ライネル
「まあ座れ」
ライネルは俺に座るように促した。俺もそれに従い、テーブルの椅子に腰かける。
「お前すごいな。ゴブリンバーサーカーに悪魔、俺がこの立場にいなかったら決闘を申し込んでるくらいだ」
ライネルはガハハと笑った。
「俺はなんでここに呼ばれたんだ?」
「おうおう、なかなか生意気な口の利き方をするじゃねえかよ」
ライネルが拳銃を抜き、俺を睨みつけてくる。俺も腰の木刀に密かに手をかけた。銃口こそ俺の方に向いていないが、その視線には俺の心臓を撃ち抜かんとする鋭さがあった。殺気とでも言うんだろうか。まるで巨大な魔物と対峙しているようだった。
「俺がこの銃の引き金を引くのと、お前が俺を殺すのと、どちらが早いと思う?」
「そりゃあ引き金を引く方が早いよ。でも、俺は死なない」
俺がそう言うと、ライネルは不敵な笑みを浮かべながら、俺に銃口を向けた。
「やってみるか?」
俺の殺気とライネルの殺気が狭い部屋の中でぶつかる。俺はライネルの大きな殺気に気圧されないようにするので精いっぱいといった感じだった。でも、負ける気は毛頭無い。
ライネルが引き金を引く。その瞬間、俺は集中を発動した。しかし、弾は飛んでこなかった。俺もライネルに飛び掛かっていくようなことはしなかった。
しばらくの沈黙の後、ライネルの笑い声がその沈黙をやぶった。
「ガッハッハ! キリツグ・ケント、大した男だ。本気で俺の撃った弾を斬るつもりだったな?」
「もちろん」
俺もライネルの大笑いを聞いて緊張を解く。
「受け取れ」
ライネルが持っていた拳銃を俺に投げ渡してきた。それはスライドがあるタイプの拳銃で、持ち手の部分に弾倉が入るようになっていた。
「お前はこの国の事をまだよくわかっていないみたいだから言っておくぞ。この国は隣国と冷戦状態にある。それもずいぶん長い間な。今はにらみ合いだけで済んでいるが、いつ開戦してもおかしくないんだ。そんな情勢の中、剣を持つ男が王都の中を歩いていたらなにを言われるかわからねえだろ。ホルスターもくれてやるから見える位置に付けとけ」
俺は「わかった」と言い、ミコトの横に提げておいた。
「ついでに弾もくれない?」
「なんだ? 銃も使うのか?」
「いや、念のためだよ」
「構わねえぜ」
ライネルから弾倉を一つ受け取り、銃に装填する。驚くことに、受け取った銃には空弾倉すら入っていなかった。本当に飾りのつもりで渡したのか・・・
「これ、ほんとに撃てるんだよな?」
「撃てるさ。構わねえから壁に向かって引き金を引いてみな」
俺は言われた通り、壁に銃口を向けて、引き金を引いた。その瞬間、大きな発砲音と共に弾が打ち出され、天井にめり込んだ。
相変わらず、銃を上手く使うことはできないらしい。
「お前が銃を使わない理由が分かったよ」
「うるせえ」
その後、ライネルが書類を一枚作成してくれ、そこにサインをした。
「これでお前は正式にランクC冒険者として登録されたぜ。ギルドカードを貸してみな」
ギルドカード渡すと、ライネルはそれを書類にかざし、俺に返してきた。
「これで完了だ」
「ありがとう」
「腹減ってねえか? 下で飯でも食おうぜ。実は俺もまだ昼飯食ってねえんだよ」
「ご馳走してくれるの?」
「馬鹿言ってんじゃねえよ! 寧ろお前が俺に奢れ! ギルドマスター直々に書類を作ってやったんだからなー!」
がっはっはと笑いながらライネルは俺と共にエレベーターに乗った。




