閑話休題
そんな感じで、村の手伝いをしながら、キリエの家に厄介になり始めてから1ヶ月が経っていた。
『もー! いつまでのほほんとしてるつもりなの!』
俺は今日も今日とて村の外まで狩りに出ていた。マリアは村の方でかんたんな教会を建てる手伝いをしている。マリアと俺の活動のせいもあって、信者が増えてきたようだ。
そんな中、ヒメがなにか喚きだした。
「どういうこと?」
『すっかり忘れてるみたいだから言うけどな? お前の目的は村興しじゃないだろ? 魔剣を集めることだよな?』
そういえば、最近情報収集をしていなかった気がする。元々は、村の人の信用を得て、情報を入手するためにこの村に留まっていたのだった。
「確かに、最近ここの生活が充実しすぎて忘れてたかも」
『うっそだろおまえ……』
ホープが絶句する。この反応を見るに、魔剣たちは結構俺に期待してくれてたみたいだ。
「そうだな。この狩りが終わったらキリエにでも聞いてみることにするよ」
俺は掌に置いた小石を中指で弾き飛ばす。それは風に乗ってすごいスピードで兎の魔物の額を貫いた。兎というものは魔物だろうが普通の動物だろうが、警戒心が強く、臆病みたいで、近くに寄ると逃げ出してしまう。兎の魔物の額には大きな角が生えているが、主に繁殖の為の求愛に使うらしく、襲ってくることは滅多にないらしい。
そんな兎の警戒心を刺激することなく仕留めるには、音を鳴らさずに物を高速で運べる風魔法がうってつけということだ。
風魔法【ウィンドシュート】は、空気の弾を撃ち出す魔法だが、弾の部分を小石に当て、風で包むことで一緒に運ぶことができる。ついでに【エアリアル】の魔法を少し使えば、軌道を変えることもできるのだ。
「これくらいで村のみんなの分は足りるかな?」
キリエから渡されている異次元ボックスになっている巾着には、20匹くらいの魔物が収納されている。これくらいあればきっとみんなに行き渡るだろう。ついでに山菜も摘んでいこうかな?
俺は軽い足取りで村への帰路についた。
村に帰ると、キリエの家に行き、キリエに袋を手渡す。
「今日も十分捕れましたわね。ご苦労様ですわ」
「そういえばさ、キリエはこの村の周辺の変わった場所の噂とか知らない?」
俺はホープたちに言ったとおり、キリエに村の周辺のことを聞いてみた。
「変わった場所ですの? どうでしょう……」
キリエは少し考えるような素振りを見せたあと、何かを思い出したかのように言う。
「そういえば、お父様やお祖父様が、絶対に入ってはいけないと言っていた地域がありましたわね」
「それ、どこらへんかわかる?」
俺が聞くと、キリエが訝しいといった表情をした。
「もしかして、そこに行くつもりではないですわよね?」
「え? そうだけど?」
俺があっけらかんとして答えると、キリエが深いため息を吐いた。
「入ってはいけないってことは、危険があったり、何らかの理由で立入禁止になっていますのよ? そこにおいそれと誰かを送り込めるものですか」
「確かにそうだな」
「あなたは本当に物わかりが良いですわね」
「ありがとう」
俺はニッと笑って言った。
「褒めてるんじゃなくて呆れてるんですの……」
キリエは深く深くため息をつく。
「とりあえず、お父様に相談してみますわ。貴方たちはこの村に対して大きく貢献してくれていますから、悪いようにはならないとは思いますわ」
「うん。キリエ、ありがとう」




