ローズブラッド
「あなたたちの実力を認めますわ。でも、この森は危険ですのよ。迷ったら最後、眠ることもできずに死ぬことになりますわ。だから、私の村にご招待しますわ。ついていらしてくださいませ」
「俺はケント。こっちがマリア。よろしく頼むことにするよ」
せっかく案内してくれるということなので、キリエの後をついていくことにした。俺達はホープ達がいるから安心して眠ることが可能なのだが、そのことは今は伝える必要はないだろう。
道中、魔物がひっきりなしという程ではないが、かなりの数出てきたが、俺の剣とキリエの銃、そしてマリアの神聖魔法の敵ではなかった。最初は疑われていたマリアの実力も提示できたという点で、魔物たちには感謝しなければならない。
しかし、この森に住んでいるのは魔物ばかりだ。しかもかなり気性の荒いものばかりだった。そういえばマリアが、ここらへんの土地で魔王の進行を食い止めていると言っていた。そのため、王都周辺と比べると雲泥の差でこちらが危険なのだろうか。
「着きましたわよ。ここが私達が治める村、ローズブラッドですわ!」
村の門の前にたどり着くとキリエが自信満々に言った。
そこは、村というよりはとても小さな田舎町のようだった。道は綺麗だが、石が敷き詰められてきれいに整備されているというわけではなく、綺麗にならされているだけなのに対し、建物は煉瓦が多く使われていて、丈夫そうだった。
建物というのは土台からしっかり作らないといけないと聞いた気がするが、ここは大丈夫なのだろうか……。言っちゃ悪いが、エセセレブ感漂う町並みだった。
「なかなかきれいでしょ?」
「そうですね」
「でもなんか歪じゃない?」
マリアに思い切り足を踏まれた。言ってはいけないことたっただろうか。
「う、うるさいですわ! そのうちちゃんと整備しますの! まだできていないだけなのですわ! あなた、結構失礼な人なのですわね」
キリエがプンスカ怒ったあと、ジトーっとした目線を向けてくる。聞いたのはそっちなのに、なぜそんな目を向けられなければならないのか。そんなことを考えていると、マリアが脇腹をつねってくる。まるでなにか悪いことでもしたかのようだ。割と痛い。
「ところで、宿屋みたいなとこはあるの?」
「無いですわ」
自信満々といった感じでキリエがキッパリと言う。
「じゃあ結局野宿なのは変わらないのか」
「何を言ってるんですの? 私の家に泊めて差し上げると言っているのですわ」
「なるほど。よろしく頼むよ」
そんなことを村の入り口で話していると、門番と思わしき男の人が声をかけてきた。
「おや、おかえりですかいお嬢」
「カリヤさん。今日もお疲れさまですわ。今日は大漁ですわよ」
キリエはにこやかに笑い、門番の男に腰のポーチから小型の魔物の死骸を出してみせた。
ここでは魔物も食料の一つのようだった。
「お嬢、そいつらは?」
「森で迷っていた旅人のようですの。森は危険なので私の家に泊めてさしあげることにしましたのよ」
「ほう・・・そいつは・・・」
門番の男は俺の体を吟味するように見回してから、肩に手を置いてきた。
「ま、がんばれよ! 俺の名前はカリヤ。お嬢のとこに見捨てられたらうちにきな。ちょっとした雑用をやってくれれば泊めてやるよ」
よくわからないが、いい人っぽそうではあった。
綺麗にならされた道を歩いていくと、村に入った時から見えていた一際大きな家の前に着いた。
「ここが我がブラッドローズ家の屋敷ですわ!」
またもや胸を張り、自慢気にキリエが言う。
「屋敷・・・?」
しかし、屋敷というには小さかった。ガンツ村の領主の屋敷の半分もあるかどうかわからないくらいの大きさで、俺の家と同じくらいの大きさに見えた。
「なかなか素敵なお屋敷ですね」
マリアの言う通り、見た目はすごく良いのだ。煉瓦をふんだんに使っていて、丈夫そうであり、他の家に無い気品を感じさせる飾り物が所々に散りばめられていた。
「そうでしょうそうでしょう。マリアさんは見る目がありますわね」
そう言って上機嫌で家の入り口を開いたキリエが発した言葉は、想像もしていなかった言葉だった。
「お父様! お母様! 決闘の準備を!!」
キリエは、家に響き渡るほどの大声で言った。




