寄り道
「悪魔の討伐作戦?」
「はい。他の冒険者には後日通達する予定ですが、大地の森の全域に渡って悪魔の捜索と討伐をしようと思っているのです。公には魔物の討伐ということにするつもりですが」
急に言われてもな・・・。しかも俺には目的もあるしできれば先を急ぎたいんだが。
「どうして大地の森にいるとわかるのですか? 神官の助言でもありましたか?」
「いえ、実は私はエルフと呼ばれる種族の末裔なのです。昔は耳が尖っていて長かったらしいのですが、そこは血が薄くなってしまった為か、ヒトと同じになっています。このことは内密にお願いします」
「なんでこんなめんどくさいことに・・・」
俺がぼやくと、マリアが俺の方を見て言ってきた。
「力ある者というのはそれなりの苦難に見舞われる運命にあるのですよ」
「俺、そんな力ないと思うけど」
俺がそう言うと、三人は深いため息をついた。
「ケントさんは後で私が説得するので、続きをお願いします」
マリアがアーグに催促する。俺は腫れ物かなにかか?
「では、続きを。エルフには悪魔を感知する能力が備わっているのです。その力で、今は大地の森に潜伏していると思われます。魔物が増えたのも悪魔がいる為と考えるのが自然でしょう」
「ですが、正確な場所までわかるのですか?」
「お察しの通り、大まかな場所しかわかりません」
アーグは申し訳なさそうに肩をすくめる。
「それで冒険者総出で大地の森を掃除しようということです」
「わかりました。教会関係者としても、一人の人としても、これを見逃すことはできません。お引き受けします」
そのマリアの言葉を聞いて、アーグは顔をパッと明るくし、マリアの手をがっしりと両手で握った。
・・・なんだか面白くないな。
「俺は他にやることが―――」
俺の言葉を遮り、マリアが懇願するような声と表情で口をはさんでくる。
「ケントさんがいなければこの作戦は成功しません。ケントさん、私を助けてください。このままでは私もどうなるかわかりません。しかし、ケントさんさえ付いてきてくれれば、なんとかなるんです。ケントさん、お願いします!」
マリアが弱弱しく俺の手を握ってくる。
それは溺れかけの子供の叫び、捨てられた子犬の声、そんな風に聞こえた。さすがにこれを断るのは良心が痛む。
「・・・わかったよ。どうせ、護衛の依頼は継続中だしな」
俺はそっぽを向いたまま答えた。急にここまで言われるとばつが悪い。
「じゃあそういうことでいいな。こっちの準備ができたら改めて声をかけるから、それまではこの町の近くにいてくれ」
そういうことで、この場は解散となった。
そして数日後、大地の森の討伐作戦当日となった。




