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おや、君の中の悪役令嬢が…?

 ーーーーもしかして、わたくし、転生してない?


 私の疑問に答えるように童顔の女性が話しかけてきた。この人はわかるぞ、仁木さんだ。昔飼ってたニキヤという猫によく似ているのだ。


「栗山さん、雰囲気変わったねぇ~」

「え、あ、そう?」


 仁木さんはぐっと親指を立ててくる。「髪の毛も~お顔も~お洋服も~バッチリ~ん~ニャキは知ってたよ~」と仁木さんは猫のように身体をすり寄せてくる。

 それを周りの人はまだ遠巻きにしていて、「あれ栗山さんなの?」「ずいぶんかわったね」「整形?」とひそひそと噂話をしている。今までなら気にしないふりをして、失敗してにらんだりしていたが。


「ふふ?」


 微笑みが一番の武器だ。

 一気にこちらを横目で見ていた人が目をそらしていく。……ちょっとやべー奴だと思われた感があるが、でもいい。無抵抗で殴られて、自分の思う正義ができないよりは。


「どうしたの~?」

「いえ、ずいぶん私も甘かったなと。今後は身の振り方をもっと考えてみます」

「おお!ニャキは応援するよ!」


 もちろん仁木さんにも敵がいないわけじゃない。でも、もっとたくさんの味方がいるのだ。それは仁木さんが作ってきたもの。

 ……わたくしも、こちらの体制を盤石にしなければ同じ道を歩むことに。


 心の声を打ち消した。



 ☆☆ ☆☆ ☆☆



「こちらに前指摘したのと同じ原稿ミスがあるので修正お願いします。いくつか確認しましたが、同じ定型文つかっているところはすべて間違っていましたので、当然一カ所だけの確認ではすみません。最後まで目を通して、……最低でも同じミスの指摘はさせないでください」


 私より社歴の長い男性。しかし、いつも凡庸なミスばかりするので、特に肩書きはない。だから私を目の敵にする。別に私が優秀というわけではないはずだけれど。ただ、彼の原稿があまりにもミスが多いから私がチェックを担当せざるをえないというだけ。


「いつくらいまでに修正可能ですか?」

「……」

「本来であれば先週の金曜日までにチェックに回してもらうはずでしたよね?」

「……」


 今までだったらここでカチンときて「やる気無いんですか?」と的外れなことを言ってさらに立場を悪くしていたような……。でも、私は間違っていないのだから。

 私は座っている相手の耳に口を寄せるように身体をかがめた。


「ゆっくりやっていただいても構いません。水曜日までには再度提出いただければ期限に間に合いますね?」

「……」

「私を困らせようと、ギリギリになって出していただいても問題ありませんよ、それで不興を買うのは私ではなく、先輩ですからね。」


 ようやく男がこちらを向いた。焦りではなく、まだこちらを蔑んだような目をしている。……こいつばかじゃねーの、といけませんわお口が悪くてよ。


「まだわからないんですか?案件担当者はあくまでも先輩、私はチェックをしているだけです。それに、メールの送付時間を見たらどちらが悪いのかなんてすぐわかりますよ」


 ふふ、と笑ってみせると男はぞっとした顔をして私から目をそらし「キモいんだよブスが」とつぶやいた。

 あらあら、どうやら負けを認めたようで。

 私が「クライアントの期日は水曜日いっぱいですね、いつ提出してくださいます?」と言うとようやくエクセルファイルを開いて修正作業を始めた。


 『私』はいかにもお局といったような女性だった。いつも暗い色の服を着て、ひっつめ髪に眼鏡、化粧はしているものの地味。しかし、仕事が入ると細かいことをネチネチネチネチ言って指摘自体は間違っていないのに、言葉がキツい上に相手が反抗的だとわかると人格否定のようなことを言う。

 ……なんてお下品。

 貴族令嬢らしからぬ戦い方だ。笑顔で優しく、決してこちらを悪く取れないように相手を刺していく。そして死んだことすら気がつかないまま死ねばいい。

 わたくしなら、そう成れる。『私』が作った敵を味方に変えて、居心地がよく生産性を上げて見せよう。


 ーーーわたくしは、公爵令嬢エリザベート・フォン・カラスなのだから。



 私こと、栗山朱莉は転生していない。

 だからこそ、現世の記憶とゲームの記憶を正しく混ぜて、よりよいお仕事ライフを作れるのだ。


 これは、転生したら怖いもの知らずになった(ことにしている)そんな私の物語。


プロローグはここまでになります。

今後は転生しているていで進めていきます(最終的にはハイテンションラブコメディにしたい)

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