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閑話・二
「くれぐれもお願いします。大臣まで総理の二の舞になっては……」
まだ動揺が残る部下を、窓際に立っていた男は一喝した。
「馬鹿者。迎賓館での歓待だと? あの男にはそんなもの、かすり傷にもなるまいよ。……ただ、何で入り浸っているかは、確かに突き止めねばならん」
男は事務所に戻り、秘書官に声をかけた。
「確か、奴は一週間後の会議に出る予定だったな?」
「はい。特にそれ以外の公務があるとは、伺っておりませんが」
「ちょうどいい。その後に締め上げて、本当のことを吐かせてくれる」
大臣はそう言って低く笑った。
「大臣、くれぐれもお気をつけて。これ以上、日本の農作物を彼らに好きにさせるわけにはいきません」
屈強な秘書官は、彼の背中に向かって頭を下げる。
こうして、農林水産大臣──ついでに総理の幼なじみでもある男(七十四歳、独身)──は影でひっそりと動き始めたのだった。




