紅の銃使い
俺達は南西の方向に徒歩で移動していた。南西の方向には街道が敷かれておらず、馬車で進むのには適さないのだ。
まあ、俺は馬を操るなんて真似できないんだけど。
一応コンパスがあるので、方角は間違わないはずだ。俺達は王都南西に広がる森を一直線に進んでいった。
「深い森だな」
「そうですね。ここらへんは人の手があまり入っていないので、本物の森と言えるんじゃないでしょうか」
「これじゃあ急に魔物が飛び出てきてもわからないかもな」
そんな冗談を言っていると、魔物の気配を感じた。俺はすぐにマリアに伝えると、ホープを手に取り、戦闘態勢に入った。
そのまましばらく慎重に進んでいると、バキバキと背の低い木をなぎ倒しながら、熊型の魔物が姿を表した。
俺はすぐさま切りかかったが、巨大な爪でいともたやすく防がれてしまった。
「その爪、叩き斬ってやるよ。エアロ!」
『おっけー!』
俺の体をそよ風が包む。そのまま俺は再び魔物に向かって剣を振るった。今回は爪狙いだ。もちろん、一度では折れるわけもなく、簡単に弾かれてしまう。俺は弾かれた反動を利用し、自然な流れで次の一撃を打ち込む。再び弾かれる。さらにもう一撃。それを繰り返す度に俺の纏う風は強さを増していき、俺のスピードも、剣を叩きつける威力も増していった。
その結果、50回くらい剣を叩きつけた時、魔物の爪がパキンと折れてしまった。
「拘束!」
待ってましたと言わんばかりにマリアが唱えると、地面から光の鎖が出現し、魔物の動きを封じた。魔物の力は強く、そう長くは動きをとどめておけないだろう。しかし、それくらいの時間で十分だった。
「風炎舞・えん―――」
俺が魔物の首を斬ろうとした瞬間、鋭い銃声が轟き、魔物の眉間に風穴が開いた。
バインドの効果が切れると、魔物は絶命しており、バタリと仰向けに倒れた。
それに呆気にとられていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あなたたち、ここでなにをしていますの?」
振り返ると、そこには森の中には不釣り合いな紅いドレスを着た女性がいた。彼女は拳銃を二丁構え、こちらに銃口を向けながら言ってきた。
「俺達は―――」
「私達は王都から南西へ向かって旅をしている途中でして、魔物に襲われたので対処していたのです。決して密漁目的などではありません」
俺が喋ろうとすると、マリアが口を挟んだ。俺はこういう場面だと役立たずとでも言うのだろうか。
「王都から……にわかには信じられないですわね。この近辺は王都の人たちもよく知らないでしょうから、危険だと釘を刺されたりしたのでは?」
「はい。されました。ですが、だからこそ来たかったのです。この未開の地へ」
「なるほど……では、ここで生きていけるのか、私が見定めて差し上げますわ!」
「いや、こんな森の中でそんな目立つドレス着ている人にそんなこと言われても」
「なんですって?」
どうやら地雷を踏んでしまったようで、すごい形相で睨みつけてくる。銃口は完全に俺に向けられていた。しかも二丁ともだ。マリアをちらりと見ると、顔に手を当てて空を仰いでいた。ここでは空なんて見えないが。
臨戦態勢になったように、紅いドレスの女性の雰囲気が変わっていた。
「見せて差し上げればよろしいですか? 私の実力を!」
「集中!」
言い終わるのと同時に、彼女は引き金を引いた。俺は咄嗟にフォーカスを発動し、腰にあるミコトを後ろに向かって投げた。
俺の後ろには、小型の魔物が四匹いた。その四匹は共に絶命していた。2匹は眉間を撃ち抜かれ、もう2匹は脳天をミコトが貫いていた。
「ふーん……なかなかやりますわね」
「お前も見事な腕だな。俺の幼馴染を思い出すよ」
「お前じゃありませんわ。私の名前はキリエ・ブラッドローズ。キリエと呼ぶことを許して差し上げますわ」
どこかの貴族のような喋り方をするちょっと変わったガンマンは、キリエと言うらしかった。




