烈火
「聖十字!」
マリアが掲げたロザリオを中心に、光の十字架が広がり、俺達を炎の雨から守った。炎の雨の正体は、天井に張り付いている数多の瞳によるものだった。
「エア―――」
「ケント、まってくださいまし」
俺が宙に浮かぼうとした瞬間、キリエが制止した。
「あなたは力を温存しておいたほうが良いのではなくて?」
「そうですね。ケントさんは私達の最大戦力ですからね」
「ここは私に任せていただきますわ!」
「わかった」
キリエは意気揚々と【モード:トゥーハンド】となったレーヴァテインを手に、足場の中央に進んだ。
「さあ、姿を現すのですわ!」
キリエは無造作に銃弾を4発放った。その銃弾は瞳に向かって飛んでいき―――すんでのところで躱されたように宙に円を描いてくるくると回っていた。
「あなたたち、随分とお早いのですわね」
キリエは、一度銃弾の操作を止めた。
「【モード:ラピッドファイア】!」
キリエの声に呼応するかのように、レーヴァテインが形を変える。これまでの回転弾倉式の拳銃ではなく、グリップに弾倉を入れる自動式拳銃と呼ばれるものと同様の形になった。クリップの上には魔導石が見える。
キリエは、両手のレーヴァテインを背中合わせのように当てることで、2つのスライドを同時に引き、弾を装填した。
「これは避けられませんわよ」
キリエが引き金を引くと、発砲音とほぼ同時に、天井にいた瞳が落ちてきた。瞳の正体は、6本の足を持つ、大きな赤い蜘蛛であった。蜘蛛は眉間からお尻にかけて貫通穴が空いており、絶命しているようだった。体液は赤かった。
そこからはただの蹂躙といった感じだった。数は多かったが、キリエの銃撃の早さと正確さで、全て撃ち落とされた。まさに、烈火の如き早業だった。
「ま、ざっとこんなもんですわね」
キリエが振り向きながら自慢気に胸を張る。キリエはやっぱりすごいなと、改めて感心した。
「さすがキリエさんですね」
「ああ、すごかったよ。あれは俺でも避けれないだろうな」
「これは、本当に殺してしまいかねないので、人に使うことはありませんわね。さて、邪魔者もいなくなったようですし、先を急ぎますわよ」
そこら辺に転がっている蜘蛛から、有用な素材だけ切り取って、俺達は先の階段へ進んだ。
階段を登ると、さっきの階層とは異なり、狭い通路が1本伸びていた。道の横には溶岩が流れており、さっきの階層よりも気温があがっている気もする。
通路を歩いていくと、道を塞ぐように大岩が俺達の行く手を阻んだ。その大岩には、大きな文字が書かれていた。
「火、ですわね」
「とりあえず火の魔法でもぶつけてみるか?」
「私がやりますわ」
キリエがレーヴァテインを構え、グリップについている魔導石に指を当てる。魔導石が赤く輝く。
「炎魔法【フレアバレット】!」
キリエが引き金を引くと、レーヴァテインの銃口から炎が飛び出した。それは大岩にぶつかり、爆発を起こした。
「やったか!?」
しかし、大岩には傷一つなく、相変わらず馬鹿でかい字で『火』と書かれてあった。




