洋館と猫耳メイド
私達は、魔族の指し示した方向にある洋館の前にたどり着きました。途中、複数の色々な魔族を見かけましたが、キリエさんが走っていくので気にしていられませんでした。
入り口には、私二人分ほどの高さの大きな門があり、それに沿って、土地を主張するように建てられた外壁に囲まれて庭園があり、庭園の中心に洋館が建っていました。
「たのもーう!!」
キリエさんはライフルの形になったレーヴァテインのストックで扉を叩き開けました。キリエさんは暴走すると止められないということを心に刻んでおくことをここに誓います。
突然開いた扉に驚いたようで、庭園の世話をしていたと思われる魔族が目を丸くしながらこちらを凝視していました。
「ケントはどこにいるんですの!」
キリエさんは誰に問いかける訳でもなく叫びました。そして、その声に答える声がありました。
「えっと、フラン様のお客様でしょうか」
頭に猫のような三角の耳を生やした魔族でした。尻尾もあり、その尻尾は怯えたように垂れ下がっていました。
「そうです。フラン様と会わせていただけますか?」
これ以上キリエさんに口を開かせるとろくなことにならない気がした私は、できる限り大きな声で言いました。
「わかりました。とりあえず客間へお通ししますね」
意外にも、猫耳の魔族は快く館の中へ案内してくれるようです。綺麗な所作にたなびくロングスカートは、熟練の給仕なのだと思わせます。
彼女を先頭に館の扉を開けると、私達の目に飛び込んできたのは、全裸で走り回るケントさんと、ひらひらの女性物の服を手に追いかけ回す、やけに露出度の高い服を着た魔族でした。
「な、なにやってますの!」
「なにやってるんですか!」
「ケント!」
「フラン様!」
キリエさんと猫耳メイドさんが同時に叫びました。
「あ、二人共、無事だったか」
ケントさんが私達を一瞥して、呑気に言います。私達がどれだけ心配したと思っているのか……。
「ケント! 早くこの服を着てみて!」
「嫌だって言ってるだろ!」
ですが、それも一時のことに過ぎず、すぐに鬼ごっこに戻っていってしまいます。
「フラン様、いい加減にしてください」
と思いきや、猫耳メイドが華麗な身のこなしでフランと呼ばれた魔族の元へ、またたく間に飛んでいき、フランの尻尾を掴みました。
「ひやぁん!」
フランはかわいい悲鳴をあげてその動きを止めます。どうやら、尻尾が弱点のようですね。
「た、助かったよソフィア」
「いえ、目を離した私にも否はありますので」
「な、なにするのよ……」
「それはこちらのセリフです。お客人には優しくとあれほど言ったでしょう」
「だから、私は優しく服を着せようとしてるんじゃないのよ」
「彼は男性です。女性物の服なんて着たがるわけ無いでしょう」
「だってかわいいんだもん」
「確かに、フリフリの可愛い服ですね」
「でっしょー! 絶対似合うと――」
私が口を挟むと、猫耳メイドさんがフランを制します。
「そんなことは関係ありません。似合う似合わないの問題ではないのです。本人が着たがるかそうでないかの問題なのです。わかりますよね?」
なんだか、猫耳メイドさんから、私と同じ物を少し感じる気がします。いや、根本が違うとは思うのですけれど。
ケントさんの方に目を向けると、全裸のまま正座させられ、キリエさんにこっぴどく叱られているようでした。キリエさんの顔は色々な意味で真っ赤でした。
この状況、私はどうしたらいいのでしょうか……。




