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旅立ち

翌朝、俺はいつもより早めに起き、出発の最終確認をしていた。

気慣れた白いシャツに、ずり落ちないようにベルトでしっかりと固定したズボン、背中にはホープを入れた十字鞘。十字鞘は精霊力を込めることで体に吸着させることができる。

まったく、便利なものがあったものだ。

腰には母さんがくれたポーチ。このポーチは異次元ボックスになっていて、見た目の10倍ほどは物を入れることができるらしい。もちろん重さも感じないようになっている。

『中身も確認したか?』

「確認しとこうか」

火は魔法で起こせるから着火の為の魔銃はいらないし、寝床の為の寝袋は予備も含めて二つある。寝袋にはワームの吐く丈夫で肌触りのいい糸を使用していて、寝心地はばっちりだ。父さんが渡してきたサバイバルのためのハウツー本などもちゃんと入れたし、着替えも三着あるし、数日分の路銀の入った財布もきちんとポーチに入っている。

「改めて考えると、長い旅の割には軽装だよね」

『長い旅だからこそ、それくらいがちょうどいいんだよ』

「そんなもんなのか」

支度も済み、意気揚々と出かけようとしていたら、父さんと母さんが声をかけてきた。

「……いくんだな」

「うん。また必ず帰ってくるから、心配しないで」

「これを持っていけ。気っとお前を守ってくれる」

父さんは、御神体の木刀を手渡してきた。

「父さん、これは我が家の守り神だろ?俺が帰ってくる家が無くなってたらどうするんだよ」

「その点に関しては大丈夫だ。一昨日キカンと飲んでる時に約束させたからな。ケントが帰ってくるまで、俺たちの身の回りの危険の排除を頼むってな」

酔っぱらっていながらもそんなことを約束させてたとは……父さんは相変わらず酒に強いな。

「わかったよ」

俺は木刀を受け取ると一言木刀に「よろしくな」と挨拶をし、腰のベルトの隙間に差し込んだ。

「お母さんからはこれよ」

母さんは風呂敷に包まれたものを渡してきた。

「これは?」

「お弁当よ。道中に食べて」

母さんの料理は絶品だ。弁当にしてもそれは変わらない。

「ありがとう。この弁当箱と一緒に帰ってくることにするよ」

「ええ、いってらっしゃい」

「行ってきます」

俺は家のドアを開け、外に出た。心なしか、家のドアはいつもよりも重い気がした。


村の出口に差し掛かると、なんだか人だかりができていた。

『なんかいっぱいいるな』

「まさかまた出発が遅れることになったりしないよな……?」

その人だかり付近に近づくと、一人の村人が俺に気づいたようだ。

「おや、来たかケントくん」

その人の様子を見る限り、何か問題が起こったというわけではなさそうだ。

俺が何が何だかわからないといった様子で首をかしげていると、ビガンが人込みから出てきた。

「ケント。遅れたが、よくこの村を救ってくれた。領主に代わって礼を言う」

ビガンが頭を下げる。なにがなんだかわからない俺をよそに、ビガンは続ける。

「そして、実に簡素なもので申し訳ないのだが、キリツグ・ケント。貴殿の功績を称え、勲章を授与する」

ビガンが小奇麗な箱を差し出してきた。蓋の部分が透明になっている箱の中には、綺麗な白い羽が一枚入っている。

「えーと、これは?」

「村のみんなが、村を救った英雄の見送りをしたいって集まってくれたんだ。そしてこの羽はこの村からの贈り物だ。魔法の付与されたアクセサリーで、お前の身を守ってくれるはずだ。微力だが、これくらいはさせてくれ」

場の雰囲気的に断れる雰囲気でもないし、こういうものは素直に助かる。それにみんなが俺のことを見直し、感謝してくれているのも伝わってくる。受け取らないのは失礼というものだろう。

「そうか」

俺は羽を受け取り服に張り付けた。魔法の付与されたアクセサリーはその付与された魔力のおかげで、留め具などが無くても衣類にくっ付いて外れなくなる。

それを付けた姿を集まったみんなに見せるようにしながら、大声で言った。

「みんな!ありがとう!それから……いってきます!!」

「がんばれよ!」

「ありがとう!いってらっしゃい!」

「我らの英雄に武運あれ!!」

俺の声に答えるようにみんなが口々に感謝や激励の言葉を飛ばしてくる。

それを背に、俺は村を旅立った。

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