到着
「あれがスミスの町か!」
「お、おそらくぅ〜」
俺が走っていると、町と思わしきものが見えてきた。マリアは俺が走っているスピードや揺れに耐えるので精一杯で意気消沈といったかんじだ。
町は森の方から流れてくる川が堀に溜まって池のようになっているため、門以外からは入れなくなっているようだ。門の前には門番をしている人が2人いた。
「君ー!止まりなさい!!」
俺が走っていると門番の2人が前方に立ちふさがった。俺は足でブレーキをかけて土埃を舞い上がらせながら、なんとか門番の前に止まった。目の前にギリギリで止まったのに門番の2人は微動だにしなかった。
「君、見ない顔だね。身分証明ができるものはあるかい?」
「うーん、無いかな」
「そっちの君は?」
門番は俺に確認した後にマリアにも聞いた。
「私はここに」
マリアが抱きかかえられた状態のままカードのようなものを取り出す。
器用だな……。
それを受け取った門番はそれを見ながらうんうんと頷いたあと、カードをマリアに返した。
「確認しました。ありがとうございます。そっちの君は身分証明できるものが無いんだったね。じゃあ通行料の20バン払ってもらおうか」
俺はマリアを下ろし、ポーチから財布を取り出して、硬貨を渡した。
「確認しました。ようこそスミスへ」
門番は笑顔で道を開けてくれた。俺達は門を通り、スミスの町へと足を踏み入れた。
「ついたぞー!!」
俺は雄叫びを上げ、喜びを表した。ガンツ村を出てから早3日。ついに目的地であるスミスの町に到着したのだった。
スミスの町はそこそこ賑わっていて、昼間とはいえたくさんの人が行き交っていた。その中の数人が稀有な視線を投げかけてきたが、気にしないことにしよう。自覚はしているしな。
「マリアとはここでお別れか……」
「それなんですが……」
マリアは真剣な眼差しで俺を見た。さっきまで意気消沈していたとは思えないほど真面目な顔をしていた。
「私は王都まで行かなくてはならないのですが、そこまで護衛をしてもらえないでしょうか」
マリアの申し出には困ってしまった。今の所王都に行くかはわからない。俺の目的は魔剣物語に出てくる魔剣を集めることだ。銃が中心のこの国の王都に剣があるとはとても思えない。
でも、マリアのことを放っておくのも心苦しい。
「俺たち、王都に行くかはわからないんだよな……」
「そう……ですか……」
マリアは心底残念そうな顔をした。
こんな顔はできることならさせたくなかったな……。
『おい、ケント』
そんなマリアを見て俺が困っていると、ホープが声をかけてきた。
『それくらい受けてやれよ。道すがらでもいいじゃねえか。それに、旅は道連れって言うだろ?』
「なにそれ?」
『……旅は一人よりも二人の方が心強いってことだ。いいから請け負え!』
「ホープさん……」
俺は責任持てないから受けるか悩んでたのにな……。
俺は諦めて引き受けることにした。それに、マリアの神様でも見つけたような顔を見ちゃうと断れないよな。
「……わかったよ。道すがらでいいなら、護衛してあげてもいいよ」
そう言うと、マリアの顔がぱーっと明るくなった。
「ありがとうございます!」
「でも、路銀のこともあるし、しばらくはこの町を拠点にお金稼ぎかなあ」
「そこまで急いでいるわけではないので大丈夫ですよ。私一人ではなにがあるかわかりませんし、少し遅くなるくらい問題ありません」
「ならいいんだけどさ」
『そうと決まれば、まずは宿を探さないとな』
俺達は早速宿を探すことにした。宿屋は数カ所あって、それぞれグレードがあるようだった。それは宿の見た目で一目瞭然だった。一番高そうな宿は扉の前に銅像があり、豪華な装飾も建物全体にあった。こんなところに入ろうものなら、一歩踏み入れただけでつまみだされていただろう。
ということをホープから聞いたので、俺は少し年季の入っている建物の宿に泊まることにした。
「いらっしゃい。二名様で?」
宿の扉を潜ると、少しふくよかな体型のおばちゃんがカウンターに立っていて、俺達に声をかけてきた。
「二部屋借りたいんだけど」
「一部屋一泊100バンだよ」
一部屋100バンか……。母さんの言うとおりの値段だったな。俺は路銀として1000バン持たせてもらっている。そのうち20バンは通行料として門番に払った。だから二部屋取るとしたら4泊しかできないことになる。その間に路銀を稼いでいくのはなかなか厳しいのではないだろうか。
俺が悩んでいると、マリアが口を挟んだ。
「女将さん、二人部屋というのはありませんか?」
「あるよ。数は少ないけどね。それなら150バンだね」
「ケントさん。二人部屋ならどうですか?」
「二人部屋か……でも、マリアはいいの? 俺も一応男だけど」
「いえ、護衛をしていただいているのですから、同じ部屋の方が都合がいいと思うのです」
「たしかに。それに一部屋ずつ取るより随分安く付くしね。じゃあ二人部屋でお願いできる?」
「じゃあ150バンね」
俺は財布から硬貨を取り出し、カウンターに置いた。
「んじゃ、これが鍵ね」
鍵にはタグが付いており、202と書かれていた。
「もう一晩泊まる時は翌日の昼までに追加料金を払ってくんな。ごゆっくり」
「ありがとう」
とりあえず宿は確保した。次は路銀の調達だ。




