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創造神と愛し子 ①



おはようございます、こんにちは、こんばんは!


十六夜です。


本編は完結しましたが、多くの問題点を残したままなので、思い付くまま解決すべく書いてゆく所存です。


ですので、時系列などは無茶苦茶になると思いますが、お許し頂けたらと思います。


このお話たちも、読んで下さる皆様の暇潰しにでもなれば幸いです。



十六夜



「ふぅ、やっと終わった。小さなことだと後回しにするのは止めよう。ここまで面倒なことになるとはな」


人間が生きる世界の諸々を、神々が分担し調整している。

創造神たる儂は、それの統括とも言える。

儂は産み出すことと消し去ることしか出来ないから、他の神々がそれ以外のことをして報告してくる。

それに対して、為すべきことを吟味し振り分けなければならない。

つい、小さなことは後回しにしていたのだが、儂の補佐である息子が美しい微笑みに冷気をのせて苦言を呈し今に至る。


「とりあえずは片付いたな。どれ、久々に人界でも覗くか」


気まぐれなこの行動が、この後儂の心に永遠に住み着く者との出逢いに導くとは、神である儂にさえ想像すら出来なかった。



■■■■■■


人界でも色々な場所がある。

国の中心部は便利で大きな街だし、そこから離れた場所だと辺鄙で不便な村になる。

大きな街は人々が集い、それに伴い問題も増えるため、神々がこまめに監視し素早く対応する。

しかし、村になると人口も少なく争いごともほとんどない為、放置されていることが多い。

定期的に見回りはしているので、完全な放置というわけではないのだが。

だから基本儂が訪れるのは、神々の監視が行き届きにくい辺鄙で不便な村などが多い。


この日も、いつもと同じく訪れたのは小さな村だった。


街と街を繋ぐ街道から横路に逸れて、馬車が一台通るのがやっとの道も整備はされておらず石が転がっている。

そんな道の周りは延々と続く畑だけ。

だがその畑は何故か何も植えられておらず、乾いた地面がひび割れていた。


「この時期に何も育っていないとは」


どう考えても何かあったのは間違いない。

しかし儂は誰にも見えないし、声も聞こえないのだから誰かに事情を聞くことも出来ない。

そもそも、この村に人は居るのだろうか。

今まで誰一人目にしていない。


当てもなくそのまま道沿いに進むと、脇に森が見えた。

ふらりとその森に入り獣道を進む。

思ったよりも森は深く日差しも届かないため暗かったが、暫くすると木々が開けているのが見えた。


「湖か?」


かなり暗かった森は一変し、燦々と降り注ぐ日の光が湖面を照らしている。

その湖の傍らにある大樹の根元に小さな祠らしきものがあり、そこに一人の少女がいた。



これが儂と愛し子との出逢いだった。



少女は祠に向かい何かを呟いて、いや怒鳴っていた。


「ちょっと、神様あんまりだと思うんだけど」


びくり、と固まった儂に頓着することなく続ける少女。


「神様がいるんなら、こんな状況を少しくらい助けてくれてもばちは当たらないでしょうに」


忘れていた、儂は少女の背後にいたのだ。

しかも儂の姿は人間には見えない。

ということは、儂に向かって言っているのではないということだ。


……いや遠からず儂に言ってるのか。


「我儘で言ってるんじゃないのよ。ただ去年は流行った麦の病気で凶作だったし、今年はその病気の影響で土がやられて何も育たない。二年も凶作続きなんて、こんな小さな村潰れて当たり前だよ。自分達の努力で何とかなるのなら頑張るけど、こんなのどうすればいいのよ。神様がいるんなら、こんな時こそ助けてくれてもいいんじゃない?小さな時からずっとお祈りして、掃除して、時々しか出来なかったけど供え物もしてきたのに」


成る程、そういうわけか。

それは確かに儂らの怠慢だ。

人間が努力して何とかなる範囲を超えている。

しかもこの規模の、街から遠く離れた村だ。

領主の助けも届かない、いや気付いてもいないかもしれない。


助けるためにもう少し詳細を知りたいと思い、少女に近付いた。


「誰?」


言葉と共に振り向いた少女。

先程文句を言っていた声は力強く張りがあった為気付かなかったが、その身体は細く小さい。

そしてふわふわと癖のある茶色の髪と、大きくはないが愛嬌のあるくるりとした新緑色の瞳、更に頬のそばかすが小動物を思わせる。


儂の気配に気付いた?


「……貴方、誰?」


驚いた、儂が見えているのか?


