二回戦開戦! マジか雑魚しかいねーな。 3
倒れたバルザック達を救護班が腕や足とともに回収したのち、すぐに1回戦の三試合目が始まった。
黒フードの二人組とラフな格好をした二人の男。黒フードの二人組はフードのせいで顔こそ判別できないが、ラフな方はなかなかのイケメン二人組。
一方は黒髪のほっそりとした少年。だが、なんか影のある独特な雰囲気で、目が死んでいる。もう片方は立派な成人男性。こちらは無気力そうな少年に対し、抜き身の刀を思わせる油断ならなそうな男だ。ただ、眉間に刻まれたしわが少し残念でもある。
しかし、俺の頭はあの奇妙なペアでいっぱいだった。
ぼんやりと現在進行中の試合をぼんやりと見ながら、頭をひねって穂玉の方を向く。
「なあ、ありゃなんだ?」
あのゴスロリ人形の大鎌の刃は確かにスキンヘッドとモヒカンの首に向かって動いた。
だが、直前になった瞬間。三白眼君が大鎌の刃とスキンヘッド達の間に身を滑り込ませて切っ先の方向転換を無理やりさせたのだ。
おかげで首ではなく腕と足が吹っ飛ぶこととなり、スキンヘッド達は一命をとりとめることができたのだった。
まあそれはいいとして。
なんなのあの殺気?あれは完全に殺すつもりのものだ。
俺の長年の経験から言える。ありゃあヤバいって。
「普通初対面の人間殺すかよ。俺でもドン引くわ。」
「私もそれは思いました。ですが、共感は持てます。」
「おい、まだ根に持ってんのか?」
俺は口角を引きつらせ、俗に言う苦笑いってやつを浮かべた。
酒屋での穂玉による一方的な大乱闘。スキンヘッドは穂玉の逆鱗に触れ、半殺しにあった。
昔からこいつは狐のくせに狸のように恨みごとはしぶとく覚えとくからなあ。
「そういうわけではありません。ただ、肝臓と膵臓あたりを引きずり出して開いた隙間にゴキブリでも詰め込んどきゃよかったと後悔しているだけです。」
「それは後悔とは言わない。怨念という。」
スキンヘッド、モヒカン、腕と足がなくなっただけでよかったな・・・!
俺は一人、心の中で手を合わせ、二度と穂玉とあいつらを合わせないようにしようと誓った。
「はいはい。あ、試合終わりましたよ。」
うおっとマジでか。喋ってたらいつの間にか試合終わってんだけど。
もうすぐ当たるかもしんない相手の試合見損なっちまったよ。
「勝者はー・・・ラルフス&オルカ!!」
キンキンと相変わらず耳にうるさいマイク音とともにコールが会場に響く。
どうやら勝ったのはイケメン二人組らしい。
画面にでかでかと顔が映し出され、女性の黄色い声が湧き上がる。もはや悲鳴じゃね?これ。
「さて、一回戦突破者がそろいました。それでは観客及び勝ち進んだ出場者の皆さん、画面をご注目下さい!二回戦に進むのはこの三組だーー!!」
画面の映像が切り替わり、三枚のカードが映し出される。
それぞれ名前が書かれており、うち一枚には俺と穂玉の名前がある。
「記念すべき第100回を迎えた今年の大会は、例年とは異なってここにさらにもう一組、シークレットペアが加わります。」
説明に合わせて画面のカードが動き、黒いカードが並ぶ。
黒いカードには人物の名前ではなく、クエスチョンマークが書かれていた。
「シークレットペアは試合が始まるまで一体誰なのかは分かりません。予選を突破していないなんてズルだ?なんの問題はございません。それは、試合が始まってからのお楽しみです。」
挑発的なアナウンスに、観客席がわきたつ。
「では、早速カードを切っていきましょう!二回戦一試合目はー・・・・・この組だ!!」
カードが画面内でシャッフルされ、二つに分断される。
そして、その中から二枚のカードが画面上にでかでかと並ぶ。
「ヤシャ&ホタマ vs ラルフス&オルカーー!!」