表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福な蟻地獄  作者: みつまめ つぼみ
第2章:幸福な蟻地獄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/67

25.もがけばもがくほど

 ここからが「幸福な蟻地獄」本編です。


 R15範囲にとどめているつもりですが、過激なシーンが含まれます。ご注意ください。











 ゴールデンウィーク中の金曜日、早朝。悠人ゆうとは疲れた体に鞭を打って家路を急ぎつつ、瑠那るなへ個人メッセージを送る。



(すまん、今日のロードワークは休みだ)


『そう、わかった』



 夜が白む中、悠人ゆうとは家路を急ぎながらぼやく。


美雪みゆきのやつ、なんであんなに体力があるんだ?」


 鍛えている悠人ゆうとと変わらないか、下手をすればそれ以上のスタミナを感じていた。


 間に休憩こそ挟むが、朝から翌朝まで、ひたすら愛を要求された。


 それもまた可愛らしくて愛しいと思い応じているが、日課のロードワークには支障が出てしまう。


 悠人ゆうとは小さなため息をつきながら、男女六人のグループにもメッセージを送った。



(今日は金曜日だろ。朝からうちに来いよ)



 彼女たちが了承していくのを確認してから、悠人ゆうと携帯端末デバイスをしまい、駆け出していった。





****


 優衣ゆいが代表して悠人ゆうとの部屋のロックを解除する――五人全員が、携帯端末デバイスを合鍵として登録していた。


 買い物袋を手に、五人の女子が部屋に上がり込むと、案の定ベッドで大の字になって、悠人ゆうとが寝息を立てていた。


 眠そうな美雪みゆきが告げる。


「私も悠人ゆうとさんに添い寝するけど、いいよね? ティア」


 ガラティアは無邪気に頷いた。


「うん、いいよ! おやすみ、美雪みゆき!」


 美雪みゆきはニヤリとガラティアに笑みを投げかけてから、寝転がる悠人ゆうとに添い寝を始めた。


 それを見ていた由香里ゆかりが、あきれてため息をついた。


「朝まで悠人ゆうとさんを独占しておいて、まだ延長する気なんですか。

 どれだけ強欲なんでしょうね、この人」


 優衣ゆいが小さく息をついて応える。


「曜日担当のティアが頷いたのだから、いいじゃない、別に。

 

 瑠那るなは、疲れて寝ている悠人ゆうとの顔を見て告げる。


悠人ゆうとがここまで疲れ果てるとか、美雪みゆきのスタミナはどうなってるのよ……」


 床に腰を下ろした由香里ゆかり瑠那るなに応える。


「あなたも『本当の愛』を知りましたよね?

 それなら、美雪みゆきさんの気持ちもわかるんじゃないですか?」


 ――悠人ゆうとが与える、『本当の愛』。


 古い自分が新しい自分になっていく感覚。

 自分という器が悠人ゆうとからの愛で満たされ、真の自分が完成するのだ。


 特にこの感覚は、美雪みゆきのように何一つ満たされてこなかった女子に、てきめんに効果があるだろう。

 心が渇望していた『もの』を、無償で浴びるように注いでくれるのが悠人ゆうとなのだから。


 美雪みゆきが最も長い時間、悠人ゆうとを拘束しているのも、その辺りが原因なのだろうと、瑠那るなは予想した。


 瑠那るながふぅ、とため息をついて、床に座りながら告げる。


「しょうがないか。あの感覚は一度覚えたら、二度と忘れられないものね」


 優衣ゆい瑠那るなに微笑みながら告げる。


「あら、Sランク異能者である煌光回廊(レーザー・サーキット)も、あれで心が満たされて病みつきになったの?

