閑話:狩人と聖女
「こんなのは久々だな!」
リーエンさんが雄たけびを上げながら飛び出していきました。手には二丁の銃を構えて。
リーエンさんはゴブリンバーサーカーの周りを旋回するように走りながら銃を撃ち、ゴブリンバーサーカーの注意を引きます。リーエンさんは初老を超えたくらいに見えるにもかかわらず、ゴブリンバーサーカーの振り下ろす斧を巧みに躱しながら銃弾を浴びせていきます。
しかし、全弾頭に命中しているにもかかわらず、その分厚い皮膚は弾をはじき、致命傷にはなりえないようです。ゴブリンといえど、上位種になればここまで脅威的になるということを思い知りました。
私は右手を掲げ、詠唱を開始します。
「我らが神よ、彼の者に裁きを、そして罪を浄化し給え・・・」
私の掌の上に光の槍が形成されていきます。
ゴブリンバーサーカーがリーエンさんの方を向き、こちらに背を向けた瞬間に魔法を放ちます。
「聖撃!」
私が手を振り下ろすと、光の槍がゴブリンバーサーカーの背中目掛けて飛んでいき、奇麗に突き刺さりました。これにはゴブリンバーサーカーもさすがに堪えたようで、忌々し気にこちらに向き直り、こちらに向かって走り出してきました。
「まずい!」
リーエンさんも空かさず私の方に駆けてきます。
ここが私の力の見せ所でしょう。我らが神に最大限の祈りを。
「我らが神よ、我らの信仰心に答え給え、そして我らを救い、守り給え」
私は右手を前に突き出し、ギリギリまでゴブリンバーサーカーを引き付けます。そしてギリギリのタイミングで私のすべてを込めた魔法を発動します。
「聖十字!!」
魔力でできた聖なる盾が振り下ろしてきた斧を防ぎます。その間にリーエンさんが追い付き、横やりを入れます。
「こっちを向きやがれ!」
が、怒りで我を忘れたゴブリンバーサーカーは意に介さず、斧を力いっぱい盾に押し付けてきます。
さすがにそんなに長くはもたない気がしてきました。いけませんね。この盾は信仰心が生み出したもの。心の揺らぎが魔法の瓦解につながります。
しかし、もう遅かったようです。
魔法の盾にヒビが入り、私は死を覚悟しました。そのときでした。後ろから声がしたのは。
「ごめん、遅くなった」
魔法の盾が砕け散った瞬間、私の前に割り込み、斧を受け止めた人がいました。
最初は雰囲気が変わりすぎていて、だれかわからないくらいでした。でも、その白く光る瞳を見た時、誰なのかはっきりとわかりました。
「ケント・・・さん・・・?」




