枯れ尽きた世界
とある所に、枯れ果てた世界があった。
その世界は、長い間、水に恵まれない世界だった。
田畑を潤す水も、喉を潤す水も、魚が泳ぐ水も、全て蒸発してしまった。
そのため、全ての生き物が生きられなくなってしまい、枯れ土の世界は滅びを迎えた。
かつてその土地に人々が生きていた頃、各地で雨ごいの儀式が盛んにおこなわれていた。
人々は、水の消失が命の消失だと知っていたため、何をしてでも恵みを得ようとしていたのだ。
だからなのか、はじめは粛々と行われていた祈る儀式が、次第に奪う行為へと発展していった。
願い、祈る感情は、怒り、憎しみへと変貌していく。
責務を果たせなかった儀式の巫女達は、太陽の光に焼かれて無慈悲に枯れていった。
まだ恵みを所有する者達は、足りぬ者達の手によって奪い取られた。
人々が行う水の争奪戦は、日々苛烈さを増していき、恵みの不足で死ぬ者達よりも争いで死ぬ者達の数の方が多くなった。
原因は、間違いなく恵みの消失だっただろう。
しかし、彼等が自身の命にとどめをさしたのは、人同士の争いであった。
人々の争い合いを目にした、最後の巫女は嘆く。
巫女として過酷な運命にされされたその人物は、幸か不幸か最後まで生き残っていた。
かつて、巫女を選んだ人々は巫女一人に重い責務を背負わせまいとして、共に祈り、願いを捧げていた。
それがいつから忘れられてしまったのか。
人々は、理不尽への感情を人に向けるようになっていた。
人なき世界は、ゆっくりと枯れ尽きていく。
最後に生き残った巫女の涙では、もはや大地は潤せない。