幕間:三章
第三章
「大神官長が帰ってくる? 追放されたはずでは?」
「噂ではそう見せかけただけだと聞いています」
「今あ奴に帰って来られては困るな。しかし、こちらが大きく動けば我らの存在がばれてしまうだろう」
「なに、お任せください。こういうときは敢えて敵を引き入れ、一気に叩けばよいのです。たかが神官一人、私が始末して見せましょう」
「なるほど。ならば任せるとしよう」
「御意―――」
―――男は国の安寧を危惧していた。最近、城下で不審な動きがあると報告が上がることがたまにあるからである。
「悪魔か・・・」
謁見時にはいつも身に着けている王冠を執務用の机に置き、一息ついている時のことであった。ここには男の愛する娘もいた。
「父上、心配なさる必要などございませんわ。この第二王女におまかせください」
「なにか策でもあるというのか? 我が娘よ」
「もちろんですわ。私にお任せください」
男は奇麗に整えられた顎髭を触りながら思案する。これは男の癖で、なにかを考え込む時は顎髭をいじりながら頭を回すのだ。それも重要なことであればあるほど念入りに。
男は念入りに髭をいじくりまわす。これがただ一時のことであればいいのだがと、祈るばかりである。
「もう少し考えさせてくれ」
男は娘にそう告げた。
そんな折、一通の手紙が男の元に届いた。
その手紙には、見知った筆跡で「父上へ」と書かれていた。
その筆跡は、王位継承争いに巻き込まれるのを嫌った、第三王女からであった。その手紙には、こう書かれていた。
親愛なる父へ
お久しぶりです。
お元気でしょうか。長い間家を留守にして申し訳ありません。この度、こうして手紙を送らせていただいたのは、私の役目を果たすため、王都へ帰還する許可をいただくためです。
いえ、いただかなくても王都には戻らせてもらうのですが。
今回、王都に戻らなければいけなくなった理由としては、悪魔出現の兆しを感じ取ったからです。悪魔は遠い先祖より、我ら教会の敵であり、国を脅かしかねない存在でもあります。
その悪魔の魔の手が王都に迫っているかもしれません。私が行って、対処いたします。
久々に会えるのも楽しみにしています。
この手紙を受け取った男は、すぐさま家臣と娘を部屋に呼び、娘の帰還を伝えた。
「皆、近日中に大神官長が帰ってくる。最近起こっている事件も、彼女がいればたちどころに解決するだろう。私は、この事件の解決を彼女に一任することにする」
家臣と娘からは喜びの声が上がった。
ただ一人を除いて・・・