「儂が見えておるのか?」

「……おじさん、頭が弱い人?付き添いの人はいないの?」


待て、おかしな人扱いされている。


「いや、儂は正常だ」

「……そういう人は皆自分は正常だって言うのよ」

「うむ、警戒心があるのは悪いことではないが……そうだ、儂に触れてみれば良い。そうすればわかるだろう」

「私を拐ってもお金は取れないよ、うち裕福じゃないし。まあ、娼館?に売るくらいは出来るかもしれないけれど」

「なっ、そっ、そんなことせぬわっ!それに幼子がそんな言葉使ってはならん!」

「幼子って……私もうじき15歳だよ。この村では15歳で大人の仲間入りなの。だからもう大人だよ」

「そなた15歳なのか。儂はてっきりもっと小さいかと」

「……悪かったわね、色々と育ってなくて。でもね、そういうこと女に言うのは失礼だって、親から教えてもらわなかったの」


……流石に創造神の儂に親はいないな。

だから教わったことはない。

だが確かに失言だ。

幼くても女性に言ってはいけないことである。

それにもうじき15歳なら、本人の言う通り大人として扱うべきだ。


「すまなかった。そういうつもりで言ったのではないが失言だった」

「ふはっ、おじさん、素直。もういいよ、悪気が無いのは最初からわかってたしね」

「何故そう思った?そなたと儂は今日初めて会ったのだぞ。儂が悪意を持つものかどうかなど、そなたにはわからんだろう」


儂の言葉に少女は笑みを深める。


「そうね、初対面なのは間違ってない。だけど、おじさんは『娼館』て言葉を使うなって怒ってくれたじゃない?悪い人ならそんなことしないもの。それに成人してたら売るのも楽だし、面倒になりそうなことは言わない」


……暫く来ないうちに人界の子供の常識が変化したのか。それともこの少女が聡いだけなのか。


「おじさん?ぼーっとしてるけど大丈夫?あっ、供え物だけど果物ならあるよ、食べる?」


聡い、のか?


「だから、そなた儂に触ってみると良い。供え物は美味しそうだが、儂には食べれぬ」

「え〜まだ言うの?わかりました、触ればいいのね?」


少女は躊躇いもなく儂に近付き、手に触れようとしーーそのまま前へとつんのめった。

あると思っていたものが無い、それは身体のバランスを崩すのに十分なものだ。


「……おじさん、幽霊なの?」


参った、今度は幽霊ときた。


「幽霊ならえらく現実的な会話をする幽霊だな。儂の知る幽霊とはこの世に未練がある故に妄執に取りつかれているか、自分が死んだ事がわからずに生前と同じように行動するもので、決して現実を理解し状況判断が出来たりせぬぞ」

「確かに……っていうか、おじさん幽霊について詳しくない?」


いや、死した魂の管理も神の領域だからな。


「とにかく儂は悪人でも人間でもないのはわかっただろう?」

「う、本当に幽霊じゃないんだよね?」

「……何だ、そなた幽霊が怖いのか?」

「こ、こ、こここ、怖くないっ」

「くくくっ、冗談だ。幽霊ではないから安心しろ」

「……でもそしたら、おじさんは何なの?」


……斬新な問いだ。

そもそも『創造神』などという呼び名は、他の神々が付けただけで本来儂に名前など無い。


それに……儂が何者なのか、儂にもわからないのだ。

気がついたら存在していたのだから。


「その問いの答えを儂は持っておらんから、答えられぬ」

「へっ。自分が誰だかわからないの?」

「存在意義は理解しているが、儂が何から生まれ何処から来たのかはわからぬな」

「ふぅん。でも存在している意味さえ、目標さえわかってたら良いんじゃない?突き詰めて考えれば皆、自分が何者なのかなんて説明出来ないもの」

「……道理ではあるが。そなたは見た目に反して聡いな」

「ちょっとっ!どういう意味よ、それ!失礼しちゃうわ!」


ぷりぷりと怒る少女は、一見して極普通の少女だ。

優れた容姿でもなく、特別な力を持っているわけでもない何処にでもいそうな少女。

しかし、儂の言葉から簡単に真理を導き出す。


面白い、実に面白い。


悠久の時を過ごす儂だが、このような人間に出逢ったのは初めてだ。


「そなたには名があるだろう。そなた名は何と言う?」

「あっ、言ってなかったかな?私はリーフ、葉っぱのことよ。私達の村はこの森と共に生きてきたの。だから森や植物にちなんで名前を付けるのよ。私は若葉の頃に産まれたからリーフって名付けられたの」


そう言ってリーフはくすぐったそうに笑ったのだった。





次回投稿の日は未定ですが、一週間以内にはする予定です。



『葉』に関するお話は一話目を書いた頃から頭にあり、どうしても書いておきたかったものです。

創造神と愛し子の中に入れることが出来て、とても嬉しいです!



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