囚われたケント
目を開けると、鉄格子が目に飛び込んできた。手を動かそうとすると、かちゃかちゃという金属音が聞こえる。どうやら手枷で吊るされているようだった。
「ここは・・・?」
『やっと起きたか』
ホープの声が聞こえる。周りを見渡すと、十字鞘が部屋の隅っこに置かれていた。木刀とミコト、それにライネルからもらった銃もまとめて置かれているようだった。
『めんどうなことになったぞ』
「めんどうなこと?」
そこまで俺が言ったタイミングで、鉄格子の外に小奇麗な甲冑を纏った男が三人現れた。1人は髭を蓄え、偉そうにふんぞり返るように髭をいじりながら俺を見ていた。あとの2人は若く見えた。その2人はまっすぐおれを見つめている。
「開けろ」
髭男の支持で若い1人が鉄格子の扉を開け、3人とも中に入ってきた。
「やっとお目覚めか。これより、尋問を行う」
髭男が鞭を手に取り、俺の前に立つ。
「お前には、王都に悪魔を招き入れた容疑がかかっている。といっても、もう確定したようなものだが」
「してないよ」
俺が口を開くと、容赦のない鞭が飛んできた。
「虚言を吐くなよ、スパイが。この国に悪魔を蔓延させ、国を混乱に陥れ内側から崩す。それが貴様の策略であることは、我が主、サン=マリン=ウィンチェスター第二王女様が暴いてくださったわ!」
もう一度鞭を振るう。俺に当たった鞭は、俺の体に見てわかるような傷を作っていく。痛みはそれほどではないし、致命傷でもないが、傷がヒリヒリするのが辛かった。
「・・・なにを根拠にそんなことになってるんだ?」
「貴様が第三王女、マリー様に傷を負わせたからに決まっているだろうが!」
髭男は鞭を幾度となく振るい、俺の体に傷を増やしていく。
「貴様がやったんだろう?貴様が王都に悪魔を招き入れ、国に混乱をもたらそうとしたのだろう?」
「・・・違う」
「まだ言うか!」
そんなやり取りが数回行われ、気が済んだのか、3人は出ていった。
「なるほどね・・・」
『喋らなくてもいいぞ。辛いだろ』
俺は黙って頷いた。
『この国の第二王女はかなりの厄介者のようだな。まさかケントに罪を着せ、さらにはマリアにも責任を取らせようとしているようだぞ』
「マリアに?」
それは聞き捨てならなかった。俺は風来坊の様な物なので、追放になろうが特に問題はないけど、マリアは違う。なにより、マリアは共に旅した仲間だ。仲間に迷惑かけるのは、さすがに良心が痛む。
『どうやら、マリアに責任を取らせることで、また王都から離れた地へと追放しようとしてるみたいだね』
『でもそんなことしたら今のさばってる悪魔たちを放置することになるんじゃないの?』
『そのことも含めて考えると、多分悪魔を街に招き入れたのは第二王女ってことになるな』
『人間って相変わらず姑息だよね』
『どれだけ経っても生物の根本ってのは変わらないものだ』
そんな話をしていると、鉄格子の向こうに、マリアが現れた。手には食事を乗せたおぼんを持っていた。
「マリア・・・無事だったか」
「ケントさん・・・」
マリアは哀愁漂う眼差しで俺を見ていた。体の傷を見てだろう。
「この者の傷を癒やし給え、治癒」
マリアが俺に手をかざし唱えると、俺の体の傷はみるみるうちに治っていった。
「ありがとうマリア」
「いえ、これくらいしかできなくてすみません。ここに来るのも、わがままを言って給仕を代わってもらわないといけませんでした」
俺の腹の虫が鳴る。食事は目の前にあるが、俺の手は枷に繋がれたままだった。
どうやって食べろと言うんだクソッタレが。
そんなことを思っていると、マリアが食事を口まで運んで食べさせてくれた。
「ありがとう。マリアがいなかったら腹減ったまんまだったよ」
「落ち着いて食べてくださいね」
食事も終わり、一息ついた頃、俺は話しだした。
「マリア。俺は脱獄するよ」
「いけません!そんなことをすれば、更にケントさんの罪が大きくなります」
「そんなこと言ったって、このままじゃどうにもならないだろ?」
「それはそうですが……」
「まあ任せとけって。ちょうどホープたちもそこにあるしな」
俺は胸を張ってみせた。すると、マリアはため息をついて、どこからか俺のポーチを取り出した。
「そういうかと思って、密かに持ってきました」
「お、ありがと!これで食い物には困んねえな」
「くれぐれも気をつけてくださいね」
「わかったよ」
それだけいうと、おぼんを持ってマリアは去っていった。




