消えたケント
私が目を開けると、空は橙に染まっていました。どうやら気を失っていたようです。辺りを見回すと、キリエさんがいました。いえ、違いますね。キリエさんしかいなかったのです。
「キリエさん!」
私は気がついていないキリエさんの体を揺さぶります。
「キリエさん!」
なかなか起きないキリエさんの頬を掴み、思い切り引っ張ってみます。キリエさんの顔が楕円形に広がって世にも面白いお顔になりました。しかし、キリエさんは起きません。仕方ありません。奥の手を出すとしましょう。
私はキリエさんのドレスのスカートの中に手を入れ、下着を剥ぎ取ります。そこに、飲水をびちゃびちゃかけて、そっと履かせました。
「冷たいですわー!!」
すると、キリエさんが飛び起きました。キリエさんは私の顔を見て真っ赤になります。
「違いますよ。なかなか起きないので、私が飲水を垂らしただけです」
「な、な、な、なにしてくれやがりますの!?」
「てっきりお漏らししたかと思いましたか?」
「い、いえ……そう! 冷たくてびっくりしたのですわ!」
顔を真っ赤にしたままキリエさんは言い放ちます。苦しい言い訳ですが、今はキリエさんで遊んでいる場合ではありません。
「キリエさん、ケントさんがいなくなりました」
「な、なんですって!?」
キリエさんがお尻を押さえているのはこの際見ないようにしましょう。
「おそらく、私達は何者かに気絶させられ、その隙にケントさんを連れ去ったのでしょう」
「ケントにそんな価値があるとは思えませんのですけれど……」
「私も同感ですが、魔族たちが復讐のために連れ去ったという線もあるでしょう。早く魔族の村に行かなくては」
「そうですわね。急ぎますわよ!」
「お腹……大丈夫ですか?」
「誰のせいだと思っていますの!?」
火魔法で暖めればいいと言うのは言わないでおきましょう。
私達は一直線に魔族の村へ向かいました。村の入り口には、大きなアーチがあり、そこには【サキリスタの村】と書かれていました。村の周りは外壁に囲まれているというわけでもなく、入り口らしき場所から入らなくても侵入できそうでした。家々は質素な作りをしているように見えますが、しっかりと土魔法で固められ、見た目ほど質素な作りではなさそうに見えました。
「ここが、あの魔族の村ですわね!」
どの魔族のことなのでしょう?
「ケントさんはどこですのー!!」
キリエさんが大声で叫びながら銃を上に向けて発泡しました。私はゆっくり忍び込む方が良いと思ったのですが、キリエさんはいてもたってもいられなかったようです。
「あら、人族ね? 霧の森から迷い込んできたのかしら」
すると、1人の魔族が話しかけてきました。女性のようで、豊満な乳房を蓄え、頭には角と、お尻から尻尾が生えていました。そして、胸元の広く開いた服を着ていました。控えめに言っても露出狂の類にしか見えませんね。
「ケントはどこですの!」
キリエさんが詰め寄ります。
「あらあらまあまあ。そんなに興奮しないで。私達はあなたたちに危害なんて加えないわよ」
「どうしてそこまで言い切れるのですか?」
「私達は人族に嫌われたくないからね。私達、人族と交尾するのが大好きなのよ」
「交尾……ですって……?」
キリエさんの顔が曇ります。私も心中穏やかとはいかなくなりました。
「私と同じくらいの背の、十字架のようなものを背負った男の子を見ませんでしたか?」
「ああ、それなら、フランちゃんが連れてた気がするわねえ。ほら、村の中心の大きな屋敷があるてしょ? あそこがフランちゃんのお家よ」
豊満な魔族が後方を指差す。魔族の後ろを見てみると、この村には不釣り合いだと思えるほどにしっかりとした洋館がありました。
「ありがとうございます」
私は豊満な魔族にお礼を言い、洋館へと駆け出しました。




