乗っ取り
ヒメのおかげで悪魔の居場所を掴んだ俺達は北に向かった。
向かう途中、これでもかと魔物が次々に襲い掛かってきた。だが、それも3人いれば軽くあしらえた。
「リーエンさん、残弾は大丈夫ですか?」
「あと半分といったところだな。ま、とっておきの1発があるから、全部使い果たしても悪魔に一撃食らわせてやるくらいはできるさ」
ガハハとリーエンが笑う。頼もしいものだ。
前の俺ならそんなふうに考えなかったかもしれない。マリアと出会い、いろいろな人と触れ合って、俺も他人を頼るようになったんだろう。
更に進むと、急に異様な雰囲気が漂ってきた。
「悪魔の気配がします。みなさん、気をつけてください」
マリアがそう言ったとたんに、茂みから何かが飛び出してきた。
なんとそれは人間の男であった。その男は何か言う暇もなく、容赦なく斬りかかってきた。獲物は包丁だった。俺は咄嗟にミコトでそれを防いでいた。
「随分と力任せだな」
俺はわざと鍔迫り合いになっている剣を滑らせた。その結果、相手の上体は包丁と共に前のめりに俺に向かってきた。その男の顔面に、ミコトの柄頭を叩きつけた。
柄頭は鼻に命中し、反動と痛みで男はよろめきながら距離を取る。
「こいつは討伐作戦に参加してた冒険者じゃねえか?」
よく見ると腰には銃の入ったホルスターがさげてあった。
「ってことはまさか・・・」
「そうです! この人は悪魔に取りつかれています!」
マリアが叫ぶ。それなら俺が押さえつけてやるか。
「俺が抑える!」
「待ってください。前に追い払った悪魔なら、また逃げてしまうかもしれません。逃げられないように結界を張ってから追い出します。それまで時間を稼いでください」
「わかった!」
俺は片手にミコトを、片手に木刀を握って男に向かっていった。
男は腰の銃を引き抜き、躊躇なく撃ってきた。しかも俺ではなくマリア目掛けて。マリアは詠唱を始めたところだ。すぐには動けないだろう。
「させるかよ」
俺はミコトで弾を弾こうとした。しかし、剣に弾が触れたとたん、銃弾はピタリと動きを止め、ミコトにくっ付いて離れなくなった。
『電磁石ってしってるかな? 金属の周りに電気を流すと金属は磁力を持つ。もちろん電気が止まれば磁力も無くなるけどね』
「電気? 雷のことか? つまり精霊力を使って帯電させておけば銃弾を受け止められるってことか?」
『まあだいたいそういうことだね』
これは好都合だ。これで危なげなく防ぐことができる。
男はその後も銃を連射してきたが、八割は俺がミコトで凌ぎ、逃した分はリーエンが銃で相殺してくれた。恐ろしく冴えた腕だ。それとも冒険者ってのはそれくらいできないといけないのだろうか?
弾を撃ち尽くした様子の男は踵を返そうとした。しかし、そこにリーエンの銃でのけん制が入る。
「どこに行こうというのかね?」
不敵に笑うリーエンに、男も容易には動けないようだった。
「整いました。ケントさん、お願いします!」
「よし!」
俺はマリアの合図と共に木刀で男に切りかかった。男はそれを銃で受け止めた。その瞬間、俺は木刀を握っているように見せかけて持っていたミコトの柄頭を顔面に叩きつけた。
その勢いで男は後ろにのけぞった。そこを見逃さず、男を蹴り倒し、その上にヒメをどかんと置いてやった。
当然、男はヒメを除けられず、身動きが取れなくなった。
その男にマリアが近づき、悪魔を追い払うべく男に触れる。
「聖印」
すると小さな虫のようなものが男の口から出てきて飛び去ろうとした。
だが、その虫はしばらく上昇すると、何かにぶつかったようにその場に留まった。
その虫はよく見ると、手のひら大の大きさがあり、羽と角があるようだった。
「それが悪魔です!」
「あのちっせえのがか!」
リーエンも初めて見るようで、少し驚いているようだった。
「ぶった切れば大人しくなるだろ」
俺は飛び上がり、ホープで悪魔を切り伏せようとした。
だが、その悪魔は巧みに俺の振った剣をすり抜け、俺と真正面からぶつかった。
「いけません!」
その悪魔は不敵に笑っているように見えた。




