聡明な者
「2人とも、少し待ってください」
マリアが大岩を観察しだした。最初はおそるおそる近づいていき、指先を触れる。触れても大丈夫だとわかったのか、ぺたぺたと表面を触り倒す。次は耳を岩に当て、音を聞いてみている。
「なにかわかったか?」
マリアは真剣な表情で頷いて言った。
「大きな岩だということがわかりました」
「そんなことは見ればわかるんですの!!」
キリエが大きな声で叫ぶ。俺も同じことを言おうとした。
「ですが、先程の魔法は炎魔法です。なので、今度は火魔法を当ててみましょう」
「火魔法って、これ?」
俺が掌の上に炎を作り出す。
「そうです。基本の【フレイム】。火を作り出す魔法ですね」
俺は掌に炎を乗せたまま、その炎を大岩に押し付けた。すると、これまでびくともしなかった大岩は音を崩れて崩れ落ちた。
「マジですの……」
「さあ、先へ進みましょう」
驚いている俺とキリエとは対象的に、マリアはどこ吹く風といった様子で俺達を先導した。
しばらく歩くと、また大きな岩が見えてきた。
「またこれですの?」
キリエはうんざりといった様子だった。岩には、『我を見えざる者にせよ』と書いてあった。透明になる魔法か? そんなもの存在するのか知らないけれど。
「つっ―――!!」
岩を調べようと触れたマリアが、反射的に手を離した。
「大丈夫か?」
「はい。軽く火傷をしてしまった程度です」
それは大丈夫なのだろうか。マリアが言うから大丈夫だとは思うが。
「そんなことよりも、この岩です。この岩、かなりの温度を持っています。軽く火傷するくらいには熱いです」
「でも、見え無くしなければならないのでしょう? この岩が熱いのとなにか関係があるんですの?」
マリアはうーんと考え込んでいる。だが、俺は考えるよりも行動する派だ。俺は無造作に炎魔法を放った。
「【フレアバレット】!」
岩に向けた掌から、炎の弾が飛んでいき、岩に命中する。だが、今回は爆発は起きなかった。
「あれ?」
「なんだか、炎が吸収されたように見えましたわね」
「炎ですか……2人とも、火系統の魔法をたくさん撃ってみてくれませんか」
マリアがなにか思いついたようだ。
「了解!」
「わかりましたわ!」
俺達はどんどん魔法を岩に向かって放っていった。
「「【ファイアーボール】!」」
「「【フレイムダムズ】!」」
「「【フレアバレット】!」」
炎がどんどん吸収されていき、心なしか、辺りも熱くなって来ているような気がした。
「これでどうだ! 【炎舞・業火】!」
ホープを使い、岩に炎を噴射すると、岩がみるみるうちに見えなくなっていった。それと同時に辺りの気温が下がった。おそらく、岩自体が消えたのだろう。
「消えた……?」
「これはどういうことですの?」
頭にはてなマークを浮かべる俺達に答えるようにマリアが口を開いた。
「炎です」
「炎?」
「そうです。この岩は炎を模したものだったのだと思います。炎は、高温になると青くなりますが、ある一定の温度になると、透明になるのです。それを再現しろということだったのでしょう」
「なるほどな」
『たまたまだったけどな』
「たまたまでも通れるようになったんだからいいだろ」
「そうですわ。早く先に進みますわよ」
「そうですね」
また大岩を乗り越えた俺達は歩を進めた。




