〈ナルゴ〉視点(人骨の人)
浅い穴に人骨を埋葬して、二人で手を合わせた。
手で触るのが嫌だったので、人骨はスコップで移動した。
しっかりとは埋められなかったが、許してもうらおう。
この人骨の人が着ていた服とかを、俺達は貰うことにした。
「〈アワ〉、服とかはぎ取っても良いのかな」
「はぎ取ってはいません。有効に使わさせて頂いているのです。全然違います」
「たたられたりしない」
「しません。私達、ちゃんと埋葬してあげました。感謝されているはずです」
〈アワ〉は、どうしても服が欲しいんだな。
今着ているのは雑巾だもの。
この人骨が着ていた、上着とズボンを頂いた。
シャツとパンツは、ボロボロで形がもう無かった。
窪みを良く見ると、この人骨の人の持ち物があった。
錆びた剣、錆びた針、錆びたコップがあった。
全部錆びているけど、今の俺たちには全て必要な物だ。
正直ありがたい。
辺りを探していた〈アワ〉が、「火打石がありました」と言っていた。
ライターもマッチも、無い世界なんだな。
もう一度、丁寧に埋葬場所に手を合わせておいた。
感謝だ。
俺は、これらを部屋に運び込んだ。
コケもスコップで採集した。
〈アワ〉は人骨の人の上着を着ているが、すごくブカブカだ。
大人の服を着た幼い子供のようだ。
でも、足も膝まで隠れていて安心だ。
ひどい状態の肌を見なくて済む。
帰りも、〈アワ〉を背負って帰った。
ゴツゴツした、丈夫な上着の感触しかしなかった。
枯れ木の、感触じゃなくて良かった。
疲れた。
〈アワ〉に酸っぱいパンを一切れと、臭い肉を千切って渡した。
俺も千切ったのを口にほうり込んだ。
〈アワ〉は「ごちそうさま」と礼を言った。
礼儀はちゃんとしている。
「どういたしまして。疲れたから、俺はもう寝るよ」
俺は寝転がった。
固い床だけど、好きな時に寝ることが出来る。
自由は良い。
〈アワ〉は、物乞いの時と今では、どちらが幸せなのかと、考えているうちに、俺は眠ったようだ。