 あなたがその感覚を覚えるだなんて、少し意外ね」


 瑠那るながジト目で優衣ゆいを見つめた。


「あのね……私だって、別に完璧な人間というわけじゃないのよ。

 自分がわからなくて、不安に思うことだってあったの。

 『本当の愛』を知るまでの私は、みんなと大して変わらなかったわよ」


 由香里ゆかりが大人びた微笑みで告げる。


「あら、それじゃあ『本当の愛』を知った今は完璧な人間だ、と言ってるように聞こえますよ?」


「そこまでは言わないけど、不確かだった自分が確かな形を得たのは間違いないわよ。

 みんなだって、この感覚は一緒なんでしょ?」


 優衣ゆいが頷いて応える。


「そうね、悠人ゆうとさんに愛されて、初めて私は私になれた。

 『本当の愛』で、『本当の自分』を教えてもらったのよ。

 彼に愛してもらえる価値が、自分にはある――それこそが私の価値よ」


 由香里ゆかりも小さく頷いて告げる。


「この身体は悠人ゆうとさんが愛してくれる身体ですから。

 どれほど幼く見えようと、私には成熟した女としての価値があると悠人ゆうとさんは教えてくれました。

 私の心も体も、悠人ゆうとさんが価値ある物だと教えてくれるんです」


 瑠那るなは頭をかきながらため息をついた。


「――はぁ。やっぱりみんな同じ感覚か。

 これ、恋愛依存の症状らしいわ。悠人ゆうとからの愛で自分の価値を決めてしまうのって、本当はヤバいのよ。

 早くやめた方が良いわよ、そんな不健全な在り方」


 由香里ゆかりは微笑みながら応える。


「不健全だろうと、あの感覚を忘れることなんてできませんよ。

 愛されるたびに魂が震えて、何度でも生まれ変われるんですから。

 繰り返すたびに歓喜が大きくなっていく実感があります。

 瑠那るなさんも、二回目を経験すればわかりますよ」


 優衣ゆいが楽しそうに目を細めた。


「不健全な恋愛依存だと思うなら、瑠那るなはもう悠人ゆうとさんから愛されることはないのかしら。

 それならあなたが担当している水曜日、私の担当にしてもいいわよね?」


 瑠那るなが慌てて声を上げる。


「誰もそんなこと言ってないでしょ!

 私だって悠人ゆうとに愛されたいわよ! 勝手に取り上げないでくれる?!」


「だって、よくわからないけど不健全な恋愛なのでしょう?

 それならあなたは、そんな不健全なことをやめればいいじゃない。

 なぜ不健全とわかっていて、悠人ゆうとさんの愛を求めるの?」


 瑠那るなが悔しそうに応える。


「相手を好きになり過ぎるのがいけないだけよ!

 だから自分がきちんと心を確かに持って、それで愛せばいいだけ!

 愛を拒絶する必要まではないわ!」


 由香里ゆかりが楽しそうに微笑んだ。


「そうなんですか? 大変ですね。頑張ってください」


 優衣ゆいも続いて瑠那るなに告げる。


「応援くらいはしてあげるわ。あなたは適度な愛で満足していればいいんじゃない?

 私たちは全身全霊で悠人ゆうとさんを愛するだけ。

 それが『本当の愛』を教えてくれた、悠人ゆうとさんにできる恩返しだもの」


 ――私だって、悠人ゆうとを愛する心なら負けないわよ!


 瑠那るなは歯を噛み締めながら、まだ眠っている悠人ゆうとの横顔を見つめていた。





****


「ん……今、何時だ?」


 俺が目を覚ますと、すぐそばで寝息が聞こえた――美雪みゆきか。


 ゆっくりと身体を起こして時計を見る。午後四時過ぎって。寝過ぎたな。


「あ、起きた?」


 瑠那るなの声に振り向くと、みんなはローテーブル周りに座って、思い思いのことをしてたみたいだ。


「すまん、俺が朝から来いって言っておいて、夕方まで寝るとか面目ない」


 瑠那るなが俺に可愛らしい笑顔で微笑んだ。


「この一ヶ月、私たちに付き合いっぱなしで満足に寝てなかったでしょ。

 昨日の美雪みゆきがとどめになったんじゃない?」


 朝から朝までだったしなぁ。さすがにあれはきつかった。


「かもしれない。

 だとしても、お前たちを放っておいて寝ていて良い理由にもならない。

 本当にすまない、この埋め合わせは必ずする」


 由香里ゆかりが俺に優しく微笑んで告げる。


「大げさですよ、大丈夫です。

 私たちは、悠人ゆうとさんと同じ部屋に居られるだけで幸せなんですから」


 優衣ゆいも大人びた微笑みで俺に告げる。


「たまにはゆっくり寝てもいいじゃない。

 ゴールデンウィークも、もう終わるのよ?

 疲れを残さない方が大事よ」


 みんなに気を遣わせちゃってるな。本当に申し訳ないことをした。


 ティアは床に寝転がって携帯端末デバイスで何かの映像を見ているようだった。

 こいつは自分の担当曜日でも、気にせずマイペースだ。


 俺は小さく息をついてみんなに告げる。


「そろそろ飯の時間だな。みんなで外に食べに行こうか」


 女子たちが返事をして立ち上がった。


 俺も美雪みゆきの肩を揺すって起こし、全員でファミレスに向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