湖の女
翌日、俺達は再び霧の森に来ていた。
昨日の魔族たちは皆自害したらしい。敵ながらあっぱれと言ったところなのだろうか。
「昨日の魔族たちが言うには、この森を超えると、魔族たちの村が見えるらしいです」
「ああ、情報を漏らしたから自害させられたのか」
「おそらくは」
ホープで霧を晴らしながら進んでいくと、開けた場所に出た。そこには大きな湖があった。大きな湖と言っても、霧が立ち込めていて、全貌はわからないのだが。
「ここかな?」
「おそらくは」
「よし!」
俺はホープに精霊力を込め、思い切り振りぬいた。
「【炎舞・業火】!」
【炎舞・業火】は精霊力の量で炎の勢いが増す。ホープから放たれた炎は湖の霧を晴らし、湖の全貌が明らかとなった。湖の中心を見て、俺達は驚いた。そこには、胴の長さが湖の外周ほどあるのではないかと思うほど大きな蛇がいた。胴には、びっしりと蒼く美しい鱗があり、蛇というよりは竜と言ったほうが良いかもしれない。
その竜の上には、美しい女性が腰掛けていた。
「おや、訪問者ですか。ここに何用ですか?」
竜に腰掛けている女性は、世にも美しい美声で語りかけてきた。
「剣を探しに来た」
「剣ですって?」
女性は美声でケラケラと笑った。
「失礼。この大陸でそんなものを追い求めるのは、迫害の対象になりかねませんよ? そこまでする価値がその剣にあるというのですか?」
「あるさ。俺はその剣達が好きなんだ」
ふと、キリエの方を見てみると、なぜかへたり込んでいた。その側ではマリアが神聖魔法を使っているようだった。
「キリエ?」
「ケントさん、気をつけてください。この声には魔力が込められています。耐性の無い人は死に、耐性が弱い人なら昏倒します。キリエさんでさえ、魔力に気圧されて立てなくなっているようです」
「じゃあ、ちゃっちゃとケリを付けてくるよ」
「いや、なんでケントは大丈夫なんですの……」
俺はキリエを早く楽にするためにも、女性に向かって飛びかかった。湖は大きいので、【エアリアル】で補助しながら、空中を駆けていく。
「せっかちな人ですね。リヴァイアサン」
女性が声を掛けると、竜が口をかぱっと開ける。次の瞬間には、尋常じゃない水圧の水が俺に向けて放たれていた。
「焔!」
俺は水を真正面からぶった斬ってやろうと思い、ホープに火を宿し、振り下ろした。しかし、水圧と水量のせいか、火は消え失せ、俺は水圧に押され、後方の木に思い切り叩きつけられた。
「ケントさん!」
「げほっげほっ」
水が少し肺に入り、思い切り咳き込んだ。しかし、咳き込んだのは水のせいだけじゃない。思い切り木に叩きつけられ、瞬間的に呼吸困難に陥ってしまったのも要因の一つだろう。
「もろいですね。そんなもので私をどうにかできると思ったのですか?」
「【回復陣】!」
マリアの神聖魔法で、俺の傷が癒えていく。【回復陣】は離れていても回復ができるようで、マリアはキリエの側から離れていない。
「助かった。ありがとうマリア」
「ケントさん、あれは強敵です。私も加勢します」
「いや、あいつは俺1人で片付ける」




