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最強妖怪は異世界でもやっぱり最強でした  作者: 狐狗狸
羅魔瑠帝国
13/14

一回戦開戦!まじか雑魚しかいねーな。 2

「えー・・・ただいま崩壊した観客席の片づけを行っております・・・しばらくお待ちください。」


 ただの避難訓練の放送にしか聞こえない司会の声が静かに響く。

 

 闘技場の壁ぶち抜いて吹っ飛んだ厨二と腰が抜けて動けないブリッ娘を回収に動く救護部隊をよそに、俺と穂玉は控席に戻った。

 控席はそれぞれ板で仕切られているので他の対戦者の顔をうかがうことはできないが、まあおおよそ観客と同じような顔をしているだろう。

 

 ・・・別にそこまで派手な動きはしてねーと思うけどなあ。


「あー、どっこいせっと。」

「爺臭い座り方。」

「うっせー、こちとらまだまだ現役だぞ。」


 俺は体を椅子に預け、どっかしと深く座った。

 どでかいスクリーンには前歯のかけたまさにアホ面の厨二の顔がでかでかと移り、俺のイケメン面がその横に出る。

 うん、やっぱ断然俺の方があいつより顔がいいだろ。


「とか言っといて千年もののモンスター童貞が。」

「勝手に心読むんじゃねええぞクソアマぁぁぁあああああああ!!」


 顔面に吹っ飛ぶ拳を軽くかわし、穂玉は俺の背後に回って首を90度回して正面を向かせる。


 え、ちょっと今グキっとなんかなった気がするんだけど。俺の首からじゃないよね?この効果音ただの比喩とか隠喩とかそういう国語的な表現だよね?おっかしーなあちょっと首痛いんですけどおお?


「ほら、始まりますよ。」

「いや俺の首終わった気がするんだけど。」


 しかもフィールドあんまさっきと光景変わってねーじゃん。

 人間二人を回収しただけでまだ壁にまだおっきな風穴あいとるし。


「えー、はい。気を取り直して試合を続けます!!続いて戦うのはあああああ、マッドネス&バルザック vs ヴァル&リベラーーーー!!」


 ワンテンポ遅れて会場からあふれんばかりの歓声。

 俺たちの時は全然なかったのになあ。

 どんだけスキンヘッド人気あるんだよ。


「ん?おい、あいつらって・・・。」

「気が付きました?私たちとほぼ同時に予選を勝ち進んだとこです。」


 静かに音もたてずに控席からフィールドへと降りる二組の影。

 しかし、それはあまりにも異様な組み合わせだった。





 ウェーブのかかった金髪が風になびき、可憐な顔を際立たせる。ハーフアップにした髪を結うリボンは、瞳の色と同じ鮮やかな紫。フランス人形のような黒い衣装に身を包んだ、まさに人形のような少女。

 しかし、その手には彼女の身長をはるかに上回るほどの大きな大鎌が握られていた。


「うーぬ、納得がいかないぞ!なんでこんな不細工なおっさんども相手するんだぞ!」

「勝ち進んできゃそのうち強いのも出てくんだろ。」


 顔を盛大にしかめ、悪態をつくリベラを隣の灰色の髪の青年がいさめる。

 少女に比べてしまうと地味な外見だが、その三白眼からは只者でないオーラがにじみ出ていた。


「ま、さっきの連中がいいとこじゃねえか?」


 舌なめずりをし、ヴァルはその漆黒の目でさっきの黒髪の男と銀髪の獣人の女を捉える。


 今、自分たちが与えられている任務の最大の障害となりそうな人物。

 予選の時から目をつけていたが、思ったよりも強者らしい。

 あの二人が難なく蹴散らしたのは帝国でも有名な騎士学校の首席と魔法学校の首席。二人とも頭は生まれつきの大けがを負っているが、腕は確か。学校の研修かなんかで今回の大会に参加していると聞いたが、まさかこんなどこぞの者かもわからないやつらにやられるなんて思ってもみなかっただろう。とんでもないダークホースがいたものだ。

 ヴァルとしてはぜひとも話をしてみたいところだが、その前に相方の戦闘狂が許さないだろう。

 会話の機械を早々に諦め、ヴァルは位置に着く。


「それではああー、両者武器を構えて!」


「ふん!あんなガキ一ひねりだぜ!!」



 バルザックの言葉に大鎌が微かに動く。

 少女の目から、先ほどのやんちゃさが消えた。



「レディー、ファイツ!!」




「斬る。」




 刹那。

 鮮血がほとばしり、ごとりと何かが落ちる音がする。




「あれ?」


 バルザックは固まった。

 敵に向けたはずの手が、どうして自分の足元に見えるのだろう?

 なぜ、さっきまで隣にいた相棒の背が知人で見えるのだろう?




 冷や汗が噴き出した。




 戦斧を握っていた手はちゃんとあった。

 マッドネスの両足もその場にあった。


 血を噴き上げながら、自分たちの足元にごろりと、八百屋に並べられた野菜のように並んでいた。



「ば、化け物があああああああああ!!!」



 残るもう一本の腕を振り上げ、バルザックは少女に殴り掛かる。だが、その腕は届かなかった。

 真っ赤な液体が、再び飛び散る。

 今度はしっかりとその目で見えた。


 無表情で大鎌を振るう、死神を。


 自分の残りの腕が宙を舞い、その血でそまるのを。


「あーあ、なんで邪魔するんだぞ?」


 大鎌についた血を振り払いながら、無邪気にリベラは笑う。


「邪魔しなきゃお前、あいつらの首と胴、持ってっただろ?」


 にこりと笑顔を浮かべるリベラ。

 ヴァルはため息をついて、頭をかいた。



「しょ、勝者、ヴァル&リベラ・・・。こちらも一瞬で終わりました・・・・。」




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