洞窟内部へ
キリエは一歩前に踏み出すと、両手にそれぞれ、自分の愛銃のグリップを握った。
「モード:トゥーハンド」
キリエが発した声に反応するかのように、腰に巻いたベルトに付いた小物入れから、レーヴァテインの部品がグリップに吸い付いていき、二丁のハンドガンになった。
「行きますわよ!」
キリエが引き金を引くと、両手の銃から1発ずつ弾丸が飛び出した。反動はしっかり抑え、発泡の勢いでハンドガンのシリンダーが軽快に回っていた。
飛び出した弾丸は、人骨の足の関節を的確に捉えた。骨は砕け、スケルトンは地面に顔を埋める。そして、弾丸はそのまま軌道を変え、腕の関節までも破壊した。俺がキリエと戦ったときの、あの銃弾だった。
「リモートブレットですわ」
1匹のスケルトンを行動不能にしても、弾丸はまだ止まらない。もう1匹のスケルトンに飛んでいき、関節を破壊し、行動不能にする。さらにもう1匹。そんな感じで、洞窟前にいたスケルトンは全て行動不能になってしまった。
「ざっとこんなもんですわね」
キリエがドヤ顔で言う。
「すごいな……」
素直に感心した。俺ならこんなに楽にはいかなかっただろう。
「キリエさん、ありがとうございます。それではケントさん。スケルトンを1か所に集めてください」
俺はマリアに言われたとおり、胴体だけになったスケルトンを転がして1か所に集めた。途中、頭蓋骨に噛まれそうになったが、なんとか完了した。
そして、マリアが詠唱を始める。
「彷徨える魂たちよ。我らが神の祝福があらんことを。【天上仏化】」
マリアの優しい声の詠唱が終わると、天から光が降り注いだ。その光は暖かく、全てを許して包み込む抱擁のような光だった。
光が収まると、人骨たちはもう動かなくなっていた。
「やっと洞窟内にいけるな」
「これからが本番ですわよ?」
「そうですよ。洞窟内部には何が潜んでいるかわかりませんから。でも、もし疲れたのでしたら、休憩してから行きますか?」
疲労を表に出して言ったからか、マリアが休憩の提案をしてくれる。でも、そこまで疲れているわけではない。ただ、洞窟に入る前から一苦労したなというだけだ。
「いや、早いとこ仕事を終わらして飯でも食べようぜ」
俺は我先にと洞窟へと走っていった。
洞窟内部は、光が一切差し込まず、足元もおぼつかないほど暗かった。俺はホープに火を灯して光源にし、マリアは魔法で光の玉を辺りにふよふよと浮かべていた。マリアの光の玉は明るく、ホープの火なんていらないかとも思ったが、接敵したときに戦いやすいので、そのままにしておいた。
こんなに暗い洞窟でも、ひとつだけ幸いなことがあった。道が一本道なことだ。もしかしたら、見逃しているだけかもしれないけど、その可能性は頭の済に追いやっておこう。
「妙ですわね……」
しばらく歩いていると、キリエがそんなことを言い出した。
「なにが?」
「洞窟の外へ溢れだすほどにアンデットが多いにもかかわらず、ここまで一切のアンデットと出会っていませんわ」
「そうですね。もしかしたら横道があったのかもしれませ―――」
言いながら後ろを振り向いたマリアが固まった。俺とキリエも同じ方向を振り返ると、これでもかと言うほどのアンデットの大群が俺達のすぐ後ろにいて、規則正しく並んで、洞窟内を埋め尽くしていた。




