勇往邁進
なにはともあれ、俺達は火山の目の前までやってきた。火山と言う割には、溶岩で溢れているわけでも、そこまで気温が高いわけでもないように感じられた。
キリエはいつもの元気が無くなるくらいに疲弊していたが、少し休めば大丈夫だろう。
「もうあんなのはこりごりですわ……」
俺が作った簡易的な石の丸椅子にこしかけながらキリエが呟く。そんなに嫌だったのか……。
「ごめん。今度は俺が運ぶよ」
「違いますわ……もう競争に巻き込まないでくださいまし……」
「ああ、なるほど」
俺が納得していると、フランが口を開いた。
「じゃあ、私は送ったから帰るね」
「中まで付いてこないのか?」
「お姉様が、送るだけにしなさいって」
「なるほど」
フランは自由奔放な性格をしているが、姉のサフィリアの言うことはよく聞く。俺が女装させられそうになったときはたまたまいなかったから暴走していたが、サフィリアがその場にいたなら、俺も裸で逃げ回ったりしなくてよかっただろう。
「中はめっちゃ暑いから飲水に気を付けてね」
最後に俺達に忠告をし、「じゃーねー」と言って飛び去って行った。そのスピードは、先程とは比べ物にならないくらいに速かった。あれでもキリエを気遣っていたということか。もしかして、俺も気遣われてたのか?
「そろそろ大丈夫か?」
「そうですわね。いつまでもこうしてるわけにもいかないですわよね」
キリエが立ち上がり、大きく伸びをする。火山にはぽっかりと口を開けたような穴があり、そこから中に入っていくようだった。中は暗く、外からではどうなっているのか見当がつかない。
「なにしてるんですの?」
キリエとマリアがもう入り口の前に行っていた。
「今行くよ」
俺は顔を叩き、気合を入れてから2人のもとに駆けた。
火山の中は真っ暗で、足元すらまともに見えなかった。マリアに明かりを出してもらい、やっと足元が見えるほどだ。前に進んでいることは後ろを見ればすぐにわかるのだが、なんせ前が一切見えないので、文字通りの暗中模索状態だった。
しかし、それも束の間だった。しばらく歩いていると、急に周りが明るくなり、溶岩がドロドロ流れる、見るだけで熱さを感じる赤い洞窟内部になった。
「これは……」
「なんですのこれは!」
2人が驚いていた。もちろん、俺も驚いている。
『暗黒魔法か』
ブラックが口を開く。暗黒魔法は、空間を捻じ曲げたり、相手の視界を塞いだりする、認識に干渉する魔法だ。一応、黒魔法の上位の魔法に当たる。つまり、今迄見ていたのは幻覚だったというわけだ。
「これはいよいよ当たりっぽくなってきたな」
「先を急ぎましょう」
俺達は、溶岩の流れる川に落ちないように、慎重に歩を進めた。洞窟は階層に別れているようで、道なりに進むと階段が見えてきた。洞窟内部の石でできた無骨な階段だが、ご丁寧に手すりのようなものまでついていた。明らかに自然にできたものではないだろう。
階段を上がると、そこは溶岩に囲まれた丸いステージのようだった。大きな円い足場を囲むように溶岩が流れていた。
「上です!」
俺達が足場に足を踏み入れると、炎の雨が降ってきた。




