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気怠げな午後の授業

作者: 蛹繭

予鈴が鳴り、視線と声音が収束する。

初日は思わずたじろいでしまった圧迫感を、一身に受けとめる。


「起立、礼」

委員長が号令をかけて、クラス一同はそれに倣う。

規則正しい間隔と無駄のない動きが育ちの良さを感じさせてくれる。

その彼女たちは思春期真っ盛りで、厳しい校則に縛られている。

例えば、彼女たちの下げた頭の髪色に髪型、それに制服に秘められた下着の配色でさえも。


「着席」

彼女たちは違反が罰則に釣り合わないから従う。

その従順な姿と、淡々とこなす姿勢はまるで機械人形みたいだ。


「点呼とるぞ」

しかし、それがなぜ学生生活の間に設けられているか、一度は考えたことがあるだろうか。

規則はいつの時代も掻い潜るためにある。

その練習を在籍期間中に行う、あくまで自主的に。


担任の私の役目は他の大人が気付かなければ、知らないふりだ。

バレなければ純白以外の下着を身に着けてもいいし、リップも許される。

髪も黒に近い赤ならいいと思う。


窓から涼しげな風が、白のドレスを揺らす。

差し込む陽光と眩しく輝くカーテンが彼女たちを飾る。

天使のようその実、仮面の裏では鬱憤晴らしの罪状を幾つ重ねているんだか。

といっても担任の私が知るべきはそこではない。


定期的な業務として淡々と彼女たちの名前を読み上げていく。

欠席者はいない、しかし校則を守っている娘たちもいない。

学校は、ずる賢い大人を作るための箱庭なのだ。



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