西の森
俺たちは情報収集のためにギルドに戻ってきていた。大地の森で倒した魔物の素材を換金してもらうと、またもや心配された。そして、またセレンに怒られてしまった。
「まだEランクなのに無茶しすぎです!」
「えっと・・・ごめんなさい?」
「せめてDランクに上がってからそういうことはしてください! ということで、この依頼をこなしてきてください」
そう言って、俺に一枚の紙を突き付けてきた。そこには、西の森に住む猟師の男に薬を届けて欲しい旨の依頼内容が記載されていた。
「西の森か・・・これは好都合だな」
「何が好都合なんです?」
おっと、いけない。つい口を滑らしてしまった。セレンが眉をぴくぴくさせながらひきつった笑顔をしている。
「な、なんでもないです! すぐに行ってきます!」
俺は受付で薬を受け取ると、マリアに言って、西の森に向かうことにした。
ぐぎゅるるる~と、腹の虫が森に木霊していた。
「腹減ったあ」
「だから食べてからいきましょうって言ったんですよ」
腹の虫は俺だけではなく、マリアからも小さく聞こえていた。西の森は大地の森ほど広大ではないとのことだったので、大丈夫だろうと踏んでいたのだが、それなりには広く、もうおやつの時間に差し掛かるかなといったところであった。
しかし、ここは大地の森のように魔物がわんさか生息しているわけでもないようで、動物を見かけることはあっても近づいてくるものはほとんどいなかった。そういう意味では大地の森に行ったときよりも長く歩いているように思える。とにもかくにも腹減った・・・。
『一回野営して飯食えばいいじゃねえか』
「そうだなあ。そうするか」
「私もそれが良いと思いますよ」
マリアも我慢していたのか、即座に賛同の意を示す。
ということで、今回もコモドリザードの肉を焼いていただくことにした。今回は土魔法が使えるので、椅子やテーブルなどを用意できて便利だった。
俺とマリアが、遅い食事を取っているときのことであった。俺たちの野営地へと、一発の銃弾が放たれた。それを一瞬早く察知した俺は、その弾をホープで真っ二つに切り裂いた。
「だれだ!」
俺が叫んでも、だれも出てこない。俺は警戒を怠らず、マリアを守るようにして辺りを警戒する。マリアには伏せてもらっている。
耳を澄ませると、少し遠い所からかさかさと草木が揺れる音がする。動物が移動するものとは少し違うようだ。おそらく俺たちを狙った者のものだろう。
「スナイパーですね。いきなり打ってきましたが、先ほどのものは威嚇か警告でしょうね。何に対してかは不明ですが」
「斬った弾の感触からもライフルを使ってることは分かる。あの弾は俺の食ってた肉目掛けて飛んできてたよ」
「かなりの使い手ですね」
確かに、これだけ精密な射撃をこなせるスナイパーはそういないだろう。ガンツ村で猟師をしていた人も、鼠などは小さくて狙えないと言っていた。
俺が警戒していると、もう一発、弾丸が飛んできた。それは俺の背後からで、さすがに斬ることはできず、体を伏せて回避する。だが、銃声と弾が飛んできた方向で、大体の位置が分かった。
「土魔法・ストーンショット!」
魔法で小さな石を作り出し、それをそこ目掛けて打ち出した。草木に紛れていて、命中したかは目視できなかったが、次の瞬間、叫び声がこだました。
「あいたっ!」
俺はすぐさま声のした場所へ駆けていった。
声の主は、草木で作った服を全身を覆うように羽織っていて、一瞬草木が話し出したと思ったが、俺が近づくと声をかけてきた。
「くっそ・・・。いてえじゃねえか小僧」
その人物はフードを取り、顔を晒す。それは白髪の老人であった。全長1メートルほどのライフルを所持しており、顔にも緑色の塗料を塗りたくっていて、フードを被ればほとんど草木と見分けがつかないほどだ。その白髪の頭は、こころなしか少し腫れている部分があるように見えた。
「撃ってきたのはそっちだろ」
「お前らが密漁した獲物を堂々と食ってたからだろ! 知らねえとは言わせねえぞ。この森での狩りはこの俺の許可が無いとできねえことになってんだよ。冒険者ギルドや領主にだって認めてもらってる」
やっべ、急いで出てきたからしらねー・・・。
「でも、俺たちが食ってたのは大地の森にいたコモドリザードの肉だ。ここで狩りはしてない」
俺がそういうと、老人はきょとんとして言ってきた。
「あれ? おっかしいなー! 鹿の肉とかかと思ったぜ!」
がっはっはと笑い、俺の背中を叩いてくる。
ただの勘違いかよ!この爺さんボケてるんじゃねえか?
俺と共にマリアの元に来た老人は、マリアと俺に頭を下げて謝罪してくれた。




