お手伝い
「ここですわ!」
キリエに案内されて来たのは、村の北西にある洞窟だった。キリエが言うには、ここは少し前からアンデットが巣くっている場所らしく、一時的には退けられるものの、根本的な解決は神聖魔法のようなアンデットに強い効き目のあるものを使わないとできないらしい。
ちなみに、アンデットというのは、死者がなんらかの理由で、死した後も動き回っているものを言うようだ。通常は、死んだ生き物が動き回ることはない。
俺も一緒についてきたのは、神聖魔法を使うには詠唱が必要で、その間、マリアを守る役が必要だからだ。
洞窟の方を見ると、すでにアンデットが徘徊していた。どうやら、洞窟から溢れ出て来ているらしい。
「アンデットは全部殲滅してくださいな。ちゃんと私もお手伝いするので、安心してください」
「あれはスケルトンですね。人の骨が動いているものです。弱点は関節の部分ですが、物理攻撃が効きにくいのがアンデットです。気をつけてください」
「じゃあ、とりあえず斬ってみるか」
俺は洞窟の入り口付近を徘徊する人骨の一つにかっ飛んでいった。
「ホープ!」
ホープを抜き放ち、首の骨を切断しにかかる。
「炎舞・焔!」
ホープの剣身に炎が纏われ、それは鋭い刃となって、スケルトンの首の骨を焼き切った。頭蓋骨と切断された首の骨がごとりと地面に落ちる。だが、スケルトンの骸はかたかたと音を立てて笑いだし、体は首の無いまま、俺に襲い掛かってきた。
「焔!」
俺はスケルトンの左半身の肋骨をすべてたたっ斬った。だが、スケルトンの体は止まらず、奇妙にも、まるで体がすべてくっついているかのように平然と俺に向かってくるのをやめなかった。
「くそっ!」
スケルトンは、俺の体に組付くと、腕をすごい力で体から引きちぎろうと引っ張ってきた。このまま引っ張られ続けると、肩が脱臼してしまう。
「2人とも、ちょっと離れててくれ!」
俺は2人に注意喚起をしてから、己の内の炎を激しく燃やした。
「炎舞・紅!」
俺の体の周りに熱気が広がり、その熱で景色は激しく揺れていく。次の瞬間には、俺に組み付いていたスケルトンは溶けて黒い塊となっていた。
【炎舞・紅】は体内の熱を高温に上昇させ、自分の周りにも伝播させる技だ。俺以外の全てを巻き込む危険な技だから、あまり多様することはしないけど、今回は自分の腕がかかってたわけだから、仕方ない。
「大丈夫だったか?」
俺はすぐさま2人の無事を確認する。2人の方を見ると、離れた場所で手を上げているのが見えた。俺はほっと胸をなでおろし、2人の元へ戻った。
「なんだあいつ。どうやったら動きが止まるんだよ。溶かしても動いてるみたいだぞ」
先程溶かしたスケルトンの残骸は、ナメクジのような動きで動いていた。追いつかれることはないが、これではなにをやっても倒せそうにない。
「人の話を聞かずに出ていくからこうなるんです」
マリアは呆れたように言った。
「スケルトンは人型で、四肢があり、それらで動き回ります。死なないといえど、スケルトンには再生能力はありません。なので、四肢を切断して、動きを止めてください。その後は私がやりましょう」
「わかった」
「わかりましたわ」
俺が再びスケルトンに向かって突っ込もうとした瞬間、キリエが手で俺を制した。
「四肢の切断くらいなら私の方が安全かつ確実にやれますわ。おまかせくださいまし」
「……わかった」
さっき不死者の脅威を味わったところだったのもあって、俺は素直に引き下がり、キリエに任せることにした。




