鍛冶屋カエリア
俺たちは紹介してもらった鍛冶屋の前にいた。
「これが鍛冶屋・・・?」
武器や防具を売っていると聞いていたので、ゴツゴツとした石造りの建物などを想像していたのだが、実際はなんともカラフルな外装をしていた。看板には、鍛冶屋カエリアと書かれている。
「とりあえず入ってみましょう」
マリアがファンシーな扉を開けると、そこはメルヘンの世界であった。壁紙はピンクを基調としていて、カラフルな色が散りばめられていた。
「なにここ・・・」
俺が絶句していると、店主と思われる女性が声をかけてきた。女性は髪を団子に括っていて、つなぎを着ていた。恰好だけはまともだな・・・。
「いらっしゃいませ! ようこそ! 鍛冶屋カエリアへ! 店主のミレイ・カエリアと申します! 以後お見知り置きを!」
「ここは鍛冶屋であってるよね・・・?」
「はい! 合ってますよ! どんなものをお探しで?」
「防具を探してるんだけど・・・」
チラリとマリアの方を見ようとした俺だったが、マリアはそこにいなかった。店内を見まわしてみると、マリアは店内を歩き回り、防具を見ていた。
「店主さん。これはいくらでしょうか」
マリアが店主に値段を聞いた物は、見た感じただの白いワンピースにしか見えなかった。
「かわいいでしょそれー! 私の自信作なんですよ!」
「これ、魔力を帯びた糸で織られていますね。しかも魔力の含有量が多い・・・。そこら辺の鎧よりかよっぽど丈夫に見えますね」
「お嬢ちゃん、それ本気で言ってる?」
店主が急に声色を変えてマリアに近寄っていく。なんだか一触即発って感じの雰囲気だ。
「はい。私が見た限りでは」
マリアがそういうと、店主はマリアの手を激しく握り、縦にぶんぶんと振り回しながら言った。
「そうでしょそうでしょー!! やーっとわかってくれる人が来たよー!」
よほど嬉しかったのか、ぶんぶんと降る腕の幅がとても広い。マリアの腕がちぎれてしまうんじゃないかと思うほどに激しく振っていた。
「えっとカエリア・・・さん。マリアの腕が折れそうだから落ち着いてくれない?」
「ああ! ごめんね! この防具を馬鹿にする人ばっかりだったから、つい嬉しくなっちゃったよ!」
俺が言うと、カエリアはマリアの手をぱっと放して謝った。
「マリア、大丈夫?」
「はい。平気ですよ」
マリアは俺の方ににこりと微笑む。結構余裕あったのか。意外と丈夫な体をしているのかもしれない。
「それで、店主さん。この装備はおいくらにでしょうか」
「カエリアでいいよ! そうだねえ・・・」
カエリアは少し考えるそぶりをしてから言った。
「本当は5000バンは下らないくらいのお値段なんだけどー・・・今回はお嬢ちゃんの目利きの良さが気に入ったから、足りない分はおまけしてあげるよ! その代わり、今後もうちの店を贔屓してもらうってことで! ・・・どうかな?」
「どうでしょうか」
マリアが俺の方を向き、聞いてくる。
「今日死ぬ気で薬草集めないといけないけど、それでもいいなら」
「ありがとうございます。カエリアさん。これいただきます」
「まいど! 試着室あるから、サイズ合わなかったら言ってね!」
「では、着替えてくるのでケントさんは支払いの方、おねがいします」
「あ、うん」
なんだかとんとん拍子で事が進んでしまって、すっとんきょうな声を上げた俺はついていけないでいた。
俺が支払いを済ますと、マリアが試着室から出てきた。
「どう? かわいくない? かわいいでしょ!! ね、ケントくん!」
カエリアがマリアに手をひらひらと振って見せびらかしてくる。マリアは先ほどの服を身に着けており、さっきまでの扇情的なおへそがちらちら見えるような服とは打って変わって、半そでのワンピースを纏っていた。その姿は少しいいとこのお嬢さんと言った感じか。
「思った以上に似合ってるね」
「うふふ。ありがとうございます。ケントさんってお世辞もちゃんと言えるんですね」
『いや、今のは多分世辞じゃないぞマリア』
「お、俺だってお世辞くらい言うことはあるよ!」
「あれ? お世辞だったんですね・・・」
マリアが少ししょげたような様子を見せる。
「え、いや、そんなことないよ! うん!」
俺が慌てて訂正すると、マリアは悪戯な笑顔でにんまりと笑って、けらけらと笑った。さっきのはどうやら演技だったらしい。女の子ってこういうところあるよね・・・。
俺はほっと胸をなでおろすのと同時に、ため息を吐いた。




