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ニンジャウォーリアー・ブライ 序章・上

DDDコミックス・シネマティックユニバース・ノベライズシリーズ!

ヴィランスピンオフの第1弾

 腐敗した背徳の都、ヘブンスシティ。その街にはどんな依頼でも引き受けて、手段を選ばず、必ず仕事をやり遂げる忍者の殺し屋がいるという都市伝説があった。


 小太りのマフィアのボス、マルコフが葉巻を吸いながらある男と路地裏で待ち合わせをしている。銃を持った背の高い部下のブロギーを連れている。

 待ち合わせたその殺し屋が実際に来るかは半信半疑だった。だが実際には待ち合わせ時間よりも早く黒いオフロードタイプのバイクに乗って現れた。

 現れた殺し屋は黒いコスチュームに身を包み、日本の忍者と呼ばれる戦士のような格好をしていた。背中には刀を差し、身体の各部はプロテクターを装備している。

 ただならぬ威圧感だった。何人も殺してきた血にまみれた人生でなければこんな雰囲気は帯びないだろう。

「今夜はハロウィンじゃねぇーんだぞ、タコ!」

 部下のブロギーがバカにしたように威嚇したのを、マルコフは拳で小突いて黙らせた。

「痛てっ」

「バカ野郎! テメーは黙ってろ!」

 小太りのマルコフが巨体のブロギーを一喝した。

「お前だな? 何も詮索はせず、金次第で誰でも殺してくれる殺し屋っていうのは」

 顔をすっぽりと覆うマスクを装着した忍者男の表情はわからない。不気味な忍者男は黙ったまま頷いた。

「おい! 金持ってこい!」

 小太りのマルコフがそう言うと背の高い部下ブロギーはアタッシュケースを出して忍者男に渡した。

「約束の前金だ! 指示された通りな。必ず今夜中に標的を始末しろ。いいな?」

 忍者男は黙って受け取ったアタッシュケースを開いて中身を確認すると、瞬時にバイクに乗ってまた摩天楼の中へと消えていった。

 去っていった忍者男を見たままで、取り残されたブロギーは首を傾げてボスのマルコフに訊く。

「ボス、何なんですか? あのふざけた格好の不気味な野郎は」

 ブロギーを睨みながらマルコフは言った。

「訊くな。ありゃあ願わくばもう二度と関わりたくもねぇー、そんな相手だ」

 そう言うと、もう一息葉巻を吸おうとした。だが葉巻は指で触れている部分だけを残していつの間にか切り落とされていた。いつ切られたかもわからなかった。綺麗な断面を不思議そうに見た後で、マルコフは葉巻の切れ端を地面に捨てて唾を吐いた。

「ケッ。腕は立つようだな」

 そう言ってマルコフは忍者男がバイクで走り去った方向を睨んだ。


<遡ること3日前>

「やっちまった」

 そう呟いてマルコフはここ数時間以内に起きた自分の行いを心底後悔した。無意識に震える手で葉巻を吸っていた。

 その夜、マルコフは自宅に呼んだ2人の娼婦達と薬物を乱用して気が狂うほど激しくセックスを楽しんでいた。行為の後、些細なことから酒に酔ってその娼婦のうち1人を執拗に殴り、そして死なせた。それだけの事だと自分を落ち着かせた。どうせ生きていても何の価値もないジャンキーの娼婦だ、と。

 気付くともう1人の娼婦がいない。壁に寄りかかって部屋の隅で怯えていたあの小娘のような若い小柄な娼婦は、いつの間にか部屋の窓から裸同然で外に逃げていた。まだそう遠くには行っていないはずだが、マルコフは気が動転していた。頭も薬で朦朧としていたせいだと、そう思った。

 部屋に転がる娼婦の遺体や事件の揉み消しは、日頃から買収していた汚職警官達に処理させたが、問題は逃げた小娘の方だった。生かしておいては誰に何を話すかもわからない。絶対に始末しなければならなかった。部下達に命じて死に物狂いで探させたが見つからない。きっとこの街からはまだ出ていないはずだ。

 深夜に電話が鳴った。例の汚職警官からだった。なんでも自分達の管轄外でその若い娼婦と思われる女が別件で逮捕されて手が出せない、と。マルコフはそれを聞くなり電話器を床に叩きつけて壊した。

「もう終わりだ。クソ。あの小娘が余計な事を警察で話せば」

 散々修羅場を潜ってきたマルコフがあからさまに狼狽えていた。

「困ってるようだな、兄貴。オレで良かったら力になってやってもいいぜ?」

 そう言ったのは弟分のロペスだった。痩せて禿げ頭、顔にはハイエナのタトゥーのあるのこの男は若い頃からの仲間で、今では下部組織のボスをしている。

「オレがこの街で一番腕の立つ、誰でも必ず殺してくれるヤツを紹介してやるよ!」

 そう言うとロペスはニヤリと笑って、自分の携帯電話で何処かに連絡していた。

「ああ、オレだ、ロペスだ! 例の殺し屋を頼む」

 例の殺し屋、マルコフの頭に浮かんだのは1人だった。だが信じられない。ずっと都市伝説だと思っていた。

 忍者の姿をした殺し屋が、こんな街にいるなどという噂は。

つづきを

お楽しみに!

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