閑話:覚悟
私達は一度戻ることにしました。先の戦闘で、皆少なからず消耗していたからです。それに、魔族の処理もしないといけませんでしたから。
魔族は拘束し、村まで連行しました。ケントさんの力が牽制になったのか、魔族たちは思いの外大人しく付いてきてくれました。
そして、魔族たちはキリエさんの家の地下牢に幽閉しておきました。
その日の夜、ケントさんが眠りについた後、私は部屋を抜け出し、地下牢に来ていました。
「やりたいことってなんですの?」
「やらなければならないことです」
「どっちでもいいですわ。それって一体なんですの?」
「見ていればわかります」
キリエさんには、お目付け役兼、見届け人として付いてきてもらいました。
地下牢には、昼間に捕えた魔族たちが1部屋に1人ずつ入っていました。その一番奥まで歩いていきます。歩いていく私に、舐め回すような視線や、恨みがましい視線が突き刺さります。それを意に介さず、一番奥に到着しました。そこには、魔族たちのリーダーのグレールがいました。
「なんだてめえ、殺されに来たのかよ」
グレールは鎖で手枷を壁に繋がれ、身動きが取れない状態でした。
「私は、聞きに来たのですよ」
私は懐から拳銃を取り出し、撃鉄を上げて、グレールに銃口を突きつけました。
「なにをだ?」
「あなたたちがどこから来たのかです」
「けっ。そんなこと言うと思ってんのかよ」
「そうですか」
私は拳銃の引き金を引きました。銃弾はグレールの耳に命中しました。グレールは苦痛の表情を見せますが、その瞳には恨みの炎がメラメラと燃え上がっていました。
「答える気になりましたか?」
「誰が!」
更に続け様に2発弾丸を放ちます。銃弾は彼の腕と足を貫通します。私の拳銃の装填数は5発。残りの弾は2発になりました。
「どうですか?」
「……へっ……言わねえよ……」
グレールは息も絶え絶えといった様子でしたが、未だに口を割る素振りは見せません。
「そこら辺に―――」
「キリエさんは黙って見ていてください」
キリエさんの声を遮ります。そして、私は更に2発の銃弾をグレールに撃ち込みます。
「へへっ……俺は喋らねえぜ、諦めな。もう弾も無いだろ……」
「王女というのは覚悟がいるのです」
私は懐から新たに5発の弾丸を取り出し、拳銃に装填していきます。それを見たグレールの顔が青ざめていくのがわかりました。
「国のためなら、なんでもやる覚悟が。私は、この国のためならどんな汚いことにでも手を染めます。私が国にとって邪魔だと感じたなら、死すらも選びます」
装填が終わり、再び銃口をグレールへと向けます。彼の目は、怯えきった小動物のそれになっていました。そして、私は自分に言い聞かせるように続けます。
「そう、これは私の覚悟の証明なのです。この身を国に捧げる覚悟と決意。それを証明するための行いなのです」
「い、言う! 言うからもうやめてくれ!」
グレールが叫びます。リーダーとしてあるまじき無様な有様でした。
「どこから来ましたか?」
「あのクソったれの霧の森の向こう側だ! 森を抜ければすぐに見えてくる!」
「ありがとうございます」
「これでたすけ―――」
私は引き金を引き、グレールを殺しました。銃弾は脳天をきれいに貫通していました。絶命していることでしょう。
キリエさんの方を振り返ると、キリエさんはひどく悲しそうな顔をしていました。それを無視して、私は続けます。
「残りの魔族も皆殺しにします」
「……わかりましたわ。死体の処理は私の方でやっておきますわ」
「助かります」
そして、私は残った魔族の脳天を銃弾で撃ち抜き、1人ずつ順に殺していきました。不思議と、罪悪感などは感じませんでした。
そして、私は部屋に戻ってきました。部屋に戻る前に見たキリエさんの顔は、未だに悲しそうな顔のままでした。
私は、顔を洗ってから寝ようと思い、洗面台に立ち、正面にある鏡を通して、自分の顔を見ました。その顔は、それは酷いものでした。酷く怯えた顔でした。今にも泣き出しそうな顔でした。
そして、その時私は気付いたのです。私のやった虐殺は、確かに国のために必要なことでしたが、私にとっては、それは重い重い罪であったと。ひどいことをしてしまったのだと、気付いてしまったのです。それを自覚した瞬間、自然と涙が出てきて、気付けば泣きだしていました。湯浴み用の桶を持ってきて、水を溜めて、その中に顔を沈めて泣き叫びました。




