閑話:王女の決断
「お父様、お姉様」
ケントさんが出ていったあと、私はその場にいた2人に向き直り、言いました。
2人は、なにかを察したように優しい顔をしていました。
「私は、ケントさんに付いていきます」
「そうか……」
お父様は少し寂しそうな顔をしていました。それもそのはずです。長らく離れて暮らしていた我が子が、たった数日のうちに、またどこかへ行ってしまうというのですから。
「大丈夫です。必ず、魔王を倒して帰ってきます」
私がそう言うと、サリーお姉様は華やかに笑いました。
「あはは!さすがはアンですね。用意周到です。でも、ケントさんに無理強いしてはいけませんよ?」
「わかっています。それとなく誘導するつもりですから」
「やれやれ……女とはみんな強かで恐ろしいな」
私とお姉様は、満面の笑みをお父様に向けました。別に牽制とか、脅しとかではないです。お父様はよくわかってるなと思った笑いでした。
私は、行く前にお父様に抱きつきました。お父様は、そんな私を優しく抱きしめてくれました。父としても、一国の王としても、優しく、大きな器の持ち主であると再確認しました。
「気をつけてな」
「はい。お父様も、お元気で」
「あら、私には無いのかしら?」
お姉様が悪戯っぽい笑みを浮かべながら言いました。
「冗談よ。そんな顔しないで。じゃあ、逆に私からはプレゼントをあげるわね」
サリーお姉様が名案と言わんばかりにポンと手を叩き、言いました。
こういう時のお姉様はろくなことを考えません。
お姉様はゆったりと私の側まで歩んできて、私の頬に優しく口づけしました。
私は急なことに驚いて、動揺してしまいました。
「お、お姉様!」
「フフフ……。アンにも可愛いところがあるじゃない」
悪戯っぽく笑うお姉様は、心底満足そうでした。まあ、今回は許すとしましょう。私もわがままを言いましたから、これくらいなら。
ですが、いつか絶対仕返しします。
そんなこんなで、私はケントさんの元へ行くことにしました。




