あなたは誰?
遠い昔。
恋人が死んで、その生まれ変わりを探す男がいた。
何度も輪廻転生を繰り返し、愛しい恋人を探して何度も人生を生きた。
確かに彼女だ、と思っていても、結ばれないことばかりだった。
「俺を忘れてしまったの?」
「あなた、誰?」
冷たい視線を残して今度の彼女も去っていった。
「俺は、君に会うために生まれたんだ」
「私もそうよ」
恋に落ちているとき、彼女は確かにそう言って見つめ返してくれるのに、どこかで歯車が狂うと、彼を置いて新しい出会いに嬉々として去ってゆく。
何度繰り返しただろう?
あなたは誰?って言われるが、俺は一体誰なんだろう?
過去の呪縛やしがらみから解き放たれたなら、自由は手にできるのだろうか。
でも、彼女を愛している。それからは逃れられない。
「あなたこそ私の運命の人だと思っていたのに……」
彼は別の女を追っていたら、前に付き合っていた女から刺殺された。
女は男のことを想い続け、彼女もまた輪廻の輪に囚われた。
少女は運命の人に出会えるのを待ち焦がれていた。
「あの、何の本読んでるんですか?」
振り向くと彼がいた。
この人だと彼女は思った。
「あなたは誰?」