懐っこい笑顔でデュカリオンが告げた。


 俺は苦笑を浮かべながら応える。


「忙しいんじゃなかったのか?」


「今回は君たちという貴重な検体からデータ採取できるんだ。

 僕が出張ってきても、不思議ではないだろう?」


 そういうもんかねぇ。


 俺たちはデュカリオンに案内されながら、研究施設に足を踏み込んだ。



 中には各種施設が揃っているようだった。


 食堂は勿論、トレーニングルームや図書室、大型モニター付きのレクリレーションルームなどなど。


 まぁこれなら、フリータイムもなんとかなるかな。


 デュカリオンが俺たちに告げる。


「個室に案内するから、荷物を置いたら血液採取の準備をして欲しい。

 体調が悪い子は早めに言ってくれ」


 俺たちは頷いて、それぞれの個室に案内されて行った。


 ちょっとしたホテルの一室みたいな、こじんまりとした部屋だ。


「二週間か……長いんだか短いんだか」


 俺は手荷物を床に置くと外に出て、言われた集合場所へ向かっていった。


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