キリエ・ブラックローズ
キリエとの決闘に勝った俺は、キリエの家に暖かく迎え入れられ、食事を取り、一泊させてもらった。
食事は、魔物肉のみなのかと思っていたが、ちゃんと野菜も出てきた。魔物には植物のようなやつらもいるから、そういうやつらを使っているようだった。見た目はなかなかにグロテスクだったが、意外にも美味しかった。
その日の夜、俺はキリエの部屋に訪れていた。大した用があったわけじゃないけど、拳を交えた仲だ。少し話をしたいと思っても不思議じゃないだろう?
キリエの部屋をノックすると、「開いてますわよ」というキリエの声が帰ってきた。俺がドアを開けると、こっちを一瞥したキリエがぎょっとした顔をした。
「な、なんですの?」
「いや、ちょっと話でもと思って」
「私、寝る前は忙しいんですのよ?」
キリエは机に向かいながら話していた。机の上には、何のものかわからないが、なにかの部品が散乱していた。
「なにか作ってたの?」
「いいえ、私の愛銃の整備をしていたのですわ」
どうやら、転がっている部品は、昼間キリエが使っていた銃たちのようだった。それにしても、銃というのはそこまで完璧に分解して整備するものだったのか。俺は少しだけ銃使いの苦労を垣間見れた気がした。
「昼間使ってた銃たちか」
「たちではありませんわよ。この子は一つだけですわ」
「え? でも、ショットガンだったりライフルだったり使ってたじゃん」
「それは、この子の一つの姿に過ぎませんわ」
そういうと、キリエは銃のグリップと思われる部品を握った。すると、これまでバラバラだった部品たちがグリップに集まっていき、みるみるうちにハンドガンへと姿を変えた。
「持ち手に魔力を流すと、こんなふうに銃の形になりますの。まあ、魔法の一種ですわね」
「そんな魔銃もあるんだ」
「魔銃には様々な種類が存在するのですわ。その中でも、この子、『レーヴァテイン』というのですけけれど、この子は扱いが難しいと言われていますわね。様々な姿に自在に変化できる分、それを正確に操作するのは難しいのですわ。イメージの固定化と、変化を何回もやらなくてはいけませんので、何度も魔法を放っているのと変わらないのですわ」
「じゃあ、それをできるキリエって結構すごいんだね」
「そうですのよ!」
キリエは得意げに自らの胸を大きく張って言った。
「でも、あなたには及びませんでしたわ。あなたは魔法使いですの?」
「いや、俺は剣士だよ」
「剣士でしたの? でも、剣をあまり使っていなかったのではなくて?」
「そうだなあ。魔法も使う剣士・・・みたいな感じかな?」
厳密に言えば、俺の使っているのは精霊魔法で、みんなが使う魔法とは少し異なるのだけれど、今は細かいことはどうでもいいだろう。
「使える属性は1種類だけですの? 気属性の魔法しか使っていなかったように見えましたけど。威力は凄まじかったですけれどね」
どうやら黒魔法のことは感知できなかったらしい。
「そうだな……」
改めて属性を数えてみる。ホープの火属性。ヒメの地属性、ミコトの天属性、ホワイトの白魔法、エアロの気属性。そして、ブラックの黒魔法。計六種類か。
数えてみると結構種類が豊富だった。
「言いたくないなら別にいいですわよ。能力を人に話すことは自分の不利益にも繋がりますから」
俺が少しの間考えていたためか、キリエが言ってきた。別にそんなことを考えていたわけではないので、俺は自分の使える属性を伝える。
「6種類かな」
俺が答えると、キリエは驚きの表情をした。
「6種類!? ち、ちなみにどの属性が使えるか聞いてもいいですの・・・?」
「えっと、火、地、天、白、黒、気。かな」
「なんですのその多さは・・・」
キリエが天を仰いだその後、がっくしとうなだれた。
「まあ、俺は特別らしいから」
「私でも5属性なのに、6だなんて・・・」
「え! キリエって5種類も使えるんだ!」
「そんな、『すごーい!めずらしー!』みたいな声出しても、皮肉に聞こえますわ・・・」
そこまで言ったところで、扉をノックする音が聞こえた。




